ラーメンフリークが時に体感するように、思いも寄らない臨時休業を図らずも確認してしまった時の驚きと落胆はなかなか馴れるものではありません。
臨時休業は勿論、ラーメン店だけの専売特許ではないので、他の飲食店にも当然あり得ることですものね。
香林坊の交叉点から開店前のおでん「菊一」の前を通り、
国道から一本裏手の道へと当て所もなく漂い歩く。
覗き込んだ横道に居酒屋や小料理屋風の看板を見付けて、
真昼間にして誘われるように(笑)、足を向けました。
そのまま雨上がりの横丁を往くと、
「洋食」と示すアクリルの看板が目に留まる。建物のシャッターの掠れた文字は、
「オーツカ料理学園」と読める。
料理学校開いているような洋食店なんて、
なんだか気になるじゃぁありませんか。
お店の正面に回り込んで、ショーケースを覗き込む。ボードに書き込まれたメニューには、
「生姜焼定食」が目立つように囲みに飾られている。
あ、「ミートスパ」に並んで「ナポリスパ」もあるようです(笑)!
女将さんに招き入れられてから意外に思ったのは、
店内の各処にタレント・有名人の色紙が少なからず貼られていたこと。
なぁーんだ、有名店だったのかぁと合点しつつ、
左手奥の客間のテーブルへと腰を据えました。
ご註文はやっぱり「生姜焼定食」で。豚ロースがこっくりとした生姜タレに絡めとられて、
これぞ、ゴハンがどんどんと進むヤツの典型か。
そして、何気に添えてくれた厚揚げの煮付けが和ませます。
生姜焼きだけやっつけてナポリタンを放置するなんて、
ナポちんに疎まれそうだと(笑)、
無理云って「ナポリスパ」の小盛りもお願いしてました。なんの疑いもなく、そしてなんの根拠もなく、
しっかり炒め上がったナポリタンを待っていたら、
届いたお皿は、ナポリタンとは似ても似つかぬものでした……。
確かに”ナポリタン”ではなく”ナポリスパ”だもんね(汗)。
後日ふたたびの横丁の奥。
本当においしいので一度味わいください、と、
そう黒板に認めてあったのも気になって、
改めて硝子ケースを覗き込む。
ソースブルーテを基本に、
玉葱、牛乳、クリームで仕上げた美味しいクリームスープ、と、
解説がしてありました。
件のクリームスープをまずいただく。何かを特筆するでもないけれど、
古からのレシピと丁寧なつくりの片鱗を思わせるひと皿でありました。
「生姜焼き定食」と並んで、
黒板メニューで□に囲んで強調されていたのが、
「ハントン」なる見慣れないフレーズ。ステンレスの楕円皿に載せられてやってきた「ハントン」は、
黄色と赤の艶やかな見栄え。
つまりは、ケチャップライスに魚フライを載せて、
半熟の玉子で覆い、ケチャップとタルタルで飾ったもの。
ハンガリーの「ハン」と仏語で鮪を意する「トン」が由来であるらしい。
片町にあった洋食店が発祥の地と云われていて、
場所柄からしても、その経緯を引き継ぐお店なのかもしれないな。
金沢の片町・香林坊の横丁奥に、
1957年(昭和32年)創業の洋食店 グリル「オーツカ」がある。なかなかの人気店は、時に空席待ちの行列をつくる。
帰りがけにまた硝子ケースを覗き込んで、
「タンバルライス」ってなんぞやなんて考えていたら、
黒板の並びに置かれたメニューの文字が見付かった。
あれ?「ナポリタンスパゲッティー」って書いてある。
もしかして、過日いただいた「ナポリスパ」は、
ただ「ナポリタンスパゲッティー」を略しただけだったのか!?
いやいや、違うものだと思いたい(笑)。
「オーツカ」
金沢市片町2-9-15 [Map] 076-221-2646