新春恒例のお愉しみのひとつと云えばそう、「志の輔らくご in PARCO」。志の輔師匠が、渋谷PARCO劇場で初めて高座を催したのは、1996年(平成8年)のことだというから、もう30年にもの長きに亘る定番公演だということになる。
2006年(平成18年)からは、およそ1ヶ月に及ぶ連続公演というスタイルになった。
途中、渋谷PARCOの建て替えによる休止はあったものの、
2020年(令和2年)には、
新生渋谷パルコ劇場のこけら落とし公演で復活。
無事チケットが取れて、
いそいそと出掛けたことを思い出す。
演目のひとつは、「メルシーひな祭り」だったなぁ。
そんなこんなで今年の1月半ばにも、
「志の輔らくご in PARCO 2026」へいそいそと(^^)。
演目は、名作人情噺「浜野矩随」に新作「ドドンがドン」。
そして、新作の定番「踊るファックス」。
玄人志向のシブいところではないけれど、
文珍師匠と並んで、好きだなぁやっぱり。
志の輔師匠の高座がはねたなら、
パルコを背にスペイン坂を下り、
道玄坂小路を抜けて、大和田横丁へ。
横丁を跨ぐ井の頭線への接続通路が近づいてきた、
ちょうどその角にある「ラーメン王」の、
垢抜けない黄色い看板を横目にしながら、
左手のさらなる横丁に入り込む。
謂わば、渋谷マークシティによる日陰の区画。
渋谷駅前にしては二階建て程の低い店舗や、
古びた雑居ビルの並び建つ狭路が、
クランクするように今度は右に折れる。
曲がり角では、アダルトショップが、
界隈の如何わしさを増長している。
そのアダルトショップと同じ建物の左手に、
ひょろっとした白い暖簾が下がっている。
壁の瑠璃紺地の焼き物には、
「陀らく」と白抜いた文字が見付かる。
頼りなさげな暖簾を払い扉を押し開けると、
すぐに狭い階段が二階へと誘います。
すると少し視界が開けて、
厨房を囲むコの字にカウンターの脇に出る。
廻り込んだ奥側の角に陣取りました。
焼き鳥「陀らく」の料理は、所謂おまかせ。
前菜に焼き鳥5本に、野菜串2本にお食事という、
おまかせの基本形のコースに、
串については、”焼き止め申告制”を敷いている。
止めて、というまで出続けるという、
串揚げ屋さんでよくみられるスタイルだけれど、
本来、焼鳥屋が始めたものですと大将は云う。
前菜は、「蕪と枝豆の酒粕ポタージュ」。
あら、可愛い(^^)。
そして、器から枝豆を含むいい香りがする。
ピンクのお花は勿論、エディブル。
優しい優しい甘さに身体が温まる。
最初の焼き鳥は、胸肉。
たっぷりと肉厚なのがまず、いい。
トッピングされているのは、
ピンクのキャビア、ではなく、
ピンクのとんぶり、でもなく、
極小のイクラ、ではなく、
大振りなタラコ、でもなく、
フィンガーライムという、
ちょと不思議な柑橘類の一種の果肉であるという。
へー、初めてのご対面だ。
ああ、確かにライムっぽい柑橘の香りがする。
キャビアライムとも呼ばれるのも判る気がするね。
ドリンクメニューから、
「焼き鳥用ワインカクテル白」なるものを所望する。
白ワインにジンジャーエール、檸檬の組み合わせ。
ジンジャーも檸檬も控えめで、白ワイン主体。
なんだか、ぐびぐび吞めてしまいそう(^^)。
ちなみに「同カクテル赤」は、
赤ワインとなんとコーラとのカクテルだ。
お次の焼き鳥は、手羽元。
今度は、サルサでアクセントをつける作戦。
カリっと焼き上げた外周部とその脂とに、
サルサソースがよく似合う。
さっぱりして、美味しい組み合わせだ。
辛くし過ぎてないのもまた、いい(^^)。
成る程、こんな感じの串たちだと、
正調の焼酎・日本酒というより、
シャンディガフとかハイボールの系統が合いそう。
あ、でも、日本酒の項には、
“バトナージュ”なんてタイトルもある。
ドリンクメニューにもひと工夫あるのが頼もしい。
お次の焼き鳥は、腿肉。
粒マスタードにしては、
粒が大きいなぁとかなんとか云い乍ら、齧る。
ああ、これまたカリっとした外周の中は柔らか。
そこにマスタードの風味が色気を添えてくる。
そのマスタードそのものもなんだか美味しいンだ。
野菜串のひとつは、ご存じペコロス。
玉葱の焦げた香りが鼻腔を擽る。
きっと真ん中はアッツイぞと慎重に齧り付く。
うんうん、ペコロスの甘味が実にいい。
火入れによってより甘くなっているに違いない。
お次の焼き鳥は、
お熱いうちにどうぞとレバー。
ふーむ、美味しい。
軽い塩のみと思うよな余計な味付けがなく、
それでいて、甘味を感じるレバーだ。
お次の焼き鳥は、ハツ。
当たり前だけど、心臓、という感じがする。
コリコリとしている訳でなく、柔らかい。
それでいて、活き活きとした鮮度を思わせる、
そんな食感、歯触りだ。
