振り返れば今年の4月の閉場をもって休館し、
解体の始まった歌舞伎座。
歌舞伎座の解体とともに、
何軒かの飲食店がその場からなくなりました。
残念ながら、幕間に典雅なお膳やお弁当をいただくことは終ぞできなかったのだけど、新館にあったベトナム料理「チョウ ベトナム」や塩ラーメンの「本丸亭」、間際の一時出店していた「玉ゐ」など。
お世話になったお店もありました。
そして、あの行列が懐かしい一軒が、その名もそのまま、「歌舞伎そば」ですね。
建築現場の仮囲いを定式幕の三色縦縞で飾る木挽町通りを進み、仮囲いに沿って左の路地に折れ、昼は牛丼の「雄」の前を通り過ぎる。
つまりは、かつての歌舞伎座の裏手に廻れば、移転した「歌舞伎そば」に出会えるのです。
小料理屋の居抜き、なのでしょうか。
そんな佇まいがもうすっかり板についた風情だなぁと思いつつ、小さな暖簾をぱらりと払う。
狭い通路を往けば、きっとあそこにあったものと同じ券売機。
やっぱり、「ざるかき揚げそば」の大盛りをいただきたい。
かき揚げダブルにしちゃいましょう(笑)。
オバチャンにチケットを渡して、カウンターに着けば忽ち、あの場所の空気が彷彿とする。
一番それを感じるのは、大笊からから個々の笊へ小分けするときの、オヤジさんの膝を使ったリズミカルな動き。
従前より一種の芸の域に達しているなぁと思っていた所作があの頃のまま、ここにあります。
こんもり盛ってくれた茹で立て〆立てのそばに、キレのいい辛汁が旨い。
およそ揚げ立てを四つ割りした掻き揚げを汁に浸してガリっといけばもう、
能書きなんかいりません。
ああ、「歌舞伎そば」のそば、だ。
コップに刻まれた「歌舞伎座」の文字をすっと眺めてからお冷を飲み干すのが、満足なお昼の仕上げです。
あの場所のあの雰囲気を色濃く残して今もある、歌舞伎座の銘店「歌舞伎そば」。
13年春の完成の新しい歌舞伎座にはきっと、「歌舞伎そば」がある。
そこでもまた、オヤジさんのリズミカルな膝使いを拝みたいな。
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年内最後の日記です。
皆さま、良い年をお迎えくださいませ。
「歌舞伎そば」
中央区銀座4-12-2 [Map] 03-3543-4510
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