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旬家「ばんちゃん」で島の恵みのばんちゃん御膳ふわとろだし巻き卵白保海岸の傍らで

二年振りに石垣島へとやってきた。
今回石垣島に来たのは、石垣島出身のバンド、ご存じBEGINの35周年記念全国ツアー「さにしゃんサンゴSHOW!!」をご当地で聴こうという企みから。
2025年後半から2026年前半までの足掛け二年に及ぶツアーのファイナル公演ともなる石垣市民会館でのライブを愉しみに、那覇経由で南ぬ島石垣空港に降り立ちました。

離島ターミナル前のホテルに入宿して、
のんびりと過ごした後には、
本店には以前訪ねたことがあったものの、
その後予約が取り難くなっていた、
まぐろ専門居酒屋「ひとし」の石敢當店へ。

ただ、すっかり観光地化してスレてしまっていて、
機械的に客を捌くような状況になっており、
仕方のない側面は判りつつも、
随分と寂しい、残念な思いをしてしまった。

すっかり気を取り直して(^^)、
パキっと起きた翌朝には、
ホテル近くのバスターミナルから、
東運輸の空港行のバスに乗る。
昨日来たばかりなのに、
もうお帰り?って訳では勿論ありません。

国道390号線を往くバスを白保で下車。 すると、目の前にこの日の朝食処への案内板。
そこには、海岸線までお進みください、とある。
ご案内のまま、白保地区の住宅地を歩くと、
静かで穏やかで、八重山らしい家並みに癒される。
もしも、石垣島に移住するなら、
この辺りがいいかも、なーんて思ったりする。

一本道を真っすぐ進んで、海に出た。 浜辺の足許は、粗目の珊瑚砂で、
歩けばジャリジャリ鳴る感じ。
海水浴場には向かない浜だなぁと思っていると、
欧米系の外国人がまだまだ水温は低いのに、
海パン一丁で泳ぎ出していた。

防波堤に戻って、のんびりと散策する。 フクギの葉越しに海を眺めながら佇み、
ふと振り返ればそこに、
旬家「ばんちゃん」への案内板がありました。

珊瑚砂の道を進むとすぐに、
二階建ての家屋が見えてくる。
木造部分はもしかしたら、
増築部分なのかもしれません。

入口の脇には、
木の円盤に旬家「ばんちゃん」。 箸に添えた円ふたつは、
何の抽象化なのでしょう。

ちょうどその、増築部分なのではと思った、
右奥のテーブル席へとご案内。 窓硝子越しには、大振りなオオタニワタリが見え、
そのオオタニワタリの苗が、シャコガイの殻を器に、
カウンターの上に鑑賞用に飾られている。
これを見て、俄然その苗が欲しくなったのだけれど、
石垣滞在中には見付けられなかった。
もっとも、首都圏でちゃんと育つか判らないし、
あんなに大きくなられても困るのだけどね(^^)。

「ばんちゃん御膳」は、
メインのおかずを、玉子、魚、肉の三種類から、
おひとり二つづつ選ぶスタイル。
小鉢三品とご飯のおかわりは自由。
そこに、アーサのお汁とデザートが付く。
やっぱり”卵”はともにいただくこととして、
ひとつはお肉、ひとつはお魚といたしましょう。

集落の様子なんかの話をしながら、
のんびりと待っていたところに、
朝食にはたっぷりのお膳がやってきた。 右上の大きなふくらみに、
やはり視線が向かうもののすぐに、
全体として豊かな食事であることが判る。

角盆の中央には、島野菜の小鉢三品。 茄子とナーベラーのトマト煮、
ゴーヤのきんぴらに葉大根のおかか和え。

おかわり自由のご飯は、黒紫米のごはん。 古代米の一種であるところの、
黒紫米を混ぜて炊いたもの。
もっちりとして、どこかお日様の香りのする。

つゆ椀にはアーサ(あおさ)が浮かぶ。 塩分控えめで鰹節の風味ゆたかな出汁に、
目の前の海である白保産のアーサ。
そこにふふっと生姜が香ります。

そしてそして、視線を集めるそのふくらみが、
その名も「ふわっとろのだし巻き卵」。 ふっくらとした愛らしいフォルムが、いい。
そして、綺麗に整形されたそのテクスチャは、
実に肌理の細やかなメレンゲを想起させるもの。
厨房から割りと長い時間聞こえてきていた、
かき氷削るかのような異音は、もしかしたら、
ミキサーでメレンゲを拵える際のもの、
だったのかもと思い付いた。

