首里城の膝元の首里赤田町、「首里そば」近くの住宅街の細道にある琉球料理「赤田風」へ4年振りにお邪魔した夜。ゆいレールで牧志駅まで戻ってきて、山羊料理「さかえ」が懐かしい竜宮通り社交街や「青島食堂」のあるグランドオリオン通りを横目にしつつ、沖映通り沿いのホテルへ。
客室のバスタブの湯に浸かりながら、
硝子越しに見下ろせたのは、
今は暗渠化されて、
市場本通りのアーケードになっている、
かつての「ガーブ川」が描く、
如何にも川の痕跡を示すような、
緩やかな蛇行でありました。
その翌朝は、シャッと起きて、
近くのレンタカー店で車を借りて、
若狭大通りから波ノ上通りへ。
立派な鳥居が迎えるは、
琉球国の一の宮とされる「波上宮」。
扁額には、沖縄総鎮守と添え書きされています。
御祭神は、「波上宮」のWebサイトによれば、
伊弉冉尊(いざなみのみこと)、
速玉男尊(はやたまをのみこと)、
事解男尊(ことさかをのみこと)。
遙か昔の人々は洋々たる海の彼方、
海神の国、ニライカナイの神々に、
日々風雨順和にして豊漁と豊穣に恵まれた、
平穏な生活を祈った。
その霊応の地、祈りの聖地の一つが、
この波の上の崖端であり、
ここを聖地、拝所として、
日々の祈りを捧げたのに始まる、とある。
海に突き出た小さな半島のような、
およそ長方体の高い岩盤の上。
灯台を置くのも似合いそうな、
海辺に屹立する崖の上が、
自然と祈りの地となった感じが、
なんだか容易に想像できる。
そんな立地の「波上宮」が、
沖縄総鎮守「なんみんさん」だ。
諸国一之宮御朱印帳にご朱印をいただいて、
二の鳥居の右脇を下っていけばすぐに、
波の上ビーチに出る。
波の上ビーチは、
那覇で唯一の遊泳可能なビーチとされる。
眼前に空港へ向かう高架の道路が通るという、
不思議にアーバンなビーチなのだけれど、
水も砂も十二分に綺麗で管理されていて、
以前ここで泳ぎ、
パラソルの下で過ごしたことがある。
思い出すのは、その時のこの光景と、
今はもう閉めてしまった、
県庁近くの沖縄料理店「よね屋」のこと。
オヤジさん、元気にしているかなぁ。
波上宮、そして波の上ビーチを後にして、
レンタカーを沖縄自動車道に載せ走らせて、
許田ICを経て一路、今帰仁方面へ。
名護から今帰仁村へ入ったばかりの、
県道名護運天港線沿い。
話題と悪評、期待と落胆が交錯する様子の、
テーマパーク「ジャングリア沖縄」へ向かう前に、
腹拵えをとお邪魔したのが、
沖縄料理食堂「ちまぐー」だ。
菖蒲色した大きな暖簾を払うと、
ちょうどふた組ほどの先客さん達が、
お会計を済ませたところで、
奥にある小上がり手前のテーブル席へとご案内。
羽目板を横に張った壁には、
沖縄赤瓦の民家を模した枠に、
ペンキ塗りの如何にも手作りの、
どこか愛らしい品書きがある。
向かって右側が定食メニューで、
左側がそばメニュー。
定食の筆頭に示されているのが、
店名を冠した「ちまぐ定食」で、
それは謂わば、豚足の唐揚げ定食。
ご存じ「みそ汁定食」が末尾を飾ってる。
あ、その下の貼り紙では、
井之頭五郎こと松重豊さんが、
今まさに、いただきますと手を合わせている。
なんと、偶然にも五郎さんと同じ席で、
食事をいただく格好になったぞ(^^)。
そのお品書きの上には、
食堂スタッフ一同と銘のある短冊があった。
うちなーぐちで書かれてあるようで、
あまり要領を得ないけれど、
どうやら今帰仁に来たならば、
チマグーに寄って、
チマグーの美味しいもので、
共に百歳まで長生きしよう的なメッセージだ。
五郎さんは劇中で、
まぁ縁起のいい食堂ってことかな、
とコメントしている。
その食堂スタッフの皆さんは、
みんなオバアが似合う女性が五人ほど。
カウンター越しの厨房や、
お皿を運びながら話される言葉も勿論、
快活なるうちなーぐちで、
実に通る声が賑やかで朗らかで、いい。
五郎さんは「ちまぐ定食」だったのだー、
と思いつつも、選んだのは「くんち定食」。
豚の三枚肉とお豆腐とレタス。
それを大蒜で炒めたものが「くんち」。
「くんち」とは、うちなーぐちで、
根気とか体力、スタミナを意味するそう。
いそいそとお皿に顔を寄せ、
立ち昇る湯気に近づけば更に、
大蒜の芳ばしさに包まれる。
三枚肉らしい厚みの豚バラの甘味が、
刻んだ大蒜の風味にグイと押されて、
こりゃたまらん、になる(^^)。
大蒜風味のタレの濃さが豆腐にも沁みて、
クタッとしたレタスの歯触りがいい合いの手。
三枚肉、豆腐、レタスをご飯の上に、
ちょんちょんしてから口に運べば、
ご飯までもがより美味しくなるのですね。
五郎さんが”ちょいそば”、と呼んでいたのが、
汁椀に盛られた澄んだ汁と少々の麺と蒲鉾。
不思議とこんなんが嬉しいのですよね(^^)。
相棒が選んだのは、「みそ汁定食」。
ずっとずっと昔のこと。
初めての沖縄だったか二度目だったか、
建て替える前の牧志公設市場の二階の食堂で、
「みそ汁定食」という文字を見付けた時の、
ええええーという驚きを懐かしく思い出す。
味噌汁だけの定食ってどふいふこと?と思い、
どんぶりにたっぷりと入った味噌汁を目にして、
妙に納得したこともまた想い出すンだ。
壁に貼られた「沖縄タイムス」によれば、
沖縄料理食堂「まちぐー」の創業は、
割と最近の2010年(平成22年)のこと。
還暦で飲食店未経験だった仲宗根智江子さんが、
夫と開業した店を4人の妹さんたちの、
サポートの下で切り盛りしてきた、という。
そうか、うちなーぐちのオバーたちは、
5姉妹の皆さんだったのだ。
那覇方面から向かえば、
今帰仁の入口にあたる呉我山の県道沿いに、
沖縄料理食堂「ちまぐー」は、ある。
「ちまぐー」とは、うちなーぐちで、
豚の足先、ひづめ周辺の部位をいう。
五郎さんが劇中食べていた、
「まちぐ定食」の豚の足先、豚足の唐揚げは、
智恵子さんら5姉妹のお母さんの味だという。
そう思うと五郎さんと同じ「まちぐ定食」か、
ちまぐと三枚肉とソーキとそばがセットになった、
欲ばりな定食「令和定食」を選ぶべきだったかな、
なーんて思ったりなんかして(^^)。
「ちまぐー」
沖縄県国頭郡今帰仁村字呉我山580-1 [Map]
0980-56-2324

