「森彦」へは正に裏を返すように、翌日の朝食にも出掛けた。
ちょっと小粋な朝食をいただいた「森彦」を後にして向かったのは、ご存じ円山公園。
木陰に入れば心地良く涼しい公園内をのんびりと散策して、開拓神社や北海道神宮にご参拝。
そのまま円山動物園まで登っていって、
午前中を園内で過ごす。
ゾウ舎にいた子象がなかなか愛らしい(^^)。
時間を見計らって、正門前からタクシーに乗る。
大倉山ジャンプ競技場を右手にしながら、
西に進んだタクシーは、
トンネルを潜って、小別沢地区へ。
冬場には通行が困難になるという道から、
さらに狭い未舗装道を登ってゆく。
到着したのは、レストラン「AGRISCAPE」。
予約の時間まで少し余裕があったので、
周辺を見て回ります。
レストランの手前には、農場が広がる。
畑の並びには幾つかのビニールハウス。
中を覗けば、色々な作物の実りがある様子。
鶏の鳴き声に交じって、
別の鳴き声も聞こえるねと、
ビニールハウスの裏手に回り込む。
なんとそこには、黒毛の豚が何頭も、
元気よく鼻を鳴らしていました。
ラベンダーの小さな花の向こうにある、
黒壁の建物がこの日のランチ処。
建物右手には、お犬様連れの方用でしょうか、
戸外のテーブルにテントが張られていて、
左手には、冬に備えての薪が、
壁のように高く大量に積み上げられています。
アプローチ手前のプレートにはこうある。
「自然は日々変化しています。」
そのたくましさと尽きない恵みが、
私たちに新たな閃きを与え、突き動かします。
今日のAGRISCAPEをみなさまに贈ります。
案内されるまま通路を奥へと進むと、
パッとふたたびの明るさに包まれた。
三方に大きく窓を採ったダイニングルームだ。
テーブルに就いて硝子越しに外を見遣ると、
幾つかの蜂箱が見付かる。
その周りには勿論蜂が飛び交う。
右手のテント内ではやはり、
お犬様と戯れるような様子が、
スクリーン越しに窺えます。
屋外の席が好みなのだけれど、
蚊や虫が駄目という場合にも良いのでしょう。
テーブルの一葉にもメッセージがある。
いまだから。ここだから。
山の中。
夏のきのこをもとめて、
下を向いて歩いていると、
土の香りが心地よい。
ふと上を見上げると、
栗やコクワが青々と若々しい姿で、
秋の気配を漂わせている。
自然との共存の中から、
見えてくる風景をみなさまに贈ります。
この後、玉置浩二のライブがあることもあり、
すでにどこかナチュラルな気分にもなって(^^)、
飲み物にまず選んだのは、
「アグリスケープトマトジュース」。
所謂SDGs取り組みの一環として、
農家で廃棄される野菜・果物を使うジュースで、
フレッシュ感を保つべく、
加熱時間を短めにしているという。
ひと口飲んで、互いにニンマリ。
トマト由来の甘さと濃密さが、
いいバランスで真っ直ぐ届きます。
缶詰でも瓶詰めでもこうはならない。
用意された岩塩、いりません(^^)。
と、そこへスタッフのおひとりが、
大鉢を抱えてテーブルにやってくる。
農園で採れた色々な野菜や草花、
きのこや果物、肉類がモリモリに盛られてる。
隠れていたところへ鉢を回すと、
見ようによってはグロテスクな鶏の足。
フランス原産のプレノワールという鶏で、
さっき眺めた鶏舎の奥の方で、
育てていたものだそう。
最初のお皿は、玉蜀黍のスープ。
玉蜀黍の銘柄は、ゴールドラッシュ。
中にはそれをアイスにしたものを仕込んでいる。
薪焼きした玉蜀黍の髭のゼリーや、
発酵させたキノコのクリームを浮かべる。
ナハハハ、間違いなく、甘いねー(^^)。
続くは、山羊と羊のミルクを使った、
ふた品のプレート。
左のカクテルグラスには、
山羊のミルクを使ったフレッシュチーズ。
その下のソースは、チーズを作った際に出た、
ホエーを煮詰めたものだという。