この出汁巻きに使う玉子は、
知的に障害を持たれた方々に、
生産活動(作業)支援を行う、
八重山育成園の皆さんが、
バンナ岳の麓で平飼いし、
大切に育てている鶏が産む卵。
ひとつに二個半から三個使っているという。
そんな毎日届く新鮮な卵を焼くのは、
長年愛用の銅製の玉子焼き器だそう。

どれどれと匙を動かして、
ふわふわの肌理に切り込んでみる。 すると、じわじわっと澄んだ出汁が滲み出してくる。
うひゃー、こりゃ、間違いなく旨いに違いない。
そう確信してから、
そのふわふわの欠片を口に運んでみる。
すると、これまた当然のように、
玉子の風味と出汁の旨味が瞬いて、
すぐにすわっと消え流れていく。
ふわとろ具合が兎に角、スゴーい。
含んでいる卵の黄身の量は僅かなようで、
それゆえ軽やかなことこの上ない。
ほぅら、旨いじゃん、やっぱりー。
こりゃ、出汁のシフォンケーキや~(^^)!

そんな出汁巻き卵を載せた楕円のお皿は、
石垣島の最北端、
平久保崎灯台近くに工房を構える、
「太朗窯」の掘井太朗さんの作だという。
なんだかこの出汁巻き卵を載せるために、
専用に焼いたもののように、
すーっと出汁巻き卵が収まっているね。
以前、平久保崎灯台を訪れた帰り際にお邪魔した、
「太朗窯」のことをよく憶えています。

おかずのひとつ、お肉篇は、
「軟骨ソーキの柔らか煮込み」。 ほろほろに煮込まれていて、
軟骨ソーキ部分までがとろっとろ。
てろてろとした黒麹酢のソースが、
次のひとくちをぐっと誘ってくる。
うーむ、こりゃズルいや。

もうひとつのおかずには、お魚篇、
「近海魚の長命草パン粉焼き」。 この日のお魚は、鰆。
長命草を合わせたパン粉で焼き上げている。
苦みのある長命草が、
いい香りを添える活躍をみせていて、旨い。
味噌とシークヮーサーのソースが、
いい合いの手を添えてくれます。

石垣島をはじめとする八重山諸島や、
与那国島を訪れたことのある人たちには、
お馴染みの長命草(=ボタンボウフウ)。
随分と前に与那国島へダイビングしに行った際に、
初めて出会ったことを思い出す。

女将さんのご指南通り、
ソーキのあんを出汁巻き卵にのせてみる。 さすれば、儚げなふわとろに味わいの輪郭が出て、
なるほど、これもまた美味しい美味しい。

そして、On the Riceするのもまたお約束。
黒紫米のごはんに載せたふわとろに、
自家製の出汁醤油をひと回しすれば、
こりゃまた美味しい、
ふわとろ玉子掛けご飯の出来上がりだ。

デザートは、ゆがふシフォン二種類と自家製プリン。 シフォンは、石垣島の玄米で作ったグルテンフリー。
黒い方が黒紫米で、茶色い方はさんぴん茶。
あああ、さんぴん茶のシフォンが旨い旨い。
プリンは、濃密な玉子感は勿論のこと、
苦みもある大人のカラメルがいい。

シフォンの名に添えた「ゆがふ」とは、
漢字で書くと、「世果報」。
五穀豊穣に恵まれ、世の中が安泰で、
みんなが幸せな様子を指す沖縄の言葉。
地元のお米で作ったお菓子を「ゆがふ」と名付けて、
無病息災、家内安全、子孫繁栄の願いを込めた、
とお品書きのファイルにある。
八重山の豊年祭などのお祭りや行列に登場する、
白い布袋様にも似た「ミルク(弥勒)様」は、
海の彼方(ニライカナイ)から、
五穀豊穣と幸福をもたらす来訪神なのですね。

石垣島南東端の白保集落の突き当たり、
白保海岸に面したフクギに囲まれて、
旬家「ばんちゃん」は、ある。 元公務員の店主・坂東秀祐さんが、
好きな料理を仕事にしたいと、
一念発起して、調理師の資格を取り、
ともに大阪府出身の女将公美さんら家族と、
石垣島に移住したのが1998年のこと。
当時の石垣全日空ホテル&リゾートなどの、
数々のホテルで修行を経て、
2013年に白保のご自宅を改装してはじめたのが、
ここ、旬家「ばんちゃん」。
“ばんちゃん”は、”坂(ばん)ちゃん”だね。
お品書きの冒頭には、
「心と体がおいしいと喜ぶ食事、
それはきっと幸せな人生をつくる」という、
お店の基本理念を示してくれている。
その理念をしっかりと体現していることを、
身をもって確かめさせていただきました(^^)。

「ばんちゃん」
沖縄県石垣市白保13-1 [Map]
0980-86-8310
https://www.shun-ya-banchan.com/

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