そんなお店のひとつが、 日本橋公会堂の正面口近くの酒肴「柿一」。
一間間口の入口右脇の足元に品札が立て掛けてある。使い込まれた木札は、何処かの壁に引っ掛けていたもののようだけれど、 それをこうして並べているのが、なんだか風雅だ。
袖が触れ合いそうな間隔で並べられた椅子のひとつに納まって、 さっき眺めた木札のひとつが知らせる品を口にする。 「生姜焼定食」の生姜焼きは、北京鍋で炒めるスタイル。たっぷりのロース肉に丁寧に火が入って。 キリッとしたタレ味と豚の旨味に茶碗のご飯が甘く感じられます。
目を惹く品書き「伴助鯖定食」。「伴助鯖」とは、福島県いわき市の干物専門店による鯖の干物であるらしい。 干物にして見るからに、立派な鯖。 凝集した旨味と脂の甘さ。 なんだかとっても贅沢な気分です。
とある日の「煮魚定食」は、金目鯛のお皿。金目鯛らしいふんわりとした白身に滲みる煮汁。 煮汁を吸った大根には、金目鯛の旨味。 これもまた、素朴にして贅沢な気分にさせてくれます。
お隣さんの手元を眺めて気になっていたのが、「まぐろ漬け定食」注文を受けてから、ボウルの醤油タレに潜らす鮪は、赤身や中とろか。 魚介を沢山、無造作に盛り込んだ何処かの海鮮丼にはない、 気風ある美味しさであります。
急がず、慣れた所作でおひるの定食を供する大将の背には、 夜のお品書きと思しき酒肴たちがホワイトボードに書かれてある。 実に何気ないメニューなのだけど、なんだかとっても佳さそうな、 そんな予感がいたします。
日本橋公会堂近くの一間間口、酒肴「柿一」。夕暮れ時に訪れて、ぬる燗のお猪口を手に酒肴の並ぶホワイトボードを眺めたい。 ゆったり解けた時間が過ごせると想います。
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「柿一」 中央区日本橋蛎殻町1-32-1 [Map] 03-3667-7375
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