HERRING RAMEN「よいち」で鰊らぁ麺魚介コンソメ余市海汁極細超多加水麺の完成度

余市駅前のレンガ調タイル貼り建物3階の”ワイナリーの空き部屋”に泊まり、”ワインを楽しむホテル”として、ワインのペアリングとともに、余市料理を志向するコース料理を愉しんだ。
ワインの酔いが残ることもなくすっきりと目覚めたその翌日の朝、のんびりと準備をして、朝食をいただくべくゆっくりと階下へとモルタルの階段を下りる。

昨夜の夕食のレストランがそのまんま、
朝食の会場となる。 エントランスのホールから中を覗くと、
スタッフが準備に勤しんでいるご様子。

フロアに入った左手が、
小さなレセプションと厨房を囲むカウンター。 右手には、円卓を囲んで椅子が置かれ、
ちょっとした待合いコーナーのようでもある。
チェックインの手続きはここでと、
そんな構えなのかもしれません。

右の奥コーナーへと目を遣れば、
小振りなストーブが据えられている。
胡蝶蘭が載せられているところをみると、
この冬の役割はもう終えたというところか。 センターテーブルから左手奥を見れば、
昨夜もお世話になったセラーが見付かります。

そのセンターテーブルに陣取って、
朝食のお品書きをじっと眺める。 お品書きのタイトルは「鰊らぁ麺」。
朝からのラーメンにして、
余市・小樽の象徴のひとつ、
鰊を題材にしたラーメンがいただけると、
昨夜から愉しみにしていたのです。

3階の部屋には、チラシが置いてあって
オープン記念のクーポンが添えてあった。
手渡すそのクーポンを受け取りつつ、
註文をとってくれたのが、
店主の喜屋武(きゃん)さん。
お名前もお顔立ちも如何にも沖縄のご出身だ。
そーですかー、沖縄から遥々余市までー、
と思わずそんなやりとりになりますね。

ご註文は、鰊らぁ麺+味玉+ダイブ飯。
クーポンを使って、
鰊2切れをONしてもらいましょう。 深みや複層を思わせるスープの佇まい。
泡はエスプーマによるものか。
箸先で掬ってちょろっと舐めるとなるほど、
生姜の風味がふっとする。
トッピングの白髪ねぎを添えて、いざ。

スープのベースは魚介のブイヨン。
それを”余市の海”と呼んで塩仕立てにしている。
緑色の散らばりは、柑橘のゼスト。 ブイヨンにした魚介がどんなものであったなんて、
想像が出来るのは鰊も含んでいるだろうことぐらい。
でも、思わずブンブン頷いてしまう程に、
優しくも複雑に旨味が行き交って、旨い旨い。

スープの表面を彩っている、
「煮干しの旨味を抱えた身欠き鰊のオイル」もきっと、
もの凄く威力を発揮している気がする。

そんな魅惑のスープにはやっぱり、
こんな極細にして超低加水の、
こんな麺がベストマッチ。 テーブルに点る照明の明かりを背にすると、
アルデンテに茹で上げているのが分かる。
秒単位にタボを操っていることでしょう。

クーポンでトッピングしてもらった鰊は、
スープの熱で一部温められた格好になる。 スープと麺とでここまでの高い完成度となると、
鰊らぁ麺を見た目で体現するところの鰊の身が、
むしろ添え物にすらなってしまう。
ビジュアルとしてはぜひ欲しいアイテムだけれど、
鰊の身を載せたものが基本メニューにないのは、
もしかしたらまだ、ピタリと収まるものには、
至っていないからなのかもしれない。
お品書きには「LOOPループの鰊」という一項あるも、
昨夜の美しき鰊とは似て非なるもの。
かといって、京都「松葉」のにしんそばよろしく、
身欠き鰊を載せちゃう訳にもいかないし…。
うーむ(^^)。
ラーメンに生の魚介を具として使う難しさが、
ここに滲んでいるような気もします。

最後はお約束の”ダイブ飯”。 完成度高き魚介ブイヨンのスープ飯を、
隅から隅まで堪能して大満足であります。

センターテーブル上には、
“NEW”と肩書したメニューもあって、
それは鰊らぁ麺の醤油バージョン。 ほー、こっちも気になるなー、
でも連食は出来ないなーと思いつつ眺めると、
スープにもオイルにもかえしにも麺にも、
そして具材にも更なる工夫が施してある。
あ、具材には「ニシンと鶏の雲吞」なんてのもある。
塩仕立てのらぁ麺の鰊トッピングも早晩、
進化版が投入されるかもしれないね。

雨は上がったかなと、
エントランスから外へ出てみると、
入口には「LOOP」とは別の暖簾が掛かっていた。 「HOTEL」と大きく縦書きする壁面文字のある、
建物の隅切りの壁面下部に、
当店「よいち」のOPENを知らせるサインがあった。
RESTAURANT「LOOP」の新任シェフと同じく、
この年明けからの展開なのですね。

ニッカ余市蒸溜所で夙に知られた余市駅駅前の、
HOTEL「Yoichi LOOP」のレストランに、
HERRING RAMEN「よいち」は、ある。 ラーメン店経験者と伺う店主の喜屋武さんが、
ここまでの完成度を思うラーメンを仕立てのかと、
そりゃスゴいと思えばそうではないらしく、
現シェフがここでのシェフを担う前に在籍していた、
札幌のフレンチ「ル・ミュゼ」の石井誠シェフと、
石井シェフが監修する札幌場外市場の人気ラーメン店、
「とくいち」磯部店主との全面監修によるものだ。
喜屋武さんには失礼しちゃったけれど(^^ゞ、
ふむふむなるほどーと、合点が行く。
そうなると、「ル・ミュゼ」にも「とくいち」へも、
いつかお邪魔したいと思うのが人情でありましょう(^^)。

「よいち」
北海道余市郡余市町黒川町4丁目123 Yoichi LOOP内 [Map]
0135-21-7722
https://yoichiwine.co.jp/

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