郷土料理「はや川」で人文字のぐるぐる球磨川のロック苓北町の岩牡蠣シャクの天婦羅

それは、この5月のゴールデンウィーク後半のこと。
熊本城ホールで催される玉置浩二のオーケストラツアー「billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2026 “Fanfare”」を契機として、十数年振りに熊本を訪れた。
朝早いのを避けて、のんびりと午後の便で阿蘇くまもと空港へと飛んだンだ。

快速の空港リムジンバスで通町筋停留所まで。
一宿の世話になるOMO5熊本に荷物を降ろした。 まずは、ホテルの目の前の通町交叉点で、
通町筋電停に停まる、
熊本市電の雄姿を拝む鉄ちゃんとなる(^^)。

通町交叉点は、背景に熊本城を望む、
ポピュラーなフォトスポット。 熊本駅・田崎橋から健軍町までのA系統が赤表示、
上熊本から健軍町までのB系統が青表示なのだね。
田子櫓など一連の櫓あたりでしょうか、
大掛かりな足場が架けられているのが判ります。

ホテルの部屋で荷物を解き、
少しのんびりしてから館内を徘徊し、
ホテル横手のアーケード街、籠町通りへ。
近くにある小泉八雲の熊本旧居を眺めてから、
武蔵小路と呼ばれる横丁へ折れ入って、
その右手に今宵の止まり木、
郷土料理「はや川」の庇付の看板が見付かった。

カウンターでと予約の際にお願いしていて、
その通り厨房に正対するカウンターの隅へ。
郷土料理コースでの予約だったのに、
それをすっかり忘れてお品書きを凝視して、
どういう組立てでいくか悩んだりなんかして(^^)。

小さい生麦酒をいただいて、
郷土料理コースのはじまり始まり。 まずは、蕗の白和え。
グレープフルーツの香りと酸味を添える、
という攻め口も面白い。

続いて、前菜の盆がやってくる。 左下は、トマトの白ワイン煮で、
その脇に熊本の南瓜に薩摩芋。
熊本の南瓜と云うのは、
春日ぼうぶらのことでしょか。
その手前が自家製のチーズと唐墨。
そして、右下には酢味噌を載せた青菜が、
さりげなく置かれている。

と、その青菜こそが、
熊本の郷土料理のひとつ、
“人文字のぐるぐる”、だ。 実は、初めて見聞きするそのフレーズ。
なんでまた、”人文字のぐるぐる”なんて、
摩訶不思議な名前なのかと訊けば、
人文字(一文字)とは、
葱の種類、というか、分葱の別称で、
熊本の名産品のひとつでもある、
その分葱を湯掻いて、
グルグルっと巻いてあるから、
そのまんま、”人文字のぐるぐる”なのだ。
うん、憶えておこう(^^)。

ご旅行ですか、どちらからいらしたのですか、
と女将さんからお声掛けいただく。
それに応えるとなんと、その翌々週あたりに、
熊本から所沢へ行く予定があるのですと仰る。
えええーと驚いて、訊けば、
大学で水球をやられている息子さんの試合が、
早稲田の所沢キャンパスのプールであって、
それをぜひ見学したいのだと云う。
ただ、お店の営業があるので前乗り出来ず、
既にエアーのチケットは押さえているものの、
後から聞いた息子さんのチームの試合時間には、
どうやら間に合いそうにないのです、と仰る。
ふむー、それは残念ですねー。
日々お店を営んでいると、
そんなご苦労や不自由もあるのですね。

続く小鉢には、クロマグロ、本鮪。 時期的にもあまり脂ノリノリではないけれど、
それがいい、その方がいい(^^)。

熊本はやっぱり米焼酎かなー、
「鳥飼」も熊本の焼酎だったっけ、
などと話しつつ選んだのは、
球磨焼酎「球磨川」をロックで。 球磨焼酎についておさらいすると、
球磨焼酎酒造組合のWebページにあるように、
薩摩焼酎、壱岐焼酎、琉球泡盛と並んで、
日本に4つしかない産地呼称が認められた、
本格焼酎のブランドのひとつ。
国産米のみを使って、
人吉・球磨の水で仕込み、
人吉・球磨の地域で蒸留し、
瓶詰めしたもののみが、
球磨焼酎と名乗れるのだ。
その中で「球磨川」は、
“球磨川酵母”による自然発酵の、
玄米麹と玄米を用いて造る焼酎だという。
ふわんと甘い感じがして、
改めて美味しい焼酎だね。

お次の小鉢には、河豚の湯引き。 河豚の種類を訊けば、ショウサイフグと。
シーズン終わりの河豚の中では案外、
小さいトラフグや養殖のトラフグよりも、
色味や歩留まりなどが、
ショウサイフグの方がよいケースもあって、
この時季には使っていると仰る。
なるほどー、日頃縁遠いぃ河豚料理、
トラフグがいつ何時もただただ格上であると、
そう思い込んでいたけれど、
そうとも言い切れないケースもあるのだと、
知ることができました。

