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倉敷美観地区のセンターラインには、ご存じの通り倉敷川が横たわっていて、竹笠の船頭が観光川舟を操る光景が枝垂柳の葉越しに観ることが出来る。
今度こそその”くらしき川舟流し”に乗りたいと、ちょうど倉敷川が折れ曲がるところに架かる中橋の前にある観光案内所に向かうも、既に長蛇の列。
ひとりが予約できる席数に特段制限をかけていないようで、予約叶わず…。
一度川面から美観地区川沿いの光景を見上げてみたかったのだけどなー。
それはまた次の機会の宿題にとさっと諦めて、
タクシーに乗り込んで長躯向かうは、
美観地区をずっと離れた市内の北東部の、
もうすぐ岡山市へ入ろうかという辺り。
山陽新幹線の高架の側道として走る、
県道389号吉備津松島線沿いだ。
タクシーを降りてまず、吃驚(^^)。
周辺の閑散とした雰囲気の中に忽然と、
スイスの田舎町で見たような邸宅が佇む。
思わずほーーと感嘆であります。
店内に足を踏み入れて、
木製のベンチでしばし待機。
壁を少し掘り込んだ部分には、
女性に花束を捧げる紳士のレリーフ。
女性が少しそっぽを向いているようで、
そこにどんな物語があるのでしょう。
奥側を見遣れば、アーチが迎える化粧室。
上階への階段の景色も麗しく、
なにより白い塗り壁の表情と木のコントラスト。
それが、いい。
ダイニングフロアに案内いただいて、
振り返ればそこここにマホガニー的色合い。
無垢材を思わせる腰壁は、
部屋の周囲を巡っていて、
骨太な木の柱や梁が高い天井を支えてる。
突き当たりには大きな暖炉が据えられている。
訊けば、11月の末頃から実際に使い始めるという。
郊外にあるからこそ、煙も出せるのですと笑う。
その暖炉の脇でふと目に留まったのが、
柄の付いた円盤状の道具のようなもの。
暖炉のための道具かと思えば然にあらず。
17世紀か18世紀の頃に、
布団やシーツに用いられていたアイロン、
なのだそうだ。
柱の一本には、蝉のレリーフが掛かる不思議。
用途としては花瓶なのだけれど、
フランスでは、蝉が幸福のシンボルとされており、
先代のオーナーが現地で蒐集したもののひとつだそう。
蝉は、ソムリエナイフにもよく刻まれているという。
スペインの「Abadia de San Campio」
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葡萄は、アルバリーニョ100%。
綺麗な呑み口でミネラル感があり、
でも硬くなくて、フルーツの柔らかさがある、
そんな印象のする。
本日のスープは、薩摩芋のポタージュ。
表面のミルクの泡には、
ローズマリーとタイムで香りづけされている。
この日のメニューが掲げる前菜は、
パテ・ド・カンパーニュ、
サーモン 低温調理 クリームチーズ、
サバのマリネ フロマージュブラン、
そして、500円プラスの本日の前菜だ。
どれも良さげだなーと腕組思案して、
お願いしたのが、本日の前菜、
鱧のカダイフ包み、であります。
それは、コロンとした美しきフォルム。
その下に敷かれたソースは、ラビゴット。
野菜の微塵切りに松の実やマスタードなどを、
やや酸味のあるソースに仕立てている。
切り口を見ると、ムースにした鱧を、
折り曲げた鱧の身で包むようにして、
それをカダイフでさらに巻いている。
うんうん、美味しい。
“天使の髪”の繊細な歯触りと芳ばしさ。
その先に鱧の二層が軽やかに迎えてくれる。
本日のお魚料理は、
ボウズギンポのポアレ。
下に敷かれているソースは、
リーキ(西洋葱、ポワロ)のソース。
鮮やかなピンクのビーツの泡が、
粋なコントラストを飾る。
ボウズギンポのその身はふっくらふわふわ。
ポアレらしいカリっとした皮目が、いい。
坊主銀宝は、ゲンゲ亜目の大きめの魚で、
ダイビング中でのマクロの被写体、
ギンポの仲間、ギンポ亜目とは違う、らしい。
次の肉料理、ブルギニヨンに合わせて、
「Coteaux Bourguignons Pinot Noir」。
老舗なドメーヌ、マニャン家によるものという。
赤としては比較的軽めで、明るい果実感のする。
この日のメニューから選んだメインは、
牛ホホ肉の赤ワイン煮込み ブルゴーニュ風。
オーブンで三時間ほど火を入れた後、
煮込まれたホホ肉は、しっとりほろほろ。
丁寧に裏漉ししたじゃが芋のピューレが支える。
古典的な気分も一瞬過るけれど(^^)、
デンと構えたステーキなんかより断然好み。
美味しい、美味しい。
デザートは、6種類の中から2種類を選ぶスタイル。
“全部”も選べる「賛否両論」をふと思い出しつつ(^^)、
選んだのは、プリンとメロンのタルト。
プリンは、昭和のカフェの硬いヤツ、
の気配もありつつ、
芳醇なミルクがふるふるするヤツ。
カラメルの塩梅が、いい。
ちょっと時季外れかとも思ったメロンに、
「くだもの王国おかやま」を思ったりなんかして。
実は、テーブルクロス代わりに、
お皿たちの下に敷かれていたのが、
フランスはパリの地図を印刷したもの。
その上を目で追えば、
聞き覚えのある通りや建造物の名が、
色々と見付かって面白い。
そして、セーヌ川に浮かぶ中州、
シテ島の西端に見付けたのが「ポンヌフ」。
ポンヌフ Pont Neuf(“新しい橋”の意)は、
シテ島に架かる、パリに現存する最古の橋だ。
「ポンヌフ」と云えばまず思い浮かべるのが、
新橋駅前ビル1号館の「ポンヌフ」のナポリタン。
あちらの店名の由来もきっと、
同じシテ島の橋 “Pont Neuf”にあるのでしょう。
岡山市との市境も近い倉敷市の北東の隅、
山陽新幹線高架の側道沿いに、
フランスの地方料理「ポンヌフ」は、ある。
帰り際に振り返り見てもやっぱり、
この佇まいは素晴らしいのひと言。
この如何にも彼の地の邸宅のような建物は、
先代のオーナーが建築士をフランスへ連れて行き、
ある建物を指差して「これを建ててくれ」と、
そう依頼して建てられたものだという。
外観のフォルムや窓廻りの造作、
内装壁や木部、家具や装飾などへの拘りは皆、
それが決してナンチャッテではない、
当地を思わせる雰囲気の源泉だ。
「ポンヌフLE PONT NUFE」
岡山県倉敷市上東516-7 [Map]
086-462-8300
https://pontneuf.jp/restaurant/