くにちゃん、ご無沙汰ぁ。 そして、一階の厨房前からずらずらッと並んだテーブルには、 ご無沙汰の顔々、初めての方々の顔がある。 テーブルの一番奥では、月島仮面さんと「龍圓」のシェフ、栖原さんが如何にも親しく話し込んでいる。 お喋り好きそうなシェフ(笑)のニカニカの表情は、福々の料理を喰わせてくれそうな、そんな予感を抱かせてくれます。
麦酒とかをすっ飛ばして、端から紹興酒で乾杯のテーブル。 ちょうど、監修の期間限定喜多方らーめん「大崎食堂」も絶賛販売中の大崎会長ともご無沙汰の乾杯です。
口開きは、「龍圓」のザ前菜「ピータン豆腐」のカクテルグラスから。 ムース状にした豆腐は、大豆の風味が濃厚に活きたもの。そこをホジホジしていくと、刻んだピータンが現れる。 その皮蛋と豆腐とをいい具合にちょい混ぜしていただけば、 むふふと思わずひとりごち。
サラダ仕立てでやってきたのが、「小ヤリイカ老酒漬け」。とろんと柔らかく、じわじわと旨味が沁みる。 烏賊の滋味をフレッシュに活かすにこんな方法もあるのだね。 紹興酒に勿論よく合います。
その艶麗しき「鯖の燻製」には、椒麻ソースが載っている。椒麻ソースは、煎った四川山椒のパウダーと、長ネギ、生姜を包丁で細かくたたき、 醤油、酢、胡麻油、みじん切りのブラックオリーブとを合わせたものだそう。
そしてその鯖と同舟なのが、 「三重県鳥羽の牡蠣、老酒漬け燻製 ミモレットチーズ」。老酒の深い甘みと薫香が気品よく包み込んだ牡蠣の身には、程よい凝縮感が宿っていて、 うん、旨い。
綺麗な揚げ色の春巻だねぇと断面を覗き込む。「海老クリーム春巻き」の外殻は、海老独特の風味を優しくいただくための軽妙な仕掛け。 さくっと軽やかにして、澄んだ海老クリームの旨味をそっと後押ししてくれます。
お、トリュフだねとこれまた覗き込ませてくれのが、 「オータムトリュフのかに玉」だ。そのままでも十分美味しいカニ玉に、トリュフのピールを添えたよう。 その香りの奥行きは、なんだか兎に角ズルいものです(笑)。
「蒸しオレンジ白菜 金華ハムあんかけ」は、三浦の白菜の葉先のところの甘みもズルいけど、金華ハムがはぐくんだあんかけスープもこれまたズルい。三浦大根でサンドした唐墨を合いの手に使うなんていう、 贅沢な手管に興じます。
何杯目かのカラフェの紹興酒をお代わりして迎えたのが、 「信玄鶏、砂肝、ブロッコリ、紫人参の炒め ケッパー風味」。コロコロして、シコシコした歯応えの中に素材の素直な滋味が弾けます。
「蒸し肉団子」には、フカヒレあんかけがとろりんと。肉団子が下敷きにしているのがメイクイーンのピュレ。 ジャガイモのふわっとしたコクがこのお皿のアイデアのキモかもしれません。
ゴハンの芳ばしくも甘い匂いが漂ってきたかと思ったら、それは「ジャスミンライス炒飯」。刻んだ干し貝柱や叉焼などなどと一緒にパラパラと綺麗に炒めたタイ香り米。 それゆえ、より軽やかに品良く旨いチャーハンとして愉しめます。
デザートには、艶粉色のイチゴアイスを戴いた杏仁豆腐。意外や、苺の風味で杏仁の香りが引き立つという不思議。 さらっとして、一連のお皿たちに句点に相応しいグラスです。
人懐っこい印象の栖原シェフが繰り出す優しくナチュラルで軸のある料理で人気の、 浅草・中國小菜「龍圓」。強すぎる味わいや濃過ぎる仕立てに頼らずして、輪郭のある像を結ぶお皿たち。 いいなぁ、いいなぁ。 今度はぜひ、具なし焼きそばもいただかなければいけません。
「龍圓」 台東区西浅草3-1-9 [Map] 03-3844-2581 http://www.ryuen1993.com/
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