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居酒屋「藁焼 みかん」で焼呉豆腐横輪藁焼田中六五ぐつぐつ芹掻揚げ銀舎利のえるめす

嘗て平和台球場のあった、お濠端近くにあるイノベーティブな中華レストラン「moto」で、温めた紹興酒とともにこの日のコースランチを堪能した足で向かったのは、赤坂駅からひとつお隣の天神駅。
天神駅で西鉄に乗り換えて、さらに西鉄二日市で乗り換える。
目的地は、そう、ご存じ太宰府天満宮だ。

もう三度目になるので、凡その様子は知っている。
表参道の梅が枝餅のお店たちを横目に素通りして、
三の鳥居、四の鳥居を一礼しつつ潜り通って、
心字池を渡る紅い橋の袂までやってきた。 ♪心字池にかかる三つの赤い橋は、
一つ目が過去で二つ目が現在(いま)。
三つ目の橋で君が転びそうになった時、
初めて君の手に触れた僕の指……。
やっぱり此処へ来ると、
この唄の出だしを口遊むことになる(^^)。

東風吹かば匂ひおこせよ梅の花
あるじなしとて春を忘るな
そう詠んだ菅原道真公を慕って、
都から大宰府へ一夜にして飛んできたと、
そう伝えられるご神木”飛梅”をふたたび拝む。 ただ、残念ながらまだ梅の時季には早く、
しかも、御本殿が124年ぶりの大改修の真っ最中で、
本殿前の仮殿の陰に隠れてしまっていた。

気を取り直して参拝を済ませ向かったのは、
本殿裏手にある「お石の茶屋」。
ところが今回もまた休店日にぶち当たってしまった。
次回こそ此処で、梅が枝餅をいただきたいなぁ(^^)。

大宰府から西中洲のホテルに戻りひと休み。
大通りでもない西中州大通りを南下して、
国体道路を春吉の信号で横切り、
飲食店が並ぶ通りをのんびりとさらに往く。 春吉大通りを住吉橋へ向かって進むと、
右手の黒塗りの建物に大きな目印を見付けた。
それは白い暖簾にモノクロのみかんのイラスト。
これならきっと迷子になるひとはきっといない。
此処が「藁焼 みかん」であることを、
暖簾右手の表札でさらに確かめます。

オープンキッチンよろしく、
厨房を舟形のような異形のカウンターが囲む。 舟形の突端近くが炉端になっているのが分かる。

お通しは、新玉葱の摺り流し。 熱々を匙で少しづつ掬って啜る。
オイルや酸味の感じが洋風でもある。
うんうん、なんこう、ホッとする(^^)。

口開けの赤星を追い駆けるように届いたのが、
名物料理のひとつと紹介のあった「焼呉豆腐」。 素揚げしたような様子の”呉豆腐”。
呉豆腐とは、佐賀県有田町辺りに伝わる豆腐で、
豆乳に葛やでんぷんなどを加えて固めたもの。
火傷しないよう、箸で千切ってから、
そーっと齧り付けば成る程、
もっちもちで優しい味わい。
甘めの胡麻だれとおろし山葵がよく似合う。

店名「藁焼 みかん」ですもの、
藁焼きの品をぜひお願いしたい。 すると早速、舟形カウンター先端の炉端で、
天井のフードに届かんとばかりに炎が上がる。
思わず、ファイヤー!!と小さく叫ぶ(^^)。
ふと、宿毛の海っ縁で出会った、
水産加工場「沖の島水産」の排気口から出ていた、
鰹の藁焼きの炎を想い出す。

届いたのは、藁焼きされた横輪ヨコワ。 ヨコワはご存じのように、クロマグロの幼魚。
藁焼きにより周囲に火が入っている。
添えられた練り芥子をちょん、と。
藁の仄かな薫香とともに、
程よい脂を含むヨコワのふたつの表情が味わえる。

九州の地酒からまず選んだのは、
お品書き筆頭の純米「田中六五」。 福岡県糸島にある白糸酒造が醸すお酒だ。
糸島産の山田錦のみを使っていて、
蔵の八代目の田中克典氏が、65%精米で、
というところから”田中六五”としたらしい。
そうそう、糸島にも「白糸の滝」があるのです。

