中華そば「杭州飯店」で燕三条背脂らーめん元祖と謳われるどんぶりに風格想う

koshuhanten風も冷たくなってきた秋の或る日の夕方。
信越本線を辿って新潟の三条市にいる、なんてことがありました。
東三条から分かれた弥彦線が新幹線と連絡しているのが、燕三条駅。
その駅名をみた瞬間に思い出す料理名。
燕三条といえば、あの背脂ラーメンの地ではありますまいか。

燕三条背脂ラーメン発祥の店、
とも云われている店があった筈と調べると、
中華そば「杭州飯店」がヒットする。
何処にあるのかと訊ねれば、
燕三条からふた駅通り過ぎた駅が最寄らしい。
東京への帰りがけに寄り道してみることにしました。

弥彦線の西燕という駅からひと気のない道を辿り往く。
ふと畑の上を凝視するとなんと蝙蝠が3羽飛び交っていたりする。
koshuhanten01陽の落ちる直前に目的地前に到着しました。

お店の前にしばし佇んでいると、
偶々お店から出て来たお店の方らしきオバチャンが声を掛けてくれた。koshuhanten02あ、いらっしゃい、どちらから?
え、東京から?
わざわざわ訊ねてありがとね、ありがとね。
確かにふらっと寄れる場所ではないけれど、
なんだか反って恐縮です(笑)。

黒地金文字の扁額が壁に掛かり、
天井を何気に中華な意匠が飾ってる。koshuhanten03新進のラーメン店には持ち得ない、
中華料理店の風格が窺えます。
ご註文は勿論「中華そば」。
「餃子」も添えていただきましょう。

やや小振りのドンブリになみなみと注がれた、
スープそして背脂の海。koshuhanten04想定通りの姿光景になんだか安堵。
裂いた割り箸を両手に挟んで、ドンブリに正対、一礼します。

ちょっと顔を近づけて凝視してみる背脂の具合。koshuhanten05蒲田の「らーめん潤」のドンブリをなんとなく思い出しながら、
うん、旨そうとひとり言ちる(笑)。
言い古された云い回しになってしまうけど、
見た目ほどこってりではなく、さらっと軽やかなコク味で、
煮干しを思うスープにも醤油や塩っ気も濃過ぎないのがいい。

そんなスープの中から掬い上げた麺がまた魅力的。
にゅるんとしたテクスチャと独特の平打ち形状が、
スープをたっぷりと引き上げてくる。koshuhanten06甘さに似た粉の魅力を愉しみつつ、
脂の甘さとスープの旨味を一気に啜り込む。
うん、うん、うまひ。
かつての馬込「醤屋」で初めて出会った頃には、
ちょっとした衝撃だったけれど、
今では割とスタンダードなものになった玉葱の薬味。
歯触りと辛味がスープにリズムを添えてくれて、いい。
当初から使われていたスタイルなのでしょか。

その一方、何気なく註文した「餃子」が届いて目を瞠る。koshuhanten07なにせ一個がやたらデカイい。
ひとつに小振りな餃子3個分ぐらいのあんが入っていそうな、
そんな重量感が箸の先にずっしりと伝わる。
汁の滴る具と麺と同じ旨味のある皮のコンビがなかなかイケる。
でもね、これを4つは流石に多かった。
食べ切れなかったことを謝ると、
2個のお皿をお薦めすれば良かったですねと、
逆に謝れられしまいました。
いえいえ、御免なさいでした。

弥彦線西燕に所在、
燕三条背脂ラーメンの元祖と謳われる中華そば「杭州飯店」は、
1933年の創業であるらしい。koshuhanten08ご当地の他店を味わう機会はなかなかないので、
その是非は判らないけれど、
元祖と云われ得る風格には間違いがなさそうに想う。
この味を基準線に携えてふたたび、
「らーめん潤」あたりを訪ねてみようかな。

「杭州飯店」
新潟県燕市燕49-4 [Map] 0256-64-3770

column/03632