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手打うどん「麺許皆伝」で忍野八海と北口本宮冨士浅間神社吉田の欲ばりのつけうどん

忍野村の雑木林の中にあるというレストラン、富士北麓cuisine「nôtori」でその食事を堪能して、オーベルジュよろしくそのまま泊ってしまおうと計画したその時。
ならば、今まで訪れたこともなければ、当然現地で食したことのない吉田うどんが食べられるかもしれない、いや食べたいと思い付いた。
勿論、富士吉田同様訪れたことのない、
忍野八海を訪ねることも行程に織り込んで、ね。

圏央道から中央道大月JCTを経て、
富士吉田忍野ICから忍野八海の中心地、
池本売店の駐車場に辿り着く。 駐車場から見遣る富士山は、
流れる雲を纏い始めていました。

まずは、池本売店の庭先のようにも映る、
忍野八海のひとつ、中池に向かう。 池の中央にさらに小さな池があるようになっている。
小さな池の縁からその中を覗き込むと成る程、
こんこんと水が湧いていて、清々しいほどの透明度。
なにより、その湧いてくる水の量感が凄い。

その中池と涌池、濁池の間では、
水車小屋の水車が二基が連なって回っている。 穏やかな水辺の光景にふと安らぐも、
ご多聞に漏れずここでも、
外国人だらけなのがなんとも興を削ぐ。
特にアジア系の軍団の大声と傍若無人な挙動。
観光バスによるものであろう団体の行動って、
傍からはこう映ることをよく憶えておこうと思う(^^)。

小さな小さなお釜池でも、
どんどんと水が湧いてくる。 富士山の伏流水は、
地下の溶岩の不透水層を通ることによって、
数十年の歳月をかけて濾過されて、
枯れた忍野湖が残したこんな小さな池にも、
澄み切った水を滾々と届け続けているんだ。
これもまた、富士山の凄さでもあるね。

忍野八海のすべてを巡り終えて向かったのは、
旧鎌倉往還でもあるところの国道138号線沿い。 富士山を背にして、大きな鳥居を構えるは、
北口本宮冨士浅間神社。
鳥居の扁額には、しっかりと”富士山”とある。
参道では、天高く屹立した杉の大木が両側から迫り、
石灯籠がその先へと誘って、神域を感じさせる。

改修中のご様子の拝殿前の両サイドには、
左に樹齢千年と木札を掲げた冨士太郎杉。 右手には、同じく樹齢千年の冨士夫婦桧。
樹齢千年、つまりは遥か大昔より育まれてきたと、
そう崇めるしかない大木たちが拝殿を囲んでいるんだ。

北口本宮冨士浅間神社は、
富士登山吉田口登山道の起点にあたり、
「富士山:信仰の対象と芸術の源泉」として、
世界文化遺産に登録された構成資産であるところの、
「富士山域」の一部であるという。 北口本宮冨士浅間神社のWebページには、
古代、富士のような高い山、美しい山は、
神のおわす山として人が入ることは禁忌でした。
よって当地は、ご神体の富士山を遥かに拝み、
祭祀を行う場でありました、とある。
その後、修験道や富士講の出現・発展によって、
御山に登ること即ち祈りとする「登拝」によって、
人々は山頂を目指すようになりました、とも。
富士山に登ろうという気は今のところないので、
今後とも古代のひと人よろしく、
富士山は遠く拝むものとしておきたい(^^)。

北口本宮冨士浅間神社の第一大鳥居を背にして、
つまりは富士山を背にして、
真っすぐに続く坂道を下り往けば、その右手に、
ひと影の集まる駐車場が見えてくる。
其処がこの日のおひる処、手打うどん「麺許皆伝」だ。

開店時間までの束の間を待つ間にも、
どんどん車がやってきて人が増えていく。
浅間神社を詣でる前に記帳していたお陰で、
開店早々の店内へとなんとか滑り込んだ。

人気店なのだなぁと思いつつ靴を脱ぎ、
座敷の奥の座卓の座布団に収まって、ひと安心。 壁を見上げれば、沢山の色紙が所狭しと貼られている。
そしてふたたび、人気店なのだなぁと腕を組む(^^)。