と、そこへ大きなナットのような、
六面体の焼き物のような器が届く。
ナットの中央には勿論、穴が開いていて、
そこがなにやらグツグツと沸いている。
ナット部分は間違いなくアチチ状態だ。 その上からやおらスタッフが、
チーズグレーターでチーズを摺りスリ。
チーズの匂いも沸き立ってくる。

これぞ、その名も「ぐつぐつ」。 ナットの中身は季節で変わるものだというが、
この日は、白子の天婦羅、海老芋の唐揚げを入れ、
上からあんかけ的白菜のクリームチーズのソース。
天火によってか五徳の上かにより、
まさに、ぐつぐつと炊いている。
ふーふーふー、ふーふーふー。
熱いねー、このナット、なかなかの蓄熱具合。
かかっている”あん”に不思議な魅力がある。
なんだかわからんけど、美味しいぞ(^^)。

甘鯛かきんきかで悩んで、
甘鯛を焼いてもらうことにする。
そうすると松笠焼きということになるね。 大根おろしに醤油を、その脇に柑橘をとご指南。
鱗のパリパリサクサクがやっぱり心地いい。
甘鯛の身の甘さも惹き出されて、
品のいい旨さでありますな。

お次のお酒は、純米超辛口と謳う、
寒北斗酒造の「寒北斗」。 寒北斗酒造もまた福岡の酒蔵。
大宰府の東方に山を越えた辺りの、
嘉麻市(かまし)にあるという。

視線の先には、おくどさん。
土釜の蓋の紅赤が印象的だ。 炊き上がるまで半時間ほどを要するので、
あらかじめ註文しておいて、待つべし、だ。

この日の「季節の春巻」の主題は、竹の子。 そこへ、生ハムとチーズを加えることで、
これまた不思議と妙に旨い春巻に昇華してる。
そんな工夫が嬉しいのー(^^)。

蕎麦に饂飩に中華そばに鍋にと活躍する、
冬のご褒美のひとつ、根っこを含めた芹。
でも、「芹かき揚げ」となれば多分、初めてのこと。 おおお、いいなぁ、えーよー。
芹のシャクっとした歯触りと青みが活きている。
そして、ぐぐっと芳ばしく迫るのが、根っこ。
芹の根っこは、かき揚げにしても魅力的なのだ。

福岡の郷土料理のひとつ、
「福岡がめ煮」もいただきたい。 九州地方以外では「筑前煮」と呼ばれる煮物が、
福岡や佐賀あたりでは「がめ煮」と呼ばれる。
鶏肉や野菜などなど、色んな食材を使うことから、
「寄せ集める」という意味の博多の方言、
「がめる」ないしは「がめくりこむ」から、
「がめ煮」と呼ばれるようになったという。
どこでいただいても、郷愁を誘う一品だよね。

そして、炊き上げられた、
「銀しゃり」の土鍋がやってきた。 蓋を外した土鍋の中をどれどれと覗き込めば、
粒が立ってひと粒一粒艶やかなのがよく判る。

お茶碗によそってくれた銀しゃりをまずは、
そのまま箸の先に載せて、いただく。 やや硬めの感じも好ましく、
お米の甘さがじわじわっと噛む程に。

そんな銀しゃりのトップに明太子。 これ、美味いに決まってる(^^)。
考えただけでまた唾が湧いてくる。

そんな美味しい銀しゃりでも、
きっと食べ切れないねと相談したところ、
残ったご飯はお土産にしてくれると聞いていた。 ところが、手渡されたのはなんと「えるめす」。
バーキンよろしく、ちゃんとバッグのフォルム。
なはは、こんな愛嬌が堪らない、ね。

福岡博多は、春吉大通りの住吉橋近くに、
居酒屋「藁焼 みかん」は、ある。 “奥春吉”に佇む黒塀に見紛う古民家風装いに、
大きな白い暖簾に蜜柑のシンボルマークが、
周囲からくっきりと浮かび上がる。
臨場感のあるカウンターに藁焼きの炎が昇り、
朗らかで人懐っこい笑顔で応えてくれる。
ただ居酒屋と呼んでしまうのは忍びなく、
かといって、和食、日本料理、割烹とするのも、
愛想が足りずに云い得ていない、とそう思う。
オトナの居酒屋?それとも割烹居酒屋?
うーん、肩書はどうあれ、きっと、
福岡を代表する美味し愉しの居酒屋であります。

「藁焼 みかん」
福岡県福岡市中央区春吉2-12-20 [Map]
092-712-0388
https://www.instagram.com/wara_yaki_mikan/

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