雑木林の茶屋「縁側日和」で出来栄え唸る武蔵野うどん縁側囲む座敷暖炉ある一幅の絵

所沢市と狭山市とを結ぶ幹線道路のひとつ、埼玉県道126号所沢堀兼狭山線の下富中央交叉点から東へと下富通りを往った先にあるのが、納屋茶寮「MEGURU」。
今は、納屋養生「めぐる」とその名を更新して、鋭意営業中である模様。
下富通りをさらに進んで、クランクするように砂川堀沿いの道を行くと左手に、気を付けていないと見落としそうな小さな案内板が見えてくる。
その先はすぐに、三芳町の”いも街道”でもある、
県道56号線に地蔵通りが交叉する。

白線もない砂利敷きの駐車場に車を停めて、
花壇に建植した看板を改めて確認して、
その奥に向けて歩いていくと、
枕木のような古材には、
ランプのイラストとともに、
“雑木林の茶屋”とペンキの文字。 玄関はこっちだねと方向を替えた途端に、
女郎蜘蛛の蜘蛛の巣にもろに顔から突入、
うわわっと立ち止まる(^^)。

そりゃ、蜘蛛の巣くらいあるよねと話しつつ、
建物の左手を眺めれば、
戸袋の向こうに長手の縁側の気配のする。 庇の奥に細かい縦格子の木戸が迎えてくれる。

農家の玄関先っぽい土間から上がり込み、
ちょうど先客さんたちが退いたタイミング。
畳敷きの三間、四間をぶち抜いたカタチの、
お座敷をひと巡りする。 座卓、所謂卓袱台が、
余裕をもって配置されているね。

南側から西側へとL型に雪見障子が回っていて、
その外側に沿って縁側が配されている。 廊下としての役目も果たし乍ら、
もしかしたら外気との気温差を和らげるような、
緩衝帯の役目も担っているのでは、
と思ったりする。

対して、北側の中央には、
薪ストーブのある板張り床のコーナー。 部屋内と戸外との明るさのコントラストもあって、
建物裏手の雑木林が一幅の絵のように映る。
ちょうど柿が実る、そんな季節でした。

その窓辺の脇には、古の書斎コーナーの演出。 旧いタイプライターなんか置いてしまいたい、
そんな心持ちも判らないでは、ない(^^)。
その並びに配膳や喫茶のためのカウンターがある。
座面が低くて少々難ありだけれど、
暖炉の前のソファーに陣取りましょう。

品書きを眺めると成る程、
うどんがメインのメニュー構成になっている。 玄関先のA看板の白墨にも書かれていたのが、
やっぱりそうこなくっちゃの「武蔵野うどん」だ。

小さな簀の子を敷いたうどんは、
謂わば立派な地粉色。 埼玉県産の地粉と石臼で挽いた全粒粉とによる、
自家製麺だといううどんには確かに、
ふすまを含んでいるのが判る。
カフェっぽいお店にあり勝ちな、
なんちゃってうどんも少々危惧していたけれど、
それはまったくの杞憂でありました。

武蔵野うどんたる肉汁は、
大振りの豚バラ肉をたっぷりと煮含んでいる。 これまた大振りな油揚げも何気に嬉しい。
きりっと濃い目の味付けなのが、
その汁の醤油色からも窺えます。

どれどれとやや太めのうどんを箸で引っ掴み、
肉汁にどぷと浸して引き上げる。 豚バラも一緒に掴んでしまったけれど躊躇なく、
いや、それがよいのだとばかりに大口を開ける。
おおおお、いいねぇ。
太めなのに決して硬くなく、
噛み応えが心地いい。
噛む程に地粉の風味のする。
汁の出汁、醤油の濃度、豚の脂の具合も含めて、
なかなかの出来栄えだ。
そんじょそこらの武蔵野うどん店に、
まったく引けを取らないぞ。
なんちゃってを疑ってすいませんでした(^^)。

日替わりのデザートには、
狭山紅茶の和紅茶と一緒に。 抹茶風味しっかりの濃密プリンに、
小豆とクリームの加減のいい甘さがよく似合う。
狭山茶は抹茶にするにはあまり向かないと、
そう聞いたこともあるのだけれど、
このプリンも狭山茶使用なのかなぁ。

空気もすっかり冬色を帯びた晴れた日に、
ふたたび雑木林の茶屋を訪れた。 玄関前に積まれた薪たちがいよいよ、
本格的に活躍する季節になってきた。

賑やかなお座敷。
今回は、そのお座敷の角の卓袱台に陣取ろう。 ヨギボーとはまた違う感じの、
三角錐の不思議な座布団のようなものに、
半ば凭れるようにする。
座敷の各座卓はいずれも、
女性陣に占拠されているようです(^^)。

日替わりメニューではあるもののと、
「スパイスカレーライス」を狙っていたのだけれど、
残念ながらメニューから外れてた。 ならばと「昔ながらのカレーうどん」の温かいの。

「武蔵野うどん」と同じく豚バラ肉が、
およそ惜しげもなく投入されているのが有難い。 自家製麺うどんのぶりっとしたしなやかさが、
カレー汁と出逢っても存分に活きている。
ひりひりっと辛さほどよいカレー汁からは、
じわじわと和出汁の旨味が滲んでくる。
うん、美味しいやん(^^)。

ストーブの前のソファが空きましたよと、
そうお声掛けいただいたので、然らばと。 ディスプレイとしても優れモノの暖炉には、
焼かれた薪が橙色の灯りを点して、
温熱を頬へとそよそよと送ってくる。

選んだデザートは、
オーブンに焼いて蜂蜜色になった薩摩芋に、
バニラアイスを載せたヤツ。 バーナーで炙ってキャラメリゼしたかのよう。
芋の甘味が結晶になったような歯触りがいい。
その甘味と別のコク味のアイスの甘味。
温かい芋にアイス涼感。
それらが混然となって一体となって、
美味しくって思わず、顔を見合わせた(^^)。
女性陣が卓袱台を囲む理由が、
ここにもありそうだね。

お会計するデザートのショーケースの上には、
三芳町ご自慢と思しき大きな薩摩芋。 近くを南北に走る県道56号線は、
“いも街道”とも呼ばれていて、
芋畑や農園、農家が散在している。
川越が薩摩芋でも知られているけれど、
実は三芳町がその産地なんじゃないかと、
秘かに思っているんだ。

“いも街道”でもある県道56号線に、
地蔵通りが交叉する三芳町上富の一角に、
雑木林の茶屋「縁側日和」は、ある。 店主の実家であり生家であったであろう、
雑木林の中に佇む古民家に手を入れて、
“茶屋”に仕立てた「縁側日和」。
店のインスタにはその縁側についてこう書く。
縁側は、夏場は直射日光を遮り部屋を涼しく、
冬場は冷気を遮る暖かな日だまりの空間。
縁側で、夏は夕涼み、冬は日向ぼっこ、
春は新緑と風をダイレクトに感じ、
秋の夕暮れは虫たちの音色。
なんともいえない風情ある心落ち着く空間。
壊さなくてよかった。
いつまでも残していきたい。
縁側の魅力を素直に言い表した佳き文章は、
古民家を再生した慶びと安堵に結ぶ。
自家製麺のうどんにも、デザートにも同様に、
店主スタッフの実直さが表現されています。

「縁側日和」
埼玉県三芳町上富1901-3 [Map]
049-258-0400
https://engawabiyori2022.com/

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