「和久傳」タグアーカイブ

和食「晴ル」でポテサラ鴨メンチ蕗の薹ジン鼈山芋焼き鯛山椒餅蟹身塩焼そば面白き哉

大橋トリオ恒例の、FC限定ツアーの公演を契機にして、お久し振りに訪れた京都の三日目のこと。
東山駅最寄りの白川左岸にある「丹」でのゆったりと優しい朝食の後向かった南禅寺では、三門の五鳳楼に登って絶景を眺め遣り、待望の「水路閣」の全容をたっぷりと眺め、見上げた。
さらには、水路閣の上に出て水路を辿り、
山科疏水が辿り着く蹴上船溜から、
高低差約36mのインクラインに沿って下って、
南禅寺船溜の畔にある、
琵琶湖疏水記念館を見学した。

遅いおひるをいただこうと向かったのは、
蹴上駅から二駅乗った京阪三条駅の上、
三条通り沿いにある町の食堂「篠田屋」。
「中華そば」そして「皿盛」をいただいた。
「皿盛」が妙に印象的だったなぁ。

そろそろ出掛けようかと、
この京都滞在の宿としていたホテル、
TSUGU京都三条を抜け出した早めの夕刻。
三条通りから堺町通りへと折れ、
懐かしの「イノダコーヒー」本店の前を抜け、
観光地化甚だしい錦通りを横目にしつつ、
「じき 宮ざわ」の前で少し立ち止まり、
あんな佇まいだったっけかなぁと考え乍ら、
そのまま四条通りを突っ切って、
一本目の綾小路通りを右に折れた。

高倉通りとの交叉点の角が、この夕刻の目的地。 真新しい装いにも映る三階建ての建物は、
間口狭めで、奥へとやや広い。
二階三階は恐らく住居部分かと思われ、
京町家の名残りなのかもしれません。

灰青かという色目の石板を貼り込んだ外壁と、
四角格子の扉とで構成するファサード。 交差点側を隅切りにして硝子窓として、
間口の真ん中に「和食 晴ル」と示す、
木板のサインを掲げていて、
そこを燈す灯りもアクセントになっている。

どこかのサイトで見掛けた、
改築前のお店のファサードもまた、
例えば、元歯科医院であったのかもと、
そんな想像を呼ぶような、
レトロでどこか洒落た佇まいだった。
その頃に訪ねたかったと思っても、
それはもう叶わないし、
新しい建物の様子もまた、
なかなかどうしてシュッとして格好いい。

和食「晴ル」は、カウンターのみ11席。
外装の壁と同じ仕様にも思う厨房の壁に、
その日のお品書きが白墨で書き込まれた、
黒板が掛かる。 「おつくり」に「一品」、「主菜」に「揚物」、
そして「〆の一品」という構成で、
品数を多くして迷わせることのないように、
というような格好にしているようにも思える。
それでも、オッと思わせる品名が幾つも並んでいて、
結局薬局あれも気になるこれも気になると、
たっぷりと迷うのだけれど(^^)。

飲み物は、店の奥の壁に掲げた、
もうひとつの黒板から探すスタイル。
結構気温が上がった中で随分歩いたなぁと、
ひとまず生麦酒の小さいのをいただいて、
小さく乾杯する。

突き出しは、
お抹茶の生地で肉味噌を包んだもの。 熱いので気を付けて、と大将が届けてくれた。
そーっと齧れば、抹茶の風味がふわっとして、
中からじゅじゅんと肉味噌の甘さが零れてくる。
突き出しとしても面白い、オツな口開けだね。

折角なのでと京都のお酒を所望すると、
「富翁」をススメてくれた。 伏見の蔵元 北川本家の純米大吟醸。
後味がふっと変わる感じがあって、
甘露甘露と思わず口走るよな、
柔らかな呑み口だ。

そこへ、取り分けてくれた「ポテトサラダ」。 ええー、こふいふお姿のポテサラなんてと、
意外過ぎて何度も唸ってしまった(^^)。
ポテトサラダと云えば、真っ先に、
「高太郎」のスペシャリテのひとつ、
「燻玉ポテトサラダ」を思い浮かべる。
嗚呼、蒸かしたじゃが芋をマッシュしたものが、
つまりはポテサラだと思い込んでいた。
でも目の前にあるのは、
その固定概念を軽々と覆した。
ひと口大に切られたじゃが芋は恐らく、
出汁で炊いたであろう様子。
それを滑らかにした白和えにしている。
マヨネーズも多少使っているような…。
ね、ね、面白いねー(^^)。

一品から、胡瓜のぬか漬け。 以前、錦市場で糠漬けを買ったのは、
どの店だったのかなぁ、
でも今はあまりにも外国人だらけで、
なんだか気分が白けるものなぁ、
大丸京都店の地階へでも行ってみようか、
などと話し乍ら、ポリポリと。
京都のお漬物はどうして塩辛くなくて、
いい感じの漬かり具合なのだろうね。

