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PIZZERIA「聖林館」で鍛鉄ファサード螺旋階段カルチョーフィにポリボにマルゲリータ

荒木真樹彦というシンガーソングライターをご存じだろうか。
知る人ぞ知る荒木真樹彦は、佐賀県佐賀市出身で、1988年にワーナー・パイオニアからシングル「1999」でデビューし、同年、セルフサウンドプロデュースで、デビューアルバム「SYBER BEAT」を発売した。
メジャーでは、全日空のCMソング「XX,XY」やMIKI HOUSEの「みんなライオンのせいだ」、
MAZDAの「LANTIS-誘惑の未来」などを含む、
シングル11枚にアルバム6枚をリリースしている。
楽曲提供やプロデュースも手掛けていて、
「文句があるなら来なさい!」を代表曲とする、
1996年に藤原理恵と結成したユニット、
Rie ScrAmble が知られたところかもしれません。

6枚のオリジナルアルバムの中でも特に、
1990年発売の2枚目のアルバム、
「Baby,You Cry」が完成度が高くて、いい。
荒木真樹彦特有の少し嗄れた声が、
自身で描いたソリッドなメロディと、
自ら組み上げた個性的なアレンジに、
ぴたりとマッチしていて、
繰り返し繰り返し聴いたことを想い出す。

そんな荒木真樹彦が、
そのアルバム「Baby,You Cry」をコンプリートする、
ライブを目黒銀座商店街の「楽屋」で催すというので、
久し振りの中目黒へとお出掛けしたのであります。

中目黒に行くならば、
ライブの前に寄りたい店があると、
中目黒GTタワー南側の横丁を入り、
すぐの路地へと右へ折れる。
ナポリタンに生姜焼きに牡蠣フライが懐かしい、
洋食「キッチン パンチ」のその斜め前。 緑青の浮いて味わいの深まった、
妖しい紅いランプが目印の店と云えばそう、
PIZZERIA「聖林館」だ。

これまた赤錆が発錆して風格の出た、
スチール製の外装パネルが目を惹く。 角棒を引き上げるとパネルが開くとか、
そんな挙動もしそうな造りにも見えるけれど、
実際のところはどうなのだろう。
それらスチール部と細かく区切った硝子部とが、
不思議な構成を魅せるファサードと、
その武骨さも「聖林館」の魅力のひとつだ。

その昔、「東京デザイナーズレストラン」という、
日経BP社が発行する書籍シリーズがあって、
発刊する度に買い込んで興味深く読んだ。
当時の中目黒「SAVOY(サヴォイ)」も、
その中に確か載っていて、
なかなかに攻めたデザイン、造作をするものだと、
感心したことを思い出す。
一連の本たち、どこへ仕舞い込んだンだろう。

インバウンドたちにも、
此処の存在はすっかり浸透しているよう。 開店時刻の少し前に到着すると、
海外の客人たちが空席を窺っていました。

予約の名を告げ、ご案内に従って、
というか、1階には客席がないので、
そのまま右手の螺旋階段へと廻り込む。 スチールの手摺の触り心地を確かめつつ、
一歩ゝゝ一段ゝゝ登っていく。
この螺旋階段の存在もまた、
「聖林館」の魅力のひとつだ。

螺旋階段から二階のフロアを見渡す。 手前両側に丸テーブルが並び、
奥のカウンターには、
紅い座面の丸椅子が並んでる。

通されたのは、
三階フロアの一番奥のテーブル。 フロアの照明はかなり抑えた光量で、
目が慣れるまではなかなかの暗さ。
硝子窓側を振り返ればまだ外の明るさがあって、
ファサードに見た不思議なデザインが、
室内からの見映えにもしっかりと反映している。

螺旋階段のある、その左手の壁には、
弦楽器が二本、飾られている。 その内の一本はどうやら、
ポール・マッカートニーが愛用したことで知られる、
ヴァイオリン・ベースのヘフナー500-1か。
その上には、額装されたシンバル。
サインが沢山書き込まれているようにも見える。

「シチリア・ビアンコ」という、
分かり易い名の白ワインをグラスで貰い、
上辺を綴じた、捲り難いメニューの、
[ゼンサイ]のページからまずは、
ご存じ、「ブッラータ」を選んだ。 ブッラータというとすぐに、
鎌倉の「BeBè Kamakura」を想い出す。
チーズ工房を併設しているお店と比べられては、
何気に困るようなぁと思いつつ、
ナイフを挿し入れるところを見届けた。
フレッシュ感がもう少し欲しいかもと思うも、
うん、これはこれできっとブッラータだ(^^)。
生クリームの加減なのかもしれないね。

