今の三原橋交叉点は、昭和通りの上にあるけれど、 かつての三原橋そのものがそこに架かっていた訳ではなくって、 もう少し中央通り寄り、今の三原橋地下街の上に架かっていたのだ。 つまりは、三原橋の橋を利用して、その下に出来たのが三原橋地下街だということらしい。 確かに、晴海通りに忽然とこんな地下街があるって、 それだけでなんか特異な設えだものね。
色々な変遷を経て、三月終わりの三原橋にも、 シネパトスのネオンサインが灯っていて。 ただ、両脇には閉館を知らせる塔が立つ。そんなシネパトスに、その劇場そのものを舞台にした映画かかると知って、 とても久し振りにシネパトスのチケットを手にしました。
映画のタイトルは、”途中休憩”を意味する「インターミッション」。 閉館の決まった古い名画座を舞台にしたショートストーリーをオムニバスに綴るもの。 自分が座っている劇場がまさにスクリーンの中の舞台でもあり、 鏡を見せられているような不思議な感覚。 時折訪れるゴゴゴゴという振動が、自分が今地下鉄のすぐ上にいることを気づかせます。
佐野史郎氏と樋口尚文監督によるトークショーに立ち会って、 もぎりのカウンターの脇を通り過ぎて、地下街の通路へ。 シネパトスの入口のすぐ脇にある「三原」の暖簾の隙間から空席を覗くように。
ちょうどカウンターを離れる動きがみてとれて、暫く。 使い込まれた風情のカウンターに居場所を得ました。振り返った硝子戸の表情や宴の後の小上がりの様子に不思議と癒される。 温燗、いただいちゃおうかな。
お猪口を傾けながら眺めるは、 ホワイトボードの横や下にもぶら下げたお品書き。お燗に寄り添う、おでんでもうちょっと温まりましょう。
お品書きに見つけたら、注文しない訳にはいかない牡蠣メニュー(笑)。広島産牡蠣による「かきのバター焼き」。 薄く篩った程度の粉化粧でソテーしたバター焼きもよいけれど、 こうしてしっかりと衣を纏った、芳ばしきバター焼きもまた佳き哉。 ちょっぴり搾った檸檬が似合います。
ひとりで奮闘の女将さんが、 他のお客さんへの対応諸々の狭間でトントンと俎板を叩く。 お願いしていた「真あじなめろう」がやってきた。田舎味噌の加減も生姜の具合も文句なし。 お銚子のお代わり頂戴な(笑)。 鯵ではなくて、鰯のなめろうもお願いしちゃいたい。
お愛想をして、暖簾を背にするとそこはガランとした地下通路。四丁目側に階段を上がって振り返り、 地下街の案内看板に二軒の「三原」を確かめます。
三原橋地下街の歴史のひとつ、季節料理・食事処「三原」。既に閉館した銀座シネパトスの後を追うように、遠からず閉店してしまうのでしょう。 またひとつ、昭和の景色がなくなります。
「三原」 中央区銀座4-8-7 三原橋地下街 [Map] 03-3564-1587
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