卓上のプラケースに挟まれたお品書きは裏表。
どちらが表か裏か、「冷たいうどん」サイドには、
麺は冷たく汁は温かい「つけうどん」と、
麺も汁も冷たい「冷やしうどん」とが並ぶ。
「欲ばりのつけうどん」の”欲ばり”ってきっと、
全部のせに近いような欲ばりなヤツなんだろうね。
「特大かき揚げ天」ってなトッピングも、
数量限定であるようだけど、
それはもはや、若者対象のアイテムに違いない(^^)。
「温かいうどん」サイドでも、
「欲ばりうどん」が筆頭に書かれていて、
肉、ちく天、ワカメ、きつね入りだと補足されている。 ならばと自分はその「欲ばりのつけうどん」、
相棒は、温かい「肉きんぴらうどん」とする。
註文をとりには来てくれないシステムのようで、
卓上のお会計票に自らご註文を書き込んで、
厨房前へと持参して手渡しすれば註文完了だ。

先に届いたのは、相棒の温かい「肉きんぴらうどん」。 成る程、表題の通り、軽く煮付けた様子のバラ肉に、
牛蒡のきんぴら、そして刻んだキャベツが載っている。

手許に届いた「欲ばりつけうどん」は、器が三つ。 まず目を引いたのは、つけ汁の器。
まるで味噌汁によくみられるように、
もわもわんとその対流がよく判る。
あちこちで色々なうどんを食べてきているけれど、
こんな表情をみせるつけ汁は初めてだ。

艶々として生き活きとしたうどんのうねり。 むんずと箸先で掴んで、
味噌汁チックな汁に浸しては口に運ぶ。
ムニムニとしつつもサクっと歯切れよく、
噛み応えは案外と重くない。
正直に心情を吐露すれば、
兎に角硬いとされる吉田うどんに内心ビビッていた。
でも、決して嫌な硬さではなく、
これなら”コシがある”と讃えてもいいかと思う。
過ぎないギリギリの太さが絶妙なのだとも思う。

そして、味噌汁のようだったつけ汁は、
やっぱり味噌汁のようだった。
少々醤油も使っているような様子のするものの、
全体像としてやはり、味噌汁。
うどんの脇に添えてくれている茹でキャベツを、
つけ汁に投入すればなおのこと、味噌汁だ(^^)。

“欲ばり”な具のお皿には、お品書きの通りに、
一本ものの竹輪の天ぷらがどーんに、
さっと煮付けた牛バラ肉、若布に油揚げ。 いつもの常連さんが、毎度同じように、
トッピングの品名をお会計票に書くのは面倒だと、
そんな要望から生まれた”欲ばり”メニューなのではと、
そんなやりとりを想像してみたりする(^^)。

座卓の隅には、一味の容器に並んで陶器の壺がある。
その中を覗けばそれは、
この地域の辛味調味料「すりだね」。 味噌汁チックなつけ汁に少々振り入れれば、
味噌汁の輪郭が強くなるって寸法だ。

北口本宮冨士浅間神社の大鳥居を背にして、
真っ直ぐに坂道を下り往ったところに、
手打うどん「麺許皆伝」は、ある。 ただの洒落のような店名には実は、
結構な本気と気概が含まれているような気もする。
富士吉田の市街に数多ある吉田うどんの店たち。
その中からまずは、比較的硬くないとされている、
こちらを選んでよかったと、ニンマリして振り返る。
硬い硬いと随分と情報に脅されていたけれど、
吉田うどんを嫌いにならなくて済んだ、
なんて嬉しくもホッとしているんだ(^^)。

「麺許皆伝」
山梨県富士吉田市上吉田東1-4-58 [Map]
0555-23-8806

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