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炉端焼き「酒庵 五醍」で最北の酒蔵国稀切り込み牡丹海老沖漬けきんき鰊の囲炉裏端

とってもお久し振りに札幌を訪れた2023年の晩夏のこと。
すすきの花小路の「やまか」で、うん十年振りに北海道のジンギスカンを口にして、その美味しさとクセのなさに大感激。
ニカニカ笑いながら、のんびりホテルに戻ろうと西向きにすすきの花小路の歩道をプラプラと歩き始めました。

と、小路の向かい側の景色が目に留まる。 なーんかいい感じに枯れ味の佇まいだ。
好物と云ってもいいのかもしれません。
その瞬間、今度札幌に来たなら、
ここに来ようと誓ったのでありました。
自分に、ね(^^)。

それから正に丁度一年後。
札幌をふたたび訪れる機会を得て、
着いた当日に早速、
すすきの花小路にやってきた。 袖看板や暖簾には、「酒庵 五醍」とある。
入口脇の行燈看板には、
「居酒屋」の文字も見付かる。
はてさて、どんな様子の店内なのでしょう。

お店の中央に構えるは所謂、炉端だ。
囲炉裏の周囲をコの字にカウンターが囲み、
その一辺にご案内いただく。 店内全体を覆うような飴色と、
囲炉裏が上げる薄煙りが雰囲気を醸し出す。
頭上の井桁で燻されているのは、ほっけか。
柱に漁具を吊るすのは、
正統派の装飾だと云えましょう。

札幌の知人も合流したところで、
サッポロ黒ラベルをグラスで乾杯。 ご存じ「切り込み」は、北海道の郷土料理。
鰊を塩と麹で漬け込んだ小鉢を前にして、
こりゃ、麦酒もいいけどお酒だね、
と顔を合わせて頷き合います。

あれこれあるお刺身の中から、
まずは「ぼたんえび」。 艶々した身や頭をじっと見れば、
さっきまで活きていたことが察せられる。
とろーんとして甘さが実に愉しい。

お刺身の皿にはもう一品盛り込まれていて、
それが日頃あまりお目に掛かれない「はっかく」だ。 八角は「トクビレ」とも呼ぶようで、
大きな鰭を持ちトゲトゲした特異な風貌なヤツ。
それが脂のりのりで蕩けるように旨いンだ。

日本酒の選択肢は、
「国稀 佳撰」か冷酒の「国稀鬼ころし」のみ。
最北の酒蔵と謳う国稀酒造は成程、
旭川の西方、留萌の南側の海っ縁の、
小さな港町、増毛町にある。
“最北の酒蔵 国稀酒造”、
覚えておきましょう。

「国稀 佳撰」を冷やでいただいて、
そこへ届いたのが「沖漬け」の小鉢。 烏賊の種類は聞き損ねたけれど、
身の内側にも程よくタレが滲みていて、
つるっとしつつ噛めば歯触りも心地いい。
いやー、酒肴が吞め呑め云うとる(^^)。

正面に見据える囲炉裏では、
代わる代わる様々な魚が煙を上げている。 あ、あの赤いのはウチ等の註文の?
なんて思ったりなんかする(^^)。

と、その赤い魚が焼き上げられて、
どーぞー!とばかりに到着。
「きんき」の焼き物、炉端焼きであります。 脂ののりもよく旨味たっぷり、
皮目近くの魚自体の香りもいい。
美味い美味いとあっという間に平らげる。
値が張るのも納得の贅沢だ。

続く焼き物はご存じ「ししゃも」。 所謂本ししゃもであろうことは疑いがない。
薄い皮越しに噛んだ身はふっくら繊細。
これもまた旨いねーと頷き合って、
国稀のお猪口を傾けます。

焼き物で魚介そのものではないのは、
「あげなっとう」と「天かま」のみ。 北海道の一部地域では、
揚げかまぼこを「天かま」と呼ぶという。
あ、そうか、北海道まで遥々すると、
薩摩揚げとは呼び難いのかもしれないね。

じゃが芋蒸かしたんですけど召し上がります?
そう訊かれれば勿論すぐさま首を縦に振る。 お品書きに「いも」とあったが、
それが多分この、じゃがバター。
ほふはふほふはふ。
バターの風味と塩味が芋の旨味を倍加する。
ただただ、とっても嬉しいねー。

国稀のお銚子、何本呑んだかなぁ、
なーんて話しているところに、
最後の焼き物「にしん」がやってきた。 かつて沢山水揚げされて、
鰊御殿を建る漁師が多くいたと聞くけれど、
それも今は昔。
昨今の温暖化、気候変動でますます、
魚の獲れる獲れないが極端になり、
漁場の変化も激しくなりそうだ。
なーんてことを、
立派な鰊を突き乍ら云い出すなんて、
そろそろ酔っぱらってきたのかもしれません(^^)。

そんな頃になんとよいタイミング。 さっきいただいた「きんき」のガラを、
味噌仕立てのお椀にしてくれた。
炉端焼きの香ばしさも汁に滲んでいて、
じーんとする美味しさだ。

札幌は、すすきの花小路沿い、
炭焼き成吉思汗「やまか」の斜め向かいに、
炉端焼き「酒庵 五醍」は、ある。 昭和38年創業の老舗、と聞けば、
ほぼ同い年の同期のよしみ(^^)。
帰り際暖簾を中から払ってふと、
釧路の名店「炉ばた」を思い出した。
今度札幌に来たならば忘れずに、
店名”五醍”の由来を訊ねなくっちゃだ。

「酒庵 五醍」
北海道札幌市中央区南7条西4-2-18 [Map]
011-531-8080
https://www.syuangodai-sapporo.com/

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