[ゼンサイ]からもう一品は、
その名も「カルチョーフィ」。 メニューに小さく”チョウセンアザミ”と補記がある。
それはつまりは、アーティチョーク。
花の蕾チックな姿を想像しても、
食べられるのはどうやらその花芯部分というか、
萼(がく)をひん剥いた中身部分であるらしい。
そこまで切り出すようにしてから茹でたものが、
このお皿での逆立ちしたお姿である、らしい。
随分と煮込んだような気配もあるも、
確かに百合根のようなホクホク感の中に、
振り絞ったであろう檸檬の酸味と、
仄かに苦いような風味があって面白い。

冒頭、一緒にオーダーしていたのが、
ピッツァの王道「マルゲリータ」。 機械でつくったような正円なんかではなく、
如何にも手で伸ばし広げた様子が伝わるよな、
歪なカタチが愛おしい(^^)。

まずは、コルニチョーネの表情をジッと見る。 コルニチョーネ越しに見る中央部には、
多過ぎず少なくもない適量のチーズの海。
ナイフ&フォークでやや大きめにカットして、
口を広げて口腔に捻じり込むと、
芳ばしい粉の風味がして、
そこからモッツァレラチーズなぞのチーズと、
トマトソースの酸味甘味が混然となる。
挽きたての国産小麦粉を使っていると聞けば、
成る程なんだかとってもその通りの風味がする。
小さくそして素直に旨いねと呟く感じ。
そもそもこうして素朴なものなのだよなぁと(^^)。

ナポちんに敬意を表して「ナポリタン」。 ナポリタンは出来ればもっと明るい場所で、
出来れば陽射しの近くで食べたいと思うのは、
一体全体何故なのでしょう。

ライブハウス「楽屋」へ向かわなければと、
さっき登ってきた螺旋階段を上から覗き込む。 戸外はすっかり陽が落ちて、
階下のテーブルは暗がりに包まれていて、
なんだかいい雰囲気だ。

板張りの二階フロアは、
奥のカウンターが明るい。 次回があったら今度は、
二階での雰囲気に溶け込むのもきっと悪くない。

螺旋階段を降り切った一階でご馳走さまをして、
一階ファサードの型硝子の表情を振り返る。 俗に”鍛鉄(たんてつ)ファサード”と呼ばれる、
この外観を生んだのは、
鉄の造形作家である倉田光吾郎氏。
薄暗がりに浮かび上がる外観もやっぱり、
個性的で武骨な、魅力的なデザインだ。

ライブハウス「楽屋」は、
意外と云っては失礼だけれど、
同好の士たちで満員御礼。
喋るのは特段得意ではないけれど、
たっぷりとした声量と、
歯切れのいいギタープレイに惹き込まれる。
あ、その曲をそんなアレンジで、とか。
セットリストどころか曲順まで知っているのって、
案外満足度が上がるものなんだ(^^)。

神楽坂の「もりのいえ」でのライブを挟んで、
ふたたび「楽屋」での荒木真樹彦のライブへと、
中目黒にやってきた。
さすればと、あの紅く妖しいランプを想い出して、
ふたたび中目黒GTタワー南側の横丁へ潜入しよう。

この時案内いただいたのは、
前回の三階ではなくて、その階下の二階フロア。 二階から見上げる螺旋階段は、
夕闇迫る外の明るさに薄っすらと照らされて、
漆黒に浮かび上がる。
ドレープ揺らめく、
カーテンの紅色もまた妖しい(^^)。

前回チラリと望めたカウンター前の丸椅子が、
今回はしっかりと観察できた。 すると、座面の下の縁取りに、
彫刻がされているのが見付かった。
そんじょそこらの丸椅子ではなくて、
きちんとデザインされ丁寧に造作された、
恰好いい椅子なのだ。
そして、ここでも赤の挿し色が利いている。
次に機会があったらあの椅子に座りたい(^^)。

螺旋階段脇には、二人掛けのテーブル。 その頭上にずらっと並ぶ写真パネルには、
ビートルズのモノクローム。
主には来日して日本武道館公演を行った、
1966年当時のものかと思われる。
「聖林館」のオーナー柿沼進氏は、
1958年(昭和33年)生まれと、
どんぴしゃの世代よりは少し下だけれど、
ビートルズ、兎に角めっちゃ好きなんだね(^^)。

前回同様、[シロ・ワイン]のページから、
少し毛色の違ったのもをと「ラマート」を選んだ。 フリウーリ州からのピノグリージョ100%は、
ご覧のような澄んだ紅い色味のオレンジワイン。
「聖林館」のテーマカラーにも通じるような、
妖しい紅色も、軽くすっきりとした吞み口だ。