「富翁」一合をお代わりしたところに、
おつくりから選んだ、穴子と鱒。 琵琶湖の鱒に、穴子は淡路から。
玄琢北町の「MUBE」でいただいた伝助穴子も、
鱧の骨切りよろしく、
細かい包丁が入っていたけれど、
京都では、穴子もこうしてお造りにするのが、
鱧のない時季の謂わば定番なのだろうか。
透明感のある中で旨味がしっかりある感じは、
なかなか佳き哉と思うも、
相棒は、火の入った穴子がやっぱり好みだと仰る。
それはそれで、そうも思う(^^)。

揚物から、鴨メンチカツ。 どれどれと箸先で半切すれば、
薄い衣の中に鴨のミンチがみっちりと。
少しレア気味のミンチから鴨の香りのする。
そこへたっぷりと添えてくれているのが、
お土産にも出来るという自家製の野菜ソース。
色々なそして沢山の野菜を使ったであろう、
野菜ソースが魅惑的に美味い。
お土産に自宅用にと買い求める客人が、
少なからずいるのでしょうね。

奥の壁の黒板の中で気になっていたのが、
「蕗の唐」という文字列。
所謂蕗の薹とは字が異なるけれど、
訊けばそのふきのとうのスピリッツだという。 その名も「VALLEY OF FLOWERS
SPIRITS FUKINOTOU」。
裏ラベルを眺めるとなんと、
販売者は、京都の老舗生麩専門店「麩嘉(ふうか)で、
製造者は渋谷区恵比寿のクラフトジンの会社。
洛北・花脊の農園で採れた蕗の薹をたっぷりと使った、
ボタニカル・スピリッツであるという。
ソーダ割りにしてもらった透明を口に含めば、
わーい、フキノトウだー、とそんな感じ(^^)。
これまた、面白いものを見付けたぞ。
熊笹のスピリッツもあるらしい。

そこへ、主菜からの「スッポンの山芋焼き」。 熱々の土鍋がやってきた。
ふつふつとしたあんの湖面には、
鼈の皮か身か肝かが浮かんでる。
火傷しない様にそーっと匙で掬えば、
山芋由来と思しき底の部分が、
どこかお好み焼きチックで面白い。
それとスッポンの旨味の滲むあんとが、
いいコンビだ。

もう一品主菜から「鯛さんしょ餅」。 真ん中に潜んでいるのが玄米餅。
それを鯛のそぼろが覆っている。
海苔で巻いて召し上がれと大将。
へー、こふいふ恰好のものなのかー。
最初に山椒の香りがふふふんと香って、
餅の食感に届いたかと思った瞬間に、
あああ、鯛だ、と思い至る。
なはは、これもまた、うん面白い。
この鯛そぼろもお土産にしたいね。

じゃっじゃっと炒めの音が聞こえてきての、
〆の一品「かに身塩焼きそば」。 パッと見が焼きそば焼きそばしていない。
中華麺のソバではなくて、
挽きぐるみの蕎麦のようにも見える。
訊けば、全粒粉で打った中華麺だという。
そしてその麺から立ち昇る蟹の香りが馥郁たる。
少な目の塩でもって、
蟹の圧倒的な香りと蟹出汁で喰わせる焼きそば。
いやはや、これもまた面白いじゃんね。

いただいたもの全部に、
塩辛くするのが一番よろしくないと、
そのためにどう出汁を利かせるかだと、
そう通底するものがあるような、
そんな気がしています。

四条通りから一本南の綾小路通り沿い。
高倉通りとの交叉点角に、和食「晴ル」は、ある。 「晴ル」ご主人のお名前が晴年(はるとし)さん。
きっと、子供の頃からハルー!って、
呼ばれていたのでしょうね。
その”晴”に京都の上ル下ルの”ル”を添えて、
「晴ル」としましたと女将さん。
なんかこう、京都らしくかつ、
それこそ晴れやかで清々しくも端的で、
印象的な佳き店名で好ましい。
一品一品を振り返ればどれにも、
“面白い”が多分にあることに気が付いた。
京の和食の基本を十二分に踏まえつつ、
ときに再構築とも云えるような、
工夫や捻りを加えているからなんだね。
そんな店主 桔川晴年さんは、
あの京料理・京懐石「和久傳」で修行を積んだそう。
そこで、あれ?っと気が付いたのは、
朝食をいただいた白川橋の「丹」が、
「和久傳」グループのお店であること。
図らずも、朝食も夕餉の時も、
「和久傳」所縁の処にお世話になっていたのですね。

「晴ル」
京都府京都市下京区神明町230-2 [Map]
075-351-1881
https://www.instagram.com/wasyoku_haru.kyoto

column/02996