ただ偶には、名の知れたレストランの片隅にもお邪魔してみたいもの。 きっと、いや間違いなくここには星がついちゃっているのだろうなぁと思いつつ、 Web予約したのが、ご存知「ベージュ東京」です。
黒い格子を基調としたCHANEL銀座ビル。その脇のマロニエ通り側の硝子面に何気なくあるのが、「ベージュ東京」のエントランス。
やや重い硝子扉を開くと、ご案内スタッフが迎えてくれ、そのままエレベーターへ。 広いエレベーターの中には、シャネル・ロゴ入りのボタンが並ぶ。 それらを飛び越えて、10階へと一気に上がります。
落ち着いたアプローチから階高を活かした全面の開口が明るく照らすフロアへ。 意外と云ったら失礼だけど、フロアは見る限り満席だ。それでもテーブルの間は微妙な距離が保たれ、見上げる大きな窓には青空が覗く。 ゆったりした空間になっています。
グラスに注ぐは、フランスの炭酸水「OREZZAオレッツァ」。 コルシカ島ラパッジオ渓谷からやってきたミネラルウォーターは、 由緒ある、割りとレアなものらしい。 お好みの3皿を含むコースをお願いしました。
ひと口サイズのチーズのシュー、グレージュに続いて、 角切り野菜を含んだジュレの器と自家製生ハムを載せたフォカッチャのアミューズ。 仕込んだ野菜は、総料理長・小島景氏の出身地、鎌倉の野菜たちなのかな。
アントレENTREESに選んだのは、「ポルケッタ、仔ウサギの詰め物」。肩肉、背肉、肝の部分をハーブと一緒にマリネし、テリーヌに仕立てたもの。 “ポルケッタ”とは、ハーブとニンニクで香りをきかせた豚の丸焼きのことで、イタリア料理。 切り口を覗けば確かに、ニンニクの断面が確認でき、 ちょっと鼻を寄せればハーブの香り高い。 ボルケッタをフレンチとして再構築した感じ、でしょうか。
ワインは「ブズロンBouzeron」の2009年。 ロマネ・コンティのオーナーが自ら作る白ワイン。 酸味の強いアリゴテ品種も近年では温暖化でその酸味が和らいできているという。 あんまり酸が尖るばかりのワインは苦手なのだけど、そんなこともなく美味しくいただけます。
ポワソンPOISSONSは、「スズキのオーブン焼き、ジャガイモとポワロー」。ポワロー葱のローストとジャガ芋と葱のピューレを添えている。 ソースは鱸の頭だけを使ったものだそう。 そう聞くと卑しくソースを舐めたくなるのが心情というもので(笑)。 さすればなるほど、魚のフォンが綺麗に美味しい。
ヴィアンドVIANDESは、「アルウェットサンテット、シャンピニオンのロースト」。 仔牛の薄切り肉の中にフォアグラと菠薐草とを生ハムで包んで焼き上げたもの。 添えてくれているのは、フランス産のフレッシュなセップ茸。 とろんとしてジューシーなセップ茸は、つまりは、ポルチーニ。
合わせてくれた赤は、「Coudoulet de Beaucastel」2009。 とても深い赤色に凝縮感があって滑らか、カシスのアロマ。 蕩けたフォアグラのコク風味と仔牛肉の凝縮した旨みとの掛け算によくバランスしています。
デザートには、「ババ モンテカルロ風」。 ラムかアルマニャックかを選んで、というのでアルマニャックを。 すると、ドーム型の銀器を開いて、 そこに仕込んであったブリオッシュにアルマニャックを注ぎかける。 さらにたっぷりの生クリームでデコレート。 ブリオッシュにはシロップが沁みている。 子供のように大口開けていただけば(笑)、 シロップと生クリームとそれぞれの甘さをアルマニャックの香気がオトナな気分に。 サヴァランとはどう違うのだろうね。
静かなざわめきに満ちていたフロアもひと影が引いて。妙な重厚さを排したシンプルなデザインは、きっと誰もが好感を抱く。 窓際のテーブルの上にカエルをモチーフにした鋳物の置物を見つけた。 訊けば、ココ・シャネルの自宅にあったカエルのオブジェが元になっているそう。
CHANELとALAIN DUCASSEが出逢っての、「ベージュ東京」。“シンプルかつエレガントなエスプリ”と謳う味わいと空気感は、 なるほどねと合点がいくところ。 上品な”ベージュ・カラー”を基調とする意図をそのまま店名に表したということなのかな。 夜の雰囲気もきっとまた、そのイメージ通りなのでしょう。
「BEIGE ALAIN DUCASSE TOKYO」 中央区銀座3-5-3 銀座シャネルビル10F [Map] 03-5159-5500 http://www.beige-tokyo.com/ja/
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