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池上本門寺をお参りする度に、そうだそうだと思い出すお店が数軒あります。
一軒が蕎麦の「蓮月庵」であり、その斜向かいの甘味処「あらい」。
未だ訪問叶わないバー「自由雲」。
そして、昼に夜にとお寄りしている、
とんかつ「燕楽」もその内の一軒だ。
「燕楽」の間口は、丁度二間ほど。
がらがらと引き戸を開けると、すぐにカウンターがあって、先客さんたちの背後をカニ歩きで奥へと進みます。
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奥にひとつだけテーブルがあって、その脇の椅子には、きっとパン粉になるのであろうパンがどんどんと9本綺麗に積まれてる。
厨房中央の頭上には、「燕楽のこだわり食材」と題した掲示があって、「食パンの耳を削り中の白い所だけで作った自家製パン粉」とあるのがなるほどの光景だ。
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そして、使っている豚はというと、いまや有名となった山形・平田牧場の「三元豚」。
お昼の「カツランチ」もリーズナブルで悪くはないのだけど、「燕楽」の魅力を探るにはと「ロース定食」を選びます。
俎板に載る、研ぎ上げた包丁で整えられたお肉は、十分な肉厚。
自家製のパン粉を纏わせて、すーっと油殿に挿し入れます。
ちなみに揚げてるラードは、豚背脂ではなくて、内臓を包んでいる腸間膜から搾り出した貴重なものだという。
「とんかつ定食」や 「かつ丼」のかつが先に揚がっていっても、肉厚「ロース」のかつは油殿でまだまだじっと我慢の子。
どう使い分けているのか、銅と真鍮の鍋が並ぶコンロ。
油鍋の表情をじっと見つめる店主は、音もじっと聞いている。
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頭上のフードを見上げると、フィルターの部分まで綺麗に磨き上げられていて、ぴっかぴか。
厨房壁のステンレスも同じく、ぴっかぴか。
丹念に掃除している様子が思い浮かぶようで気持ちよく、そして、店主の心意気が伝わるようです。
そして、恭しく油から引き上げられた肉厚ロースかつ。
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その度に刻んだものを加えた笊からキャベツをこんもりと添えて、「ロース定食」の完成です。
揚げる前に比べれば勿論厚みは減っているけど、それでも量感を思うに十分な厚み。
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断面の繊維が実に均質で、衣と一体になっているのが美しい。
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「カツランチ」の時に同じく早速取り出したのは、ヒマラヤ岩塩のミル。
お皿の脇にがりがりと削る薄っすらとピンクがかった粗い塩をちょちょんとつけて、いただきます。
ふむふむふむ。
すっと柔らかく、でも繊維を切るような噛み応えがあって、ロースにして脂の甘さに品がある感じ。
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どっちがと訊かれれば、蒲田「丸一」の「限定極上ロース」がスキだという応えになるけれど、三元豚の醍醐味はあるのじゃないかとそう思う。
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そうそう、去る時季には、「カキフライライス」という貼り紙が壁やサッシュの硝子にありました。
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その時の牡蠣の形をそのまま表現した、平たい形状がちょっと面白い牡蠣フライだったのを思い出します。
牡蠣フライとしては、ちょっと衣が硬かったかもしれません。
池上でとんかつの店と云えば、とんかつ「燕楽」。
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今となれば、腕を磨いた芝神明商店街の「燕楽」を実はもう追い越しているのではないかと、もう一度ぴっかぴかのステンレスを眺めながら思うのでありました。
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「燕楽」
大田区池上6-1-4
[Map] 03-3754-8243
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