お次も謂わばお造りの器。
酢味噌を添えた蛸と鯛と馬刺し。
平目の縁側は、
海苔で和えて雲丹を載せている。 雲丹は、天草の五和町から届いた、
ムラサキウニ。
比較的身入りがいいので、
地の雲丹を使うことが多いそう。
シャクっとした歯触りの縁側、
ちょうどいい厚さの馬刺しもまた佳き。

こちらも時季の名残りのたけのこ焼き。 きっと美味しいと思わせるそのサイズ。
大きく育っちゃった竹の子はエグくてアカン。
カプっと齧り付けば、迸る竹の子らしい風味。
いいねー(^^)。

そこへ、おっと、岩牡蠣だ。 天草諸島の下島の北西部、
苓北町(れいほくまち)で獲れた岩牡蠣。
大き過ぎないのがまず、いい。
この日に供するためにと届いたもので、
当然に新鮮そのもの。
うんうん、久し振りの岩牡蠣だけれど、
やっぱり、魅惑的なのだなぁ。

「球磨川」ロックのお代わりをいただいて、
アコウと湯葉巻きのあんかけ。 片栗の衣で揚げた赤魚鯛の身のホロホロに、
三つ葉と海苔の出汁の利いたあんが、いい。
香りのいい海苔って、
こんな活かし方もあるのだね。

カウンター越しに交わす会話は自ずと、
2016年に起きた地震の話にもなる。
子供の頃からずっと身近な存在で、
生活圏の一部でもある熊本城の被害は、
謂わば熊本地震の象徴のようなもので、
それはなによりも、
自分たちの生活がいっぱいいっぱいで、
地震から2ヶ月程は毎日のように揺れて、
断水が続いていて、
お店も半年ほど休業したという。
熊本は地震がない土地だと、
皆そう思っていたところに急にきた、
その驚きも強烈だったに違いない。

肉料理は、小鍋仕立てすき焼き。 熊本県産の和牛が小振りな土鍋に炊かれて。
これはもう、見た目通りの旨いヤツ。
そして、このくらいの量が、
美味しい量であります、ね(^^)。

最初、シャコの天ぷら、と聞こえたので、
おおお、蝦蛄の天婦羅かーと思ったものの、
いや、シャクの天ぷらですと訂正された。 ん?シャコじゃなくて、シャク?
シャクとは、アナジャコのことだという。
蝦蛄は海底の泥地に生息する、
シャコ目の生き物で、
穴蝦蛄は、干潟に穴を掘って棲む、
エビやカニの仲間の十脚目の生き物。
穴蝦蛄は、殻が柔らかいのも特徴だという。
両者は名前や見た目が似ているものの、
生物の分類、生息する場所、
そして体の硬さが違う別の生き物なのだ。
漁師が穴蝦蛄の穴に毛筆を差し込んで、
誘き出して捕まえる様子をどこかで見たような、
そんな気もする。
有明にしかいないもので、
5月頭から7月くらいにかけての時季もの。
殻が柔らかいのでそのままどうぞ、
ということで、頭からそのまま齧り付く。
磯っぽい海苔のような独特の風味がして、
成る程、面白い面白い。

お食事は、竹の子のおこわと呉汁。 呉汁(ごじる)についておさらいすると、
大豆を水に浸し、磨り潰したものを”呉”と云い、
その呉を味噌汁、汁物に入れたものを指す。
おこわの下に敷いた、
桜の葉の塩漬けの香りが、芬々と。
ふー、満腹、満足、ご馳走さまでした。

熊本城下の繁華街の一角、
籠町通りのアーケードに交差する武蔵小路に、
郷土料理「はや川」は、ある。 創業から60余年の三代目。
営まれるご夫婦の穏やかな空気が、いい。
落ち着いた雰囲気の中でいただく、
肩肘張らない郷土の料理、
地のもの旬のものの食彩がまた、いい。

先の熊本地震から10年。
この7月にふたたび起きてしまった地震で、
復興作業の続く熊本城もまた被災して、
石垣が崩落し、櫓の土壁にひびが入った。
半年も休業したというお店の様子が気になって、
手短にと連絡してみたところ、
棚のお皿たちや酒瓶が落ちて割れたりし、
壁にひびが入ったりしたものの、
10年前に比べれば、被害は少なく、
営業することが出来ていると聞いて、
少し安心した。
会社の会合や観光客が戻るまでには、
それ相応の時間が掛かるので、
しばらく我慢が続きますね。
また今度、熊本を訪れる際には、
ぜひまたお寄りしたいと思っています。

「はや川」
熊本県熊本市中央区安政町5-18 [Map]
096-352-1967
https://www.instagram.com/hayakawa_kyoudoryori/

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