高知県出身のご主人が土佐料理を中心とした和食を供してくれるお店があるという。
ところは、学芸大学駅近く。
高架沿いを都立大方向に進んで左に折れる。
ずっと以前、「BELLE AIR」ってショット・バーにお邪魔した覚えがあるのだけど、この辺りじゃなかったかな。
そんなことも考えながら見上げた看板に、
和食「よね津」。
すっとその前を通り過ぎてしまいそうな、二間ほどの間口の小ぢんまり感がいい。
細目の格子の間からカウンターの様子が、なんとなく覗ける。
引き戸を開けると、L字に奥へと伸びるカウンターの先にテーブルがひとつ。
店内も狭からず広からずで居心地よさそうな、落ち着いた大人な空間だ。
「よね津」では、旬のおすすめ料理七品もしくは八品のおまかせコースやかつおと酒肴のセット料理があるけれど、アラカルトでいただくことにしましょう。
まず受け取ったお椀の出汁に思わず目を閉じて、しみじみ。
そして、やっぱり土佐といえばと「名物かつおたたき」。
ああ、生姜や大蒜もいいけれど、この燻した香りってのも脂のほどよくのったかつおに不思議とよく似合うのだね。
高知の川といえば、日本最後の清流と云われる四万十川。
その四万十川で獲れた「ごり」と呼ぶハゼの仲間を使ったお皿が、
「四万十川ごりの唐揚げ」。
ポリポリと軽ろやかに愉しむ衣の歯触りの中に澄んだ野趣を仄かに示してくれている、ごり。
うん、いいね。
目に鮮やかな紅でやってきたのは、「紅芯大根のサラダ」。
胡麻油を含んだタレが大根自身の甘さを誘って、
シャクシャクとした食感と合わせて、予想以上にイケる。
お待ちかねだったのが、「白子の春巻き揚げ」。
白子を春巻きの皮に包んで揚げちゃうなって、想像するだに旨そうでない?
さっと刻んだ断面からいまや溢れ零れんとする白子を思わず凝視(笑)。
きっと熱いよねーと云いながらそっと齧ると、あっつっっ!
やっぱり熱い。
ひと吹きだけ、ふーとして改めて齧ると、ふうむ、旨い。
生の白子以上にクリーミーな舌触りとコクとが活性しているようで、そこへ大葉の香りが気の利いた挿し色になっているンだ。
これもお待ちかねだった「甘鯛のかぶら蒸し」が、また旨い。
みぞれにして表面を覆ったかぶらの甘さ滋味が堪らない。
かと思ったら、甘鯛の白身がまたベクトルの違う甘さほっこりと伝えてくれる。
あとからだとなくなってしまうかもですよ、
と云うので慌ててお願いしておいた「土佐清水鯖棒寿司」を〆に。
銀の皮目に斜め格子に入れた包丁が印象的。
どれどれと口にする「よね津」さんの棒寿司は、
酢〆が浅めで、生に近い仕立てのもの。
酢がきゅきゅっと利いた鯖も好きだけど、
なるほどこふいふのもまたいいもンだと知る。
冬場の鯖はさらに脂がのってるってことでもあるのだろうね。
サバスキーは、八戸の鯖も京都の鯖寿司も土佐の鯖もどれも好きなのだ(笑)。
土佐料理を軸にした大人な和食と肴でお酒のすすんで困る、学芸大学「よね津」。
ご主人の米津さんは、土佐料理の「祢保希」での修業を経て、ここ「よね津」を開いたのだそうです。
「よね津」 目黒区鷹番3-4-13 笹崎ビル1F
[Map] 03-3716-5991
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