にっぽんの洋食「新川 津々井」で冬のご馳走カキフライに定番トロトロオムライス

中央区新川で洋食屋と云えば、ご存知「新川 津々井」。
ところは、亀島川を渡る霊岸橋信号と永代通りの新川一丁目信号を結び、箱崎湊橋通りへと繋がる道路沿い。
よくよく見ると、珊瑚色したファサードはなかなか珍しいのではあるまいか。
そんな壁に掲げたアクリルのサインには、”にっぽんの洋食”と標されています。

“にっぽんの洋食”というショルダーフレーズにはどこか、
洋食界を背負って立つような意識も含まれているのかな。そんなことを毎度思いつつ、硝子越しの厨房を横目に、
上階のフロアへとアプローチするのです。

冬の時季の特筆メニューと云えば、
それは勿論「カキフライ」。飾り切りを施した檸檬を戴いたフライ達は、
端正な揚げ口で「つつ井」と刻印したお皿に佇む。
サラダがたっぷりなのも毎度嬉しい処であります。

玉子タマゴしてはいないけれど、
これまたたっぷり目に添えてくれるタルタル。三重県は、浦村湾や的矢湾から届く牡蠣のフライに、
お醤油を少々垂らしてタルタルたっぷりが実に佳い。
ふと、鳥羽の先の浦村「中山養殖場」でいただいた、
焼き牡蠣の旨味を思い浮かべたりなんかいたします。

此処にもやっぱりGingerちん御用達のしょうが焼きがある。何気に、どーだっ!と主張する「ポークジンジャー」の肉厚ロース。
ただただ柔らかい代わりに脂ぎってる、なーんて肉質ではなくて、
割としっかりした繊維質の間に旨味が詰まった感じがいい。
勿論、おろし生姜の風味たっぷりのソースで御座います。

“にっぽんの洋食”「新川 津々井」のスペシャリテのひとつが、
ご存じオムライスのラインナップ。「トロトロオムライス」と呼ぶお皿には成る程、
トロトロねっとりとしたテクスチャー。
ご飯のひと粒ひつ粒が玉子なぞに均質に包まれている。
そんな船体を浮かべた、
トマトの酸味が心地いいソースの働きも見逃せません。

通りにも入口通路にも硝子窓を面している厨房。
思わず覗き込むとちょうど「オムライス」の調理中。偶には「ハムオムライス」を更に豪華にして、
ポークの「オムハヤシ」を奢ってしまう時もある。
ポークやビーフをトッピングしてのハヤシソースなので、
そうか、それでオムライスの中身がチキンライスではないのかと、
そう独り言ちることもありました(笑)。

“津々井名物 三種の丼”の一翼を担うのが、「ステーキ丼」。ステーキ肉のみならず、下のご飯にもたっぷりと滴るは、
バルサミコ的酸味を加味したお醤油基調のとろとろタレ。
シェフが修行したホテルオークラのフレンチのエスプリが、
何気にどこかに潜んでいる、のかもしれません。

そして”津々井名物 三種の丼”の筆頭が「ハンバーグ丼」。繋ぎの決して多くないパテとか、
何より濁りなき味わいのドミグラスがやはり、
正当なる「洋食」を想わせてくれます。

それら名物たちの陰に隠れるように、
やや控えめに註文を待っているメニューのひとつが、
ポーク、チキン、ビーフと揃ったカレー三種。小麦粉を丁寧に炒めた形跡は十分に伝えつつも、
バシャバシャっとしたカレーは、油脂を控えた印象もする。
カレーもまた名物と自ら呼ぶような高みに至るのは、
どうやらこれからのことのようです(笑)。

にっぽんの洋食「新川 津々井」の創業は、
今から70年程を遡る1949年(昭和24年)のこと。終戦から数年後の混乱期にもう、
当地新川に飲食店を興していたことにまず敬意を払いたい。
少々お高いなと思うのも毎度のことなれど、
それでも通ってしまうのは、
それだけの気風を感じさせてくれるからなのです。

「津々井」
中央区新川1-7-11 [Map] 03-3551-4759

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