伏見通りから門を潜り境内へ。
聳り立つ大きな幟は、南無聖観世音菩薩の八文字と一緒に、風と雨に揺れている。
そんな大須観音のお堂に一礼してからさらに奥を臨むと、境内がそのままアーケードと繋がっていて、大須観音通商店街と示す看板が読める。
のんびりとした雰囲気のアーケード。
そのアーケードの下に入って傘を畳んで振り向けば、そこにあるのがうなぎの店「宮田楼」だ。
外装は漆喰風の外壁が綺麗に手入れされていて、殊更草臥れた印象はないものの、暖簾やその上の庇あたりはシブい風情になっています。 そして店内は、そんな入口廻りの雰囲気と同じ時間を過ごしてきたことを思わす年輪の味わいだ。
薄くカリっとしたところが包んでいるのは、ふっくら柔らかな気配の白い身。
ふと熱田神宮の有名店「あつた蓬莱軒」を思い出し、それらと比べると、タレや焼きっぷりのコッテリ感が控えめに映る。
お約束に従って、まずは茶碗によそったまんまをガツガツって頬張る。
タレは十分に甘く、ぐっと引き込む味わいの芯と脂とを備えている一方で、見た目に沿うように遠火の炭火というイメージのやや繊細な焼きぶりだ。
今度は、細かく刻んだ葱をたっぷりとのっけて。
意外なほどツユだくなご飯とちょっと混ぜ込むようにして、ハグハグ。
うん、薬味のしゃくしゃくと鰻の旨み、脂と甘辛いタレの風味の渾然が思わず頷かせる感じ。
そして、出汁を注いで、茶漬け仕立て。
やっぱりお茶でなくて、出汁がいいよなぁと独りごち。
呑んでの仕上げならお茶を注ぐスタイルで、こうしてひつまぶしの流れの中でいただくのであれば出汁で、というのが持論であります。
丸いお櫃から1/4づつを取る所作が通例で、茶漬け仕立てを啜ってもまだ1/4ほどがお櫃に残る。
で、その4杯目を2杯目と同様の薬味のっけにしてしまうのも通例パターンの四段活用。
ちょっぴり山椒を添えたりなんかして。
うん、この食べ口がやっぱり一番うまい。
そこを考えれば、茶漬けのない「並ひつまぶし」でという手もあるのかもしれないね。
大須観音に寄り添う、創業大正元年の老舗「宮田楼」。
買い物帰りのおばちゃんが慣れた様子で「うな丼」をと声を掛ける様子もまた似合っていて、何気なくも印象的な光景でありました。
口関連記事:名物ひつまぶし「あつた蓬莱軒」本店 でカリしっとりなひつまぶし(06年06月)
「宮田楼」 名古屋市中区大須2-21-31 [Map] 052-231-3815
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