味の「幸楽」でナシゴレンとラーメンちゃんぽんレバ韮炒め生姜焼き歩道のパラソル

「浦和」という地名がつく駅は、知るひとぞ知る通り、合計8駅もある。
「浦和」ほどではないけれど、同じ地名がつく駅が幾つもある場所は、都内にもある。
それは例えば、「御徒町」。
JRの「御徒町駅」をはじめ、地下鉄日比谷線の「仲御徒町駅」に大江戸線の「上野御徒町駅」と「新御徒町駅」、つくばエクスプレスの「新御徒町駅」と御徒町と名がつく駅が5駅もあるンだ。

此方のお店の最寄り駅は、「新御徒町駅」。
大江戸線の新御徒町駅のホームから、
A4出口で地上に上がればそこは、春日通り。
そのまま清洲橋通りに平行するように、
南下する辺りが小島町。 案内図によると、
旧くは浅草小島町と呼ばれた界隈らしい。
何故に”浅草”が町名から外れたのだろうね。

突き当たった蔵前小学校通りを左折する。 すると通りの向こうに、
木造モルタルと思しき二階建ての、
古色を漂わせる味のある建物が見えてきました。

お店西側のくすんだオーニングテントの下には、
ご存じ浅草開化楼の麺箱が置かれ、
その下にはアルミの岡持ちが待機中。 お店の正面に回れば、
黒板に赤黄青の品札が並んで目を惹いています。

カウンター下の幕板は、
水っけ油っけなんのそののステンレス板。
お約束の丸椅子がいい味を出しています。 そして、なんとも気になるのが、
お店前の歩道に準備されたテーブル、
店内と同じ丸椅子5脚。
ささやかに日陰をつくるパラソルが堪りません(^^)。

その日、カウンターに向かい合う厨房には、
大将と思しきオヤジさんと、
その相方と思しき女将さんが並ぶ。
カウンターと厨房とは、
ガラス板の引き戸で仕切れる設えになっていて、
こんな造りの中華料理店は、
近頃では次第に見掛けなくなってきているような、
そんな気がします。 そんな仕切り硝子戸のひとつに、
“のりさんのおすすめ”と指し示す、
手首型に刳り貫いた貼り紙を見付ける。
その指先が指しているのは、
ナシゴレンとラーメンセットの品札だ。

“のりさん”とは云わずもがなの木梨憲武。
然らばと、氏のおススメに従って、
「ナシゴレンとラーメンセット」をご註文。 あいよとばかりに、註文を聞くや否や、
大将と女将さんが息の合った連携での、
小気味いい調理の様子がライブで愉しめる。

「ナシゴレン」と云えば、
「ナシゴレン」と「ミーゴレン」のセットで憶えてる。
何処だったかマレーシアかインドネシアへ、
ダイビング旅行をした際に毎日のようにいただいた(^^)。
甘くてちょと辛いサンバルという調味料を
買って帰ってきたのも想い出だ。

幸楽バージョンの「ナシゴレン」は、
目玉焼きやフライドエッグ載せのスタイルではなく、
一見すると赤みがかった炒飯のよう。 辛味控えめのケチャップ味という感じで、
サンバルを使っているかは判らない。
ナンプラーの香りが特段する様子もなくて、
アジアのナシゴレンというよりは、
東京下町のナシゴレンという気がする。
でもね、これはこれで美味しいンだ。
どんな経緯でメニューに載せるようになったか、
訊きたくなってきます。

セットの「ラーメン」もまた、
世の安寧を思わせるような、
穏やかな佇まいであります。 スープとどんぶりの方向性によく似合う麺は、
麺箱から察するように、きっと浅草開化楼のもの。
ずっとずっと前から開化楼に任せてきている、
そんな麺なんだと思います。

と或る春先に訪れて、
「ちゃんぽん」をいただく。 それは、あんかけタンメンの醤油味風。
もやしシャキシャキの「レバにら炒め」と、
交互に箸を運んで平らげれば、
沢山のもやしを摂れたことになります(^^)。

晩秋の或る日には、「生姜焼き定食」。 飾り気のない生姜焼きのお皿。
ここに厚焼き玉子を添えてくれるあたりに、
不思議な愛着を覚えてしまいます。

新御徒町最寄りの旧浅草小島町に一画に、
味の「幸楽」は、ある。 開業は、1968(昭和43)年のことのようで、
既に半世紀を超えていることになる。
世に中華の「幸楽」は何店舗あるのだろう。
沢山の「幸楽」の中でも特筆したい「幸楽」がある。
今度は昼下がりの歩道のパラソルの下で、
「冷たいラーメン」でも啜りたいな(^^)。

「幸楽」
東京都台東区小島2-1-3 [Map]
03-3866-5900

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お店が供する馳走に籠めた創意工夫、店の名の由来やそのデザインを「意匠」と捉えて探訪を続けています。

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