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地鶏料理「やまさ和」で宮崎地鶏腿肉串滋賀地鶏たたき地鶏メンチサンド地鶏の水炊き

大橋トリオのライブを契機にしての小樽、そして余市への旅を終え、札幌へと出てきた。
心残りはなんと云っても、積丹半島巡りのドライブの日当日が終日、なかなかの土砂降りだったこと。
季節もあまり相応しい時季ではなかったし、天気はなによりも時の運みたいなものだから仕方ないけれど、
積丹ブルーの海、見たかったなー。
今度は、雲丹漁が解禁となった爽やかなる、
6月、7月あたりに出掛けたいものです。

札幌は、すすきの駅の直上にある、
SAPPORO STREAM HOTELに入宿。 2024年01月に開業したという、
新しめのホテルの部屋からは眼下に、
札幌市電の路面電車が見える。

そんなホテルの一室でひと息ついてから、
日暮れ時の雨風の中をいそいそと、
さっき頭上から目にしていたすすきの停留所へ。
左へと急カーブした市電にゴトゴトと乗って、
中央区役所前停留所の狭いホームに降りる。
市電の走る南1条通りに面してある、
地鶏料理「やまさ和」が今宵の目的地だ。

札幌に来ると何故かやっぱり、
サッポロ クラシックが呑みたくなる。 それは、沖縄へ着いたら忽ち、
オリオンが欲しくなるのと同じことなのか。
そして出来ることなら、生がいい。
そして、生の小がちょうどいい(^^)。

札幌のお友達ともども乾杯したところへ、
お通しが運ばれてくる。 定番らしいお通しは、蕪の鬼おろし。
鬼おろしと聞けばすぐさま、
三角形が連なる木製の歯が並んだ、
あの鬼おろし器が脳裏に浮かぶ。
混ぜまぜしてのお召し上がり。
蕪の種類は訊ね損なったけれど、
ザクザクとした歯触りと、
タレと鶉の玉子との取り合わせが、いい。

お願いしていたコースは、
焼き鳥+水炊きコース。
コース料理のお次のお皿は、
滋賀県の地鶏の胸肉のたたき。 見た目の通り、皮目はパリッパリ。
そして、その下の身肉はしっとり。
うんうん、噛む程にじわじわっと旨味が滲む。

今度は和皿でやってきたのが、
宮崎県の地鶏の腿肉のたたき。 断面を覗き込めばなるほど、
レア部を残した、いい具合の火入れだ。
これまた銘柄を訊ね損なったけれど、
銘柄ばかりを喧伝するを潔しとせず、
敢えて銘柄は云わないのが流儀、
なのかもしれないなーと思いつつ、
そんじょそこらの地鶏ではきっとない。

ここでふと、あれ?銘柄鶏と地鶏って、
どう違うのだっけ?と思い付いてハッとなる。
一般社団法人 日本食鳥協会によると、
銘柄鶏とは、
飼料や環境など工夫を加えて飼育されたことにより、
一般的なブロイラーよりも味や風味など改良した鶏、
のことを指すという。
日本農林規格(JAS)による定義はなく、
ブロイラーと同じ種類の「若どり系」と、
赤鶏の両親を持つ「赤系」に分類される、という。
大山どり(鳥取)、桜姫(青森)、あじわい鶏(千葉)など、
出荷数のおよそ半数弱が該当するらしい。

一方、「地鶏」とは、
明治時代までに日本に導入され定着した、
在来種(鶏38種類)の鶏の血が半分以上入っており、
出生の証明ができるもので、
孵化日から75日間以上飼育しており、
28日齢以前は平飼い、
28日以降は㎡当たり10羽以下で飼育しているといった、
日本農林規格(JAS)により定められている、
飼育方法とっているものをいう、らしい。
名古屋コーチン、比内地鶏、さつま若しゃも、
などが該当し、たった1%の出荷数割合だとある。
なるほど、血統と飼育の手間や環境による、
貴重な鶏が「地鶏」なんだね。
いやはや今の今まで、両者の違いや、
それぞれへの認識がぼんやりしてたなぁ(^^ゞ。

