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居酒屋「酒甫手」でずるずる巻鱧卵綴じ無花果白和え川鶴純米鰯餃子粕汁酒造座株から

朝一番で高松駅近くのレンタカー店で借りた車を小豆島フェリーに載せての一時間の船旅からはじめた、香川への旅の四日目。
鮮やかな蒼空の下、小豆島オリーブ公園のギリシャ風車を眺め、日本最古のオリーブ原木を拝み、素麺の製造・販売を手掛ける中武商店のお店「なかぶ庵」で、工場見学と箸分け体験に続いて、
ムニちゅるのオリーブ生そうめんを味わった。

手延べ素麺「なかぶ庵」を後にして少し南下、
醤油醸造所が散在する馬木散策路を散策する。
醤の郷(ひしおのさと)とも呼ばれる一帯には、
水路沿いにも板張りと漆喰壁の風情ある、
醤油蔵らしき建屋が建ち並び、
醤油の匂いが時折鼻腔を擽る。 その散策路の奥のオリーブ畑にあったのが、
瀬戸内国際芸術祭の作品番号sd25、
“オリーブのリーゼント”と呼ぶ立体作品。
近くにリーゼント頭のカツラが用意してあって、
それを被って記念写真を撮るのが習わし、だ(^^)。

そこから内海湾に沿うようにさらに南下して、
「二十四の瞳 映画村」へとやってきた。 壺井栄の小説を原作とし、
木下惠介監督・脚本、高峰秀子主演で、
およそ70年前の1954年(昭和29年)に公開された、
モノクロ映画「二十四の瞳」。
そのロケ用セットを改築して映画村となっている。
往時の映画館を模した「松竹座」で、
常時上映している滲みのある映像を観てから、
碧い海を見渡す木造校舎の窓辺に佇めば、
ほんの少し切なくもなるような(^^)。

帰りのフェリーの時間に間に合うようにと、
ふたたびキビキビと車を走らせて、
ちょうど干潮時間となった、
エンジェルロードをちらと見て土庄港へ。
高松港までの折り返し、一時間の船旅だ。

レンタカーを返却して、
琴電の琴平線、長尾線、志度線の乗り換え駅、
瓦町駅最寄り、フェリー通り近くのホテルに投宿。
陽の落ちたバイパスの通りから、
ライオン通り商店街のアーケードを抜けて裏通り。
鍛冶屋町の横丁へと回り込むようにすると、
暗がりに店名を照らす看板が見えてきた。 今宵の止まり木は、
居酒屋「酒甫手」であります。

縄暖簾を払い、予約の名を告げて、
カウンターの奥寄りへ。 目の前にはちょうど、
フルに赤銅製の酒燗器と思しき、
クラシカルな箱型の道具が鎮座している。
載せられた薬缶もまた赤銅色。
炭の出し入れや空気孔となりそうな小窓の誂えや、
四隅のRの具合も良き景色哉。
酒燗器として現役なのでありましょか。

ちょうど前客さんがお愛想を終えたところで、
さっき入ってきた入口の方向を振り返る。 ファサードの印象同様に店内も飴色の装い。
板壁に貼られたパネルにふと目が留まる。
ランドルト環の視力検査表かと、
一瞬思えば然にあらず、
“酒と酒場を愛してる”そして”ノミスギニチュウイ”。
二重のCマークは、
お猪口の底の蛇の目にも見えてくる。
「さかずきん」というのは、
日本酒応援キャラクターであるらしい。

生の麦酒をいただいて、
ウーーぃと思わず漏らしたところにお通しがくる。 茄子を煮付けた素朴な小皿。
ところがこれが実に美味しい。
甘めのいい出汁が存分に煮含めてあって、
茄子の炊き具合も、ちょうどよい。
オツな口開きだ。
これも三豊なす、なのかなぁ。

