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酒場「琥珀」で ポートエレン2ndにブラックラフロイグ老舗の風格
上野ガード下の「大統領」を離れて、
湯島方向へと中央通りを渡る。
「蓮玉庵」や「池之端藪」のある仲町通りに入り込む。
客引きから掛かる声を掻い潜って、四辻を左へ。
曲がったところで、ここら辺りかと周囲を見回す。
すると脇道の先に黄色い看板が見つかりました。
“BAR”と書かずに”酒場”と謳う「琥珀」へといざ。暗がりのカウンターは、柱を介してL字に廻っていて、ちょうど空いていた正面へと並んで座ります。
古色がこぢんまりと包む空間の空気が濃密で、じわじわと臨場感が増してくる。
店主の木村さんと言葉を交わしてから、改めて周囲をきょろきょろ。
正面のバックバーは二重になっていて、格子状の棚の奥にも別の棚が見えます。
「ポートエレンあります?」と連れが訊ねると、女性おふたりと入れ替わるようにボトルを携えてきて、並べてくれる。
ポートエレンのボトルがこうして4本も並んでいるのはそう見られる光景でもないぞと思いながら、
説明に耳を傾ける。
で、選んだのは、1978年蒸留、Age24年のオフィシャルモノ「PORT ELLEN 2nd RELEASE」。ポートエレンは、既にクローズしてしまっている蒸留所なので、日に日に希少性が増しているのは間違いないはず。
きっとお高いのだよね~と思いつつも早速、その琥珀を舐める。
アイラっぽさが丸くスムースな呑み口で、舐めるほどにそれが柔らかく思えてくる。
ラフロイグでなにか、とアバウトなお願いに対してお試しあれと薦めてくれたのが、ボトラー、デュワー・ラトレー(A.D RATTRAY)による18年モノ。
そして、同じくラフロイグ、1991VINTAGEの「HIGHGROVE」。
かのプリンス、チャールズの別荘があるのがハイグローブで、つまりはチャールズ皇太子のお好みエディションということらしい。
実は、このラフロイグ二本の味わいをほとんど憶えていない。
それは、最後にもっとレアな滴を舐めてしまったから。
木村さんが恭しく筒から抜いたのが、俗に云う「ブラック・ラフロイグ」。
オフィシャルでは潔くも白いラベルが印象的なラフロイグにあって、
ラベルが真っ黒い1980Vintageの27年モノ。
ラベルには、96 of 972とあり、世界でたった972本という限定ものだ。
そしてそれは単にラベルが黒いから”ブラック”と呼ばれるのではなくて、ボトルの中身がびっくりするほどのダークカラーだから。
黒いのはシェリー樽による熟成によるものと木村さんは仰るが、ただただ「シェリー樽で熟成=黒くなる」というのがピンとこなくて、樽内面の焦がし(リチャー)具合が違うこととの合わせ技なのじゃないか、などなどと暫し議論(笑)。
ラベルにはOLOROS SERRY CASKとあって、
100%オロロソシェリー樽という樽で熟成させたもののよう。
タンニンが影響するのか、どうやら、オロロソ・シェリーを熟成させた樽は、
モルトも濃いぃ色に熟成させるらしい。
そりゃーお高いでしょうとショットの値段を訊くと、なんと1.5万円だという。
ひえ~ぇ!!
ボトルの価格からいくとお安い設定にしてくれてはいるものの、こりゃ手がでないなと早々に諦めていると、連れのひとりがウンウンと唸り悩んでいる。
もしやオーダーする気なのかのとハラハラしていると、「い、い、いただきます!」と呻いた。
グラスに注いで判る、やっぱりダーク。こうなると、ただじっと呑むところを見守るしかない。
「スゲー!」とか「今まで呑んだことない!」とか叫ぶので、もっと判るように云ってくれと懇願する。
う~、じゃちょっとだけ舐めればいいじゃんということになってご相伴に預かる(笑)。
ぺろぺろ、ぺろ。
ん~、確かに今までに呑んだことない(笑)。
圧倒的な凝縮感と多層的な奥行きが意外なほど素直な纏まりをもって舌を滑り、鼻腔を抜けていく。
年嵩が描くさらりとした、そして繊細なカラメルのような風味が主体となっていて、ピートや塩っ気は遠くにある残り香。
あはは、こりゃ、スゲーや(笑)。
そして、お会計。
承知してはいたけれど、うぐゥやっぱりと、ほんの一瞬絶句する面々なのでありました(笑)。
湯島でバーと云えば必ず名の挙がるといわれる老舗の風格、酒場「琥珀」。さっきまで銀座の路地裏にいたかのような錯覚は、強ち見当違いのこととも言い切れない、かも。
Mさんも、このドアを開いています。
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「琥珀」 文京区湯島3-44-1 高橋ビル1F [Map] 03-3831-3913