外装は漆喰風の外壁が綺麗に手入れされていて、殊更草臥れた印象はないものの、暖簾やその上の庇あたりはシブい風情になっています。 そして店内は、そんな入口廻りの雰囲気と同じ時間を過ごしてきたことを思わす年輪の味わいだ。 「おしながき」の冒頭は、「上長焼き定食」「長焼き定食」。 でもここでもやっぱり所望するのは、ひつまぶし。 あれ?っと思ったのは、「上ひつまぶし」のところにお茶漬け出来ます、と書いてあって、「並ひつまぶし」のところにはそれがないこと。 お茶漬けまでの三段活用がひつまぶしのお決まりかと思っていたけど、そふいふ訳ではないのかしらん。 お櫃に塗す、から「ひつまぶし」であるとすると、茶漬けにすることとはそもそもは直接関係がない、ってことかもしれないね。 そうはいってもひとまず、三段活用に馴染んでしまっていることもあってお願いしていた「上ひつまぶし」がやってきた。薄くカリっとしたところが包んでいるのは、ふっくら柔らかな気配の白い身。 ふと熱田神宮の有名店「あつた蓬莱軒」を思い出し、それらと比べると、タレや焼きっぷりのコッテリ感が控えめに映る。 お約束に従って、まずは茶碗によそったまんまをガツガツって頬張る。タレは十分に甘く、ぐっと引き込む味わいの芯と脂とを備えている一方で、見た目に沿うように遠火の炭火というイメージのやや繊細な焼きぶりだ。 今度は、細かく刻んだ葱をたっぷりとのっけて。意外なほどツユだくなご飯とちょっと混ぜ込むようにして、ハグハグ。 うん、薬味のしゃくしゃくと鰻の旨み、脂と甘辛いタレの風味の渾然が思わず頷かせる感じ。 そして、出汁を注いで、茶漬け仕立て。やっぱりお茶でなくて、出汁がいいよなぁと独りごち。 呑んでの仕上げならお茶を注ぐスタイルで、こうしてひつまぶしの流れの中でいただくのであれば出汁で、というのが持論であります。 丸いお櫃から1/4づつを取る所作が通例で、茶漬け仕立てを啜ってもまだ1/4ほどがお櫃に残る。 で、その4杯目を2杯目と同様の薬味のっけにしてしまうのも通例パターンの四段活用。 ちょっぴり山椒を添えたりなんかして。うん、この食べ口がやっぱり一番うまい。 そこを考えれば、茶漬けのない「並ひつまぶし」でという手もあるのかもしれないね。 大須観音に寄り添う、創業大正元年の老舗「宮田楼」。買い物帰りのおばちゃんが慣れた様子で「うな丼」をと声を掛ける様子もまた似合っていて、何気なくも印象的な光景でありました。 口関連記事:名物ひつまぶし「あつた蓬莱軒」本店 でカリしっとりなひつまぶし(06年06月) 「宮田楼」 名古屋市中区大須2-21-31 [Map] 052-231-3815
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