
そして、ちょうど頭上の首都高環状線を潜るところで、弾正橋を渡る。
橋の北側は、楓川弾正橋公園と呼ぶ公園になっていて、およそ殺風景ではあるものの、ひる休みの時間帯には相応に人影がある。
水のないタイル貼りの川が配されていて、
そこに小さな橋が幾つか架けられている。
スチール製の欄干のようなものが両サイドに置かれていて、
ちょっと不思議な光景を呈している橋もある。
どうやらその欄干は、
嘗てここにあった弾正橋のレプリカであるらしい。
楓川に架かっていた弾正橋のアーチは、
東京に架けられた最初の鉄橋であるらしく、
今は、江東区富岡一丁目に移されて、
八幡橋と呼ばれているという。
普段何気なく通っている処にも、
そんな文化遺産的経緯があったのですね。
そんな弾正橋から八丁堀側に下っていくと、
およそ正面に黄色いテントが見えてくる。
鍛冶橋通りが、くの字に左にやや曲がる、
その角地にあるのが「八丁堀スエヒロそば」だ。
ランチタイムが近づいてくるとおよそ必ず、
店の前に行列が伸びてくる。
その行列に加わって立ち止まり、
通りの向かいを眺める度に、
今はなき「中華シブヤ」のことを想い出す。
さて、ランチタイムには行列必至の、
「八丁堀スエヒロそば」の御献立は、
基本のおそば及びうどんそれぞれに、
小盛、大盛、特盛がある。
それとは別に、この店の代名詞とも云える、
名物「太そば」にも小盛、大盛がある。
おにぎり、おいなりさんに加えて、
硝子ケースを飾る天ぷらたちがスタンバイだ。
何故か自ずと選んでしまうのは、
「太そば」に「ゲソ天」のトッピング。
それは、”限定”という言葉に弱いのと同じくらい、
“名物”という言葉にも惹かれてしまう所為か(^^)。
まさにそのまま烏賊ゲソをたんまり含んだ、
こんもりとした掻き揚げ状の天婦羅は、
油の温度の高さを思わせる濃い目の揚げ色。
浸った汁とともに齧り付けば、
微かな焦げの風味と一緒にゲソの歯応え。
ゴワゴワっとする感じが面白いンだ。
ゲソ天の下から引き摺り出すように太そば。
如何にも挽きぐるみ色した太い蕎麦。
黒いと表現してしまえる蕎麦だ。
そして、その量感が嬉しがらせる。
或るおひる時にも、いつもの太そば。
“人気品”と朱書きされた「とり天」に玉葱天半分、
そして玉子を落として貰いましょう。
嬉しいことに、玉葱天、紅生姜天、春菊天に、
たぬき、きつね、わかめのトッピングは、
半分サイズも選べるのであります。
玉葱天の端っこがやや焦げている。
そんな天婦羅が浸っているのは、
関西人びっくりの黒いつゆ。
醤油の濃いぃ、これぞ関東風仕立て。
「六文」系と聞けば、うんうんと頷く。
そんな黒茶色い汁の湯殿から、
ムンズとばかりに箸で引き上げる太そば。
ワシワシっと食めば、食む程に、
いい意味で野卑な風味に包まれるのがお約束。
「六文そば」と云えば、中延駅前を想い出す。
「六文そば」中延店と向かい合うようにあるのが、
立ち食いそば・うどん・きしめん「大和屋」。
およそ「大和屋」派だったというのは内緒な話(^^)。
と或るおひる時にはふと、
太そばでない方のそばはどうかと思うこともある。
トッピングを欲張って、玉子に加えて、
すべて半分サイズの紅生姜天、玉葱天に若布。
紅生姜天の赤が目に痛い(^^)。
普通のそばはまさに、普通の立ちそばのそば。
太そばとの対比がどうしてもあって、
それが余計に普通に思わせるのかもしれないね。
と或る冬場のおひる時。
前回帰りがけに見掛けた”旬の味覚”の貼り紙。
そこに書かれていた「牡蠣天」を目当てに来たものの、
それは、春の足音に呼応するように、
「蕪天」に切り替わっていた。
汁にひたひたの蕪の天ぷらを崩れないよう、
そーっと箸の先で支え持って、口へ。
あああ、蕪の甘さがそのまま愉しめる。
蕎麦は勿論、太そば、だ(^^)。
鍛冶橋通りが首都高環状線を潜ると同時に、
弾正橋を渡って、くの字に曲がる角地に、
立喰そば「八丁堀スエヒロそば」は、ある。
1978年(昭和53年)創業というから、
生まれて半世紀近いことになる。
つまりは、自分が八丁堀に通うようになる、
その前からあったということでもある。
店頭のテントには「そばのスエヒロ 八丁堀店」とあり、
硝子ケース脇に下げられたの壁の提灯には、
“八丁堀”と添えた「スエヒロそば」の提灯がある。
公式✕アカウントには「八丁堀スエヒロそば」とあるので、
現時点での店名はおそらく「八丁堀スエヒロそば」。
ネットから拾い読むと、
ご存じ老舗立ち食い「六文そば」を直営していた、
株式会社そばのスエヒロという会社が、
嘗てフランチャイズ展開したのが、
「スエヒロそば」であった、らしい。
「スエヒロそば」として数店舗があったようだが、
そばのスエヒロの立ち食いそば事業終了後、
独立営業となった八丁堀店のみが残った、と。
その後、一度は閉店したものの、2022年から、
日暮里の人気店・一由そばの創業者の方が、
店を継ぐ形で営業を再開した、という経緯らしい。
焼肉系の「スエヒロ」とは全く関係ない、のかな。
そして、「八丁堀スエヒロそば」はなんと、
月曜日を除く平日は午前3時から14時の営業と、
まるで市場内の食堂のよう。
早朝にお世話になることはないとは思うけど、
今度は何気に、うどんを食べてみようかな(^^)。
「八丁堀スエヒロそば」
東京都中央区八丁堀4-2-1 [Map]
https://x.com/suehirosoba