店頭のサインにある「セイリンカン」も、
すべてカタカナで書かれた、
上綴じのメニューの文字も、
モリサワから選んだフォントのようにも思う。 [ゼンサイ]のページの最下部には、
聞き慣れないメニュー「ポリボ」があるも、
当然のように照明アンダーな店内にあって、
ご多分に漏れずしっかり老眼であるゆえ、
個性的なフォントのカタカナの文字が、
濁点なのか半濁点なのか、
“ポ”だか”ボ”だかが判り難くて、
じーーっと目を凝らしてしまった(^^)。

そんな「ポリボ」とはつまりは、蛸のこと。 大蒜で軽くソテーした乱切りの蛸に、
フルーツミニトマトを添えて、
イタリアンパセリを振り撒いた、
搾った檸檬がよく似合うシンプルなお皿。
「ラマート」との相性も佳き哉。

[ゼンサイ]からもう一品は、
「プロシュットエモッツァレッラ」。 ご存じ、イタリアの生ハムのスライスに、
モッツァレッラを添えたもの。
イタリア産の非加熱の生ハムは、
現地でのアフリカ豚熱の発生によって、
2022年から日本への輸入停止が続いていて、
同様に、スペイン産生ハムも輸入停止中。
はてさて、どこからの生ハムなのかなぁと、
訊ねたら、スペインからのものと……。
やや塩辛いが、しっとり旨味もあって、
モッツァレラと合わせ食べるのが丁度良い。

店内のBGMは勿論のビートルズ。
流れてきた「The Long And Winding Road」を聴いて、
村っちゃん(村田和人)も参加していた、
毎年恒例のトリビュートライブ「Dear BEATLES」や、
ずっと昔のNHK FMのスタジオライブで聴いた、
井上陽水が唄う「The Long And Winding Road」の、
伸びやかな歌声を想い出したりなんかした。
まるでリハーサルのようにリラックスしてい乍ら、
実に心地良い歌声だったのだ。

そして、三種類の中から選んだピッツァは、
“白いピザ”「ビアンカ」。 生地の真ん中をたっぷりと満たすは、
モッツァレッラにペコリーノロマーノ。
手で伸ばし広げた形状はいよいよ、
円形ではなくて、角型だ。

コルニチョーネの表情を観察するのが、
ピッツァを食べる時に必要な習わし(^^)。 ザクザクとナイフでそのミミまで切り込んで、
加減よく真ん中のチーズを纏わせて口へ。
ああ、チーズの塩っ気とその妙味と、
生地の芳ばしさ、
素朴な粉の風味との協奏が心地よい。
なんだか一気呵成に食べてしまいます。

お皿を届けてくれたオネエさんは、
ナイフとフォークでお召し上がりください、と。
イタリアは海辺の町グラドGradoにある、
Pizzeria「in Piaseta」でピッツァを食べた際、
あ、ナイフとフォークが常道で食べ易いと、
漸く気が付いたことをふと思い出す。
ピザの一片を手掴みで大口開けて食べるのは、
アメリカ経由のカジュアルな食べ方なのだね。

ご馳走さまをして席を立ち、
改めて螺旋階段を上から眺め降ろす。 そこで初めて、木製の踏み板の踏み面が、
両側から彫り込んであることに気が付いた。
この細かいところへのデザイン的配慮が実にいい。

この螺旋階段を手掛けたのもまた、
鉄の造形作家・デザイナー倉田光吾郎氏。 ぐっと視線を近づけて見ればより、
その造形的な素晴らしさがググっと迫る。

そんな螺旋階段を降り切ったところにあるのが、
この店の心臓部とも云えるピザ窯だ。 艶消しにぬらっとした黒い光沢の鉄板に、
大き目のリベットの並びが、いい。
まるで蒸気機関車の焚口を見ているようだ。
ここであのピッツァが焼かれているのだね。

中目黒は、中目黒GTタワー南側の横丁に、
PIZZERIA「聖林館」は、ある。 日本に本格的なナポリピッツァを広めた、
その第一人者として知られる柿沼進オーナーは、
2007年に「SAVOY」の権利を手放して、
リニューアルした店舗を「聖林館」と名付けた。
ホールのオネエさんにその由来を訊ねたならば、
“聖”を形容詞として英語にするとholyで、
“林”がwood(s)であって、
つまりはhollywoodを”聖林”と転化させた、と。
あれれー、ビートルズでもなければ、
ピッツァの故郷のイタリアでもないのだね。
なんだか意外で何故に”ハリウッド”なのかと、
重ねてオネエさんに訊ねたならば、
そこは聞いていないですーと仰る(^^)。
この謎を解こうとするならば、
ふたたび鍛鉄ファサードのお店にお邪魔して、
オーナーに直接訊ねるしかないけれど、
柿沼さん、薪窯の前にいらっしゃるかな。

「聖林館」
東京都目黒区上目黒2-6-7 [Map]
03-3714-5160
https://ge4m500.gorp.jp/

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