ここで、副菜のひとつ、レバーパテ。
まったりしつつ、臭み皆無のパテが旨い。
トッピングは、オレンジの皮のシロップ漬け。
仄かにラムの香りがしてくる。
この、ひと色を挿してくれるのがいいよね。
グラスを「ワインカクテル白」から、
「焼き鳥用ジンリッキー」に代える。
正直、どのあたりが”焼き鳥用”かは判らない。
「焼き鳥用ジントニック」もあるので、
やや甘めがご所望のお方はそちらをどうぞ(^^)。
もうひとつの副菜が、膝の肉を使ったタコス。
トッピングの紅い野菜がハートにも鶏にも見える。
自ら手巻きするスタイルで、
え、膝の肉?と思いつつ、
両手を汚しながら大口を開けると、
トルティーヤとその挽肉が名コンビなのが判る。
芽葱が何気にいいアクセントだ。
もうひとつの野菜串は、滑子。
見るからに大振りな、とても大きなナメコたち。
最近はスーパーでも大き目のナメコも売っているものの、
ここまで大きいのは初めて見た。
ああ、妙にって変だけど、妙に旨い。
キノコの旨味全開、って感じ。
ここまでで所定の串が全部出たというので、
お腹と相談して、もう3本を追加でお願いする。
追加の焼き鳥一本目は、手羽中。
こうして大葉が折り込んであるということは、
こう、ウニウニっと串に束ねて成形してるのかと、
そんなことを思いつつ、かぷっと齧れば、
ああ、アっつっ!
タレが甘めで、それが肉の量感とのバランスもよく、
うんうんと頷くお味。
そう云えば、卓上には薬味のひとつとしてない。
ひと串づつひと皿づつ味わいをキメているので、
最早不要としているのだろね。
追加の焼き鳥二本目は、腰のお肉ソリレス。
“ソリレス”という言葉、初めて聞いた。
鶏の腰骨の窪みに隠れるようにある、
ピンポン玉大の筋肉の塊をそう呼ぶ、らしい。
1羽からわずか2個しか取れなず、
見つけることの難しい希少部位ゆえ、
なかなか食べる機会が少ないソラリスは、
フランス語のSot-l’y-laisse(愚か者は残す)から、
転じた呼び名であるようだ。
そして、こんな”ねぎま”もまた珍しい(^^)。
山椒の風味もまたよく似合います。
追加の最後は、合鴨。
こう、串を立ててみると成る程、合鴨の風景。
弾力のある歯触りと滲む脂が、やっぱり旨い。
卓上の箸置きをふと、改めてじっと見る。
入口脇の表札同様、釉薬のかかった、
如何にも手作りの焼き物で、
右手には店名の「陀らく」。
そして、左手には「10執念」。
え、なんだろうと訊けば、
店の10周年の際に、
陶芸の先生からいただいたものだそう。
ちなみに今は、開店15年周年。
なかなかに頑張っておられるようだ。
食事は両方食べたいと、
ふたりで「そぼろ飯」「親子丼」。
「そぼろ飯」の真ん中にはハラコの醤油漬け。
所謂きんかんともまた違うという不思議ちゃん。
ああ、濃い目の味付けにしてしまいそうなところを、
優しい味わいの鳥そぼろだ。
そのそぼろに黒い粒つぶが混ぜ込んである。
うーむなんだろうと何度も食べて考えるも判らない。
訊けばなんと、紅茶の葉っぱだと仰る。
なーるほど、その風味が品よくさせているんだ。
「親子丼」にもハラコの醤油漬け。
背後には身の皮の煎餅が突き刺さって。
玉子の黄身の色の濃さを想像させる湖面。
濃密な香りが纏っているなぁと思えば、
うん、これはトリュフ由来の香りだね。
デザートも当然に、串(^^)。
ああ、ミントと柿って合うんだね。
そして、ミントとあんこもまた然り、だ。
渋谷マークシティによる日陰の区画。
クランクするように進むちょっと怪しい裏道に、
焼き鳥「陀らく」は、ある。
店名「陀らく」は、大将曰く、
天竺へ向かい道すがらをいうところの、
補陀落浄土の”陀落”と、
品行が悪くなり、落ちぶれる”堕落”との、
ダブルミーニングである、とのこと。
自身に向けて、堕落しないように、
とつけた名前でもあると云う。
自分への戒めを店名にするというのも、
なかなかないことのような気もするね。
もしかして、宗教じみた要素があるのかというと、
決してそんなことはないのでご心配なく(^^)。
焼いている音や調理の音が聴こえてきて、
BGMがないのがいいですねと声を掛けると、
開店時は流していたものの、
どうも何かを誤魔化しているように感じて、
すぐ止めてしまったという。
うん、正解ですね(^^)。
五感に伝わる店の空間に自信があれば、
特段BGMはいらないし、邪魔になるものね。
この二階のお店は、別館に当たるようで、
地下のお店が本館のようなのだけれど、
はて、地階へはどこから入るのだろう。
「陀らく」
東京都渋谷区道玄坂2-6-8 B1F・2F [Map]
03-6416-1035
https://daraku.tokyo/