右手にあるのが羊のミルクとバター、
そして黒豚のラードを用いたパイで、
それを割ってチーズをつけて食せとの仰せである。
うんうん、山羊のチーズのフレッシュさが、いい。
はて、山羊や羊はどこにいるのだろう(^^)。
ナイフの使えないお皿で届いたのは、
この時季定番のお皿という、
色々なハーブと花のサラダ。
エディブルフラワーあれやこれや。
仄かに花の香りのする。
お次のプレートは、シャルキュトリ。
軽くスモークをかけた胸肉や黒豚のスライス、
レバーのパテに辛くないチョリソー。
これらがこの土地で育まれたものたちだと思うと、
それだけでひと味もふた味も違うのであります。
と、そこへ燻煙立ち上る鋳鉄鍋がやってきた。
黒豚のソーセージにベーコンに。
ベーコンは黒豚ではないけれど、
どちらもいい香りをしっかり纏ってる。
深ーい味わいがして、美味しい美味しい。
熟成山葡萄酒と梅酒のソーダ売り切れにつき、
フレッシュハーブソーダ。
例えばミントやバジル、ローズマリーのような、
強い香りのものは含まないご様子。
淡い香りのハーブたちのエキスをゆっくりと、
丁寧に抽出したもののような気がします。
ブルーグレーの釉薬で仕上げた陶器皿には、
山山葵と新じゃがのチップスの傘の下、
聞き慣れないマイクロキューリの半切が載る。
胡瓜かーと思って齧れば、確かに胡瓜。
覗き込んだビニールハウスのどこかに成っているそう。
それを天然の青山椒を刻んだものと和え、
白いトマトのムースと合わせている。
え?白いトマト?
そんな不思議なトマトがあるらしい。
青黒く滑っとしたテクスチャの円いプレートには、
万願寺唐辛子に彩った黒豚だ。
さっき豚舎で見た彼らの仲間に違いない……。
バークシャーという大きくなる品種の豚で、
11ヶ月ほどの黒豚だという。
スタッフさんが仰るように、
クセのない脂に旨味たっぷりで、
美味し美味し、そして軽やかだ。
じゃが芋を練り込んだパンを添えて。
お肉、お肉と続く繋ぎのお口直しに、
バラとハスカップのシャーベット。
サクサク氷に含まれた酸味が心地いい。
そしてそしてふたたびのお肉は、
大鉢でそのおみ足を拝んだプレノワール。
60日の雄だそうだが、
鶏舎で捕まえるにしても、
なかなかに力強く、大変だそう。
どれどれと歯の先を入れて噛む。
ナハハハー、歯応えもなかなかに力強い。
手羽元のような部位は流石にしんどいか(^^)。
もう一片の肉は、
噛む程に旨味が滲んできて、滋味美味い。
添えた野菜は、隠元とズッキーニ。
ズッキーニは、その名を「UFO」だという。
ホーリーバジルのハーブティーで、
ゆるゆるっと和みつつ、
香りとともに胃の腑を温める。
デザートは、烏骨鶏の卵を使ったプリンに、
そこへヨーグルトとアイスクリーム。
いやー鶏舎には烏骨鶏もいるのですねー、
と思わず笑い合ってしまいました(^^)。
札幌は円山公園のずっと奥、
小別沢地区の里山に、
Restaurant「AGRISCAPE」は、ある。
二本線のみで描いたロゴマークはおそらく、
当地のある里山をイメージしたものかと。
そして、店名「AGRISCAPE」は、
訊けば想像通りの、
agricultureとlandscapeを繋げた造語だ。
WebサイトのABOUTには、
札幌黄玉ねぎの農家さんとの出会いが始まりでした、
に始まるAGRISCAPE誕生についての一文がある。
食材のあれこれを生産・飼育し、
その場で提供する循環式農園レストラン、
とする記述があるも、
想いや取り組みはそんな切り口に留まらない。
残念ながら頻繁に通うことは叶わないけれど、
影ながら応援していたいと思います。
「AGRISCAPE」
北海道札幌市西区小別沢177 [Map]
011-676-8445
http://www.agriscape.jp/