たまたま歩いていた銀座中央通りにいつの間にか免税店を謳うラオックスが建っていて、大型観光バスからわらわらと建物の中になだれ込んでお買物に励んでいる様子を目の当たりにして吃驚いた。
デパートや量販店には相当の収益貢献をしてくれたに違いないけれど、大きなスーツケースも壁にして舗道を通せんぼしている状況に出くわすと、その傍若無人な雰囲気に呆れ顔になってしまう。
バブルの頃の日本人も海外でこんな感じだったのかもしれません。
そんな空気は築地市場にも押し寄せてきていて、場外も場内もいつもにも増して大混雑。
それもやっとこ落ち着いたかなぁという3月の或る日、場内の8号館へ。すると割と通路がすっきりとしていて「やじ満」隣の「かとう」にも空席待ちはなし。
しばし立ち止まって眺めるお品書きプレート。当然あれこれと気になるばかりの20行ほどなのだけど、久し振りにアレいっとかなくちゃと合点して、早速その暖簾を潜ります。
右手カウンターの隅っこでお迎えしたのは「かきどうふ」の器たち。もりもりっとそして端正に並ぶ牡蠣の身が何気に存在感を示しています。
ふっくらした牡蠣は例によって広島の。ポン酢に浸して喰らい付けば、はふはふする中から滋味がじんじん伝わってくる。
身体の芯から温まり、額辺りに汗が滲んでくる。
牡蠣の浸かっている昆布出汁もひたひたと旨く、なんとも豊かなおひるご飯であることよ。
一杯きゅっと出来ないのが至極残念に思わせる冬の佳品でございます。
G.W.前の或る日ふたたび「かとう」の暖簾。
見上げた店内の品札のひとつに「金目鯛西京焼き」がある。「生サバの味噌煮」も「天然ブリのてり焼き」も気になるけれど、今日はひとつ金目西京をいただきましょう。
しっかり焼いた皮目はぷっくりと焦げ目がついている。その周囲は金目鯛らしいくっきりした緋色がいい。
期待通りに品のいい脂ののった金目鯛の身に西京味噌の風雅な香りが匂い立つ。これまたなんと贅沢なおひるご飯であることよ。
こんなのを毎日いただいたら罰が当たりそうな、そんな気さえいたします(笑)。
まっすぐ豊かなおひるご飯がいただける、
築地城内8号館の和食「かとう」。子供連れのお客さんにはきっぱりと断る様子を垣間見ると、そうだったここは荒ぶるオトコたちが汗して働く魚市場の食堂だったことを思い出す。
子供連れでやってくるところではなかったはずですもんね。
「かとう」
中央区築地5-2-1 築地市場内 魚がし横丁8号館 [Map] 03-3547-6703