箸休め的位置づけか、
セロリの土佐酢漬け。 ほー、何気ないけど、
セロリが立派な酒肴になっている。
三杯酢じゃなくて土佐酢なのがいいのかもね。

首都圏からやったきている身としては、
「札幌で八丈島かー」と思いつつ、
メニューに唯一載るサワーでもあるし、
こりゃきっと美味しいに違いないと、
「八丈島レモンサワー エイト」。 どれどれと少し試すように口に含むと、
うんうんうん、うまーい美味しいー。
これ選んで大正解(^^)。
メニューの副題にある”エイト”はどうやら、
樹上完熟でノーワックスの八丈島レモンと、
島伝統の「八丈島焼酎」とをブレンドした、
八丈島島レモンリキュールが「エイト」だ。
一度凍らせたレモンリキュールをクラッシュして、
サワーに仕立てているような感じもする。

ここで漸く串ものネと、
宮崎地鶏の腿串。 もう、見た目からして麗しい。
嚙り付けば、儚げにパリッとする皮目の下から、
身肉のしっかり目の歯応えと同時に、
ジュワジュワっと脂が口腔を満たす。
ぬははは、旨いやん(^^)。

お次はその名も、蓮根つくね。 火を入れた蓮根とつくねの取り合わせなら、
きっと相性ばっちりと想像しながら口に運ぶ。
うんうん、蓮根の厚みも加減よくシャキシャキ、
何気にニクいニクい。

「やまさ和」のドリンクメニューに載る焼酎は、
「焼酎ソーダ(麦・芋・米・黒糖)」とあるだけ。
銘柄の明示はないけど、まぁいいかと米焼酎を註文むと、
これが、個性的で旨い焼酎ソーダが出てくる。
うーむ、それもそれで、ニクいじゃん(^^)。

確か、地鶏の胸肉の串だったか。 紀州ならぬ、上土佐備長炭の遠赤外線の威力か、
身肉の中がしっとりと火が入りつつ、
それが思いの外ジューシーで、
表面が均質に炙られている感じが、いい。
地鶏は、厳選した2種だけを使っているそうなので、
滋賀か宮崎の地鶏のいずれかということになるね。

クレソンと春菊のサラダ。 新鮮なクレソンのシャクシャク歯触りがいい。
と思ったら、妙なクセや苦みのない春菊もいい。

後半戦への突入を知らせるように、
地鶏のメンチカツサンド。 コロコロの球状に丸めた様子のメンチカツ。
それをみっちりと二つ並べて、
極薄にスライスしたパンにギュギュっとサンド。
カツの断面からは、
地鶏のミンチのたっぷり具合がよく判る。
地鶏の旨味がホロホロと伝わって、美味い。
脂を抑えつつ肉ゞしいのだ。

ズッキーニの野菜串を挟んで、
コースはいよいよ最終コーナーへ。
スープをたっぷりと湛えて沸いている、
水炊きの土鍋がやってきた。 “正に命のスープ”と謳うは、
地鶏のガラだけを一週間炊き続けたという、
やや白濁のスープだ。

具には、地鶏のもも肉とつくね。
噛む程に甘さ炸裂の長葱、平茸なぞ。 つい先日博多の「橙」でいただいた水炊きより、
さらっとしているのにコクが深くて、
じっくりとした滋味を思わせる、
そんなスープだ。

そして、〆の麺を投入して大団円。 多少煮込んでも負けない様子の平打ち麺。
ツルんとしつつ、スープがよくのる麺で、
スープの美味しさを最後まで堪能させてくれます。

路面電車がガコガコ通る南一条通り沿い、
札幌市電の中央区役所前停車場近くに、
地鶏料理「やまさ和」は、ある。 「やまさ和」の開業は、2021年11月のこと。
ネット上には、鳥長新潟で初代店主をしていた、
山澤さんが北海道に移って新しく開いたお店、
といった記述もみられる。
“やまさ和”は、つまりは”山澤”で、
ひらがなや別の漢字を当てるというのは、
和食店などで採られる方法だね。
ただ、「鳥長」という名には馴染みがある。
山澤氏が初代店主をしていたのが、
「練馬鳥長・新潟」であるとすれば、
その修行先はなんと、
練馬の「鳥長」ということになる。
練馬「鳥長」では、出してくれる鶏たちが、
地鶏であるとさえも謳わない。
地鶏料理と冠する「やまさ和」でも、
地鶏について産地を云い添えるだけなのは、
修行先「鳥長」の影響もあるのかもしれないな、
なんて思うのは穿ち過ぎでありましょか。

「やまさ和」
北海道札幌市中央区南1条西12-4-85 [Map]
011-200-0354
https://www.yamasawa.jp/

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