まずは、黒板メニューから「ずるずる巻」。 刻んだり叩いたりした具材は、
山芋、秋葵(オクラ)、なめ茸に梅肉。
それを混ぜ込んで、海苔に手巻きして。
梅肉がよく利いていて、さっぱり美味しい。
所謂「ばくだん」の具の定番が、鮪や烏賊、
納豆、秋葵、山芋、沢庵、卵黄あたりとすると、
この「ずるずる巻」は、
「ばくだん」の魚介を使わないバージョン、
てな感じだね。

熱々の器で届いたのが、「鱧の卵とじ」。 鱧の上品な白身を玉子のふわふわと、
優しい出汁とで包み込むようにしていただく。
決して塩辛くなんかにしない。
うん、旨い。

黒板に「いちじく」の文字を見付けて、
無花果、いいねーと「いちじくの白和え」。 無花果のメニューが気になったのは、
数日前に琴平町の「宿月」でいただいた、
胡麻クリームの無花果が、
印象的に美味しかったから、でもある。
それが白和えならばまた間違いない、と。
あー、凄い、熟れ熟れで主役級。
いまさらだけど、無花果って、
オツな酒肴に化けるのだねぇ。

やっぱり地のお酒をと「川鶴」純米オオセト。 1891年(明治24年)創業の川鶴酒造は、
三豊なすの三豊市のさらに西側、
愛媛県との県境の香川県観音寺市にある。
地元産「オオセト」の米100%で仕込む純米酒。
旨味と酸のバランスがよくスムーズに呑み易い。
「オオセト」の酒、憶えておきましょう(^^)。

“和らぎ水”もいただいて「いわしギョーザ」。 嗚呼、めっちゃ鰯、イワシ、だ。
そりゃそうか。
鮮度のいい鰯を刻んだ紫蘇と一緒にたたき、
つみれ状態にしたものを餃子の皮で包んで。
焼き過ぎないように焼いた感じもする。
うんうん、うんうん(^^)。

「燻製盛合わせ」は、鯖、合鴨、穴子。 漂う薫香は、柔らかく、不思議ないい香り。
胡椒の風味を加味しての合鴨が、いい。
皮目がより芳ばしく脂の滲む鯖が、いい。
脱水して旨味の凝集した穴子が、いい。
過ぎない燻製度合いが絶妙なんだな。
あれれ、漬物が甘くて、
これまた不思議に旨いんだ。

〆のメニューには、
「油そうめん」や「にゅうめん」もあるけれど、
おひるに本場小豆島でいただいちゃってるのでと、
渋く「粕汁」をお願いする。 器も汁もあっつ熱。
ふーふーふー。
ずるずるずー。
人参に玉葱、占地に。
あ、意外やズッキーニや白菜が入っている。
白菜はもしや、さっきの漬物だったりして。
同じ発酵系の仲間だものなぁ。
うん、汁の濃密さに身も心も温まる。
これからは、こんな〆もいいね。

琴電瓦町駅最寄りの飲食街の番町交叉点近く、
鍛冶屋町の横丁に居酒屋「酒甫手」は、ある。 1998年に高松市郊外の成合町に創業し、
2004年にここ鍛冶屋町へと移転した「酒甫手」。
お品書きの冊子の1ページに、
店名「酒甫手(さかぼて)」についての解説がある。
その昔、江戸時代の大名が酒米の統制を図るため、
各町村に酒造座株(免許)を交付しました。
その座株のことを「酒甫手」といい、
その免許がなければ酒を造れなかったという。
日本酒に関わる言葉を店名にしたいと考えた中で、
この「酒甫手」をいただいて店名とした、と。
高松で、いい酒肴でいい酒吞むには「酒甫手」で。
そんなお墨付き、つまりはそんな免許も、
疾うに得ている様子の佳き居酒屋でありました。

「酒甫手」
香川県高松市鍛冶屋町6-4 福崎ビル1F [Map]
087-851-1511
https://www.instagram.com/izakaya_sakabote/

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