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中華そば「きなり」飯能で牡蠣そば山椒白醤油そば優しいーと口走る氷柱からの帰り道

海水温が高くて、その分水蒸気が多量に空気中に上がっている所為なのだろうなぁ。
大雪特別警報が頻発し、各地で災害級の大雪が降り続いて、雪下ろしも道路の除雪も排雪もままならない日本海側の様子を眺めている裡に、首都圏にもその寒波が及ぶ。
さっぶーと肩を抱えていることが増えてしまうけれど、
そうとなれば、ずっと気にはなりつつ、
寒さに怯んで訪れたことのなかった処へ、
意を決して出掛けてみよう。

夕方に乗り込んだ001系特急Laviewは、
飯能でスイッチバックして、
普段は通過する芦ヶ久保駅に臨時停車する。
芦ヶ久保に来るのは、
4000系4両1編成をリメークした、
専用の特別仕様の車輛で、
食事やお酒を愉しみ乍ら、
池袋と秩父とを往復する観光列車、
西武旅するレストラン「52席の至福」で、
立ち寄った時以来だ。

およそ陽の落ちた芦ヶ久保駅は、やっぱり寒い。
手袋をし、耳当てを装着して向かうは、
秩父エリアの氷柱のひとつ「あしがくぼの氷柱」。
他の「三十槌の氷柱」「尾ノ内氷柱」に比べ、
圧倒的にアクセスがよいのだ。

木屑を敷いて整備された細道を上り下りしつつ、
横瀬川を右手にして10分程歩いていくと、
芦ヶ久保から秩父駅方面へ向かう、
西武秩父線の線路が目の前に現れた。 線路の向こう側の木々や雪が、
紫や緑などの色に染められて浮かび上がる。
線路を右手に視線で追えば、
芦ヶ久保第三隧道と思われるトンネルが、
口を開けていた。

線路の下を潜り抜けるとちょっと視界が開けて、
小さな沢を渡る小さな橋の上に出た。 氷がつくる不作為の造形が、
ライトに照られて美しく浮かび上がる。
沢の水や水蒸気によるものか散水のものか、
どうやってこの形になったのだろうね。

そこからちょっと歩くと今度は、
青紫色のライトに照らされて、
おどろおどろしくも映る鳥居が現れた。 富士浅間神社と示す神額の向こうに、
朧に滲む月があった。
真冬に怪談の気配がするじゃぁないか(^^)。

鳥居を潜ってそのままつらつらと上がっていくと、
何故かエイリアンを思い浮かべる樹氷が見付かる。 斜めにつららが伸びているのは、
風に吹かれたまま凍ったということか。
厚く氷を纏って氷柱となった木から、
長く垂れるつららの向こうを後続のひとが、
寒そうにしながら上がってくる。

ぐいぐいっと最頂部まで上がって、
谷あいを見下ろせば、極彩色のライトアップ。 地味にしたくない、キャッチ―にしたいという、
そんな意図も判らなくはないけれど、
どうしたら”氷の美しさ”が映えるのかの、
検討・研究をして欲しい、とも思うところ。
ハワイのシェイブアイスじゃないんだから(^^)。

ちょっと駆け足気味の、
およそ30分ちょっとの滞在だったけど、
なかなか面白かったねと話し乍ら、
予約していた上りの特急Laviewで飯能駅へ。

飯能駅の改札を出るのは、
いつ以来か判らないほどのお久し振り。
北口のロータリーから駅前通りを進んでしばし。 中華そば「きなり」のファサードが、
通りの右手の暗がりにぽっと浮かんでいました。

店頭のスタンドに掲示されたメニューには、
「醤油そば」「塩そば」に「山椒 白醤油そば」の、
三種の中華そばとそれぞれの説明書きがある。
文末には、ただ”季節メニュー”との一文もあった。

両開き戸を引き開ければ、
入ってすぐの右手に券売機があり、
そこで”季節メニュー”の案内があった。
その日の季節メニューAは「牡蠣そば」。
季節メニューBは、
「生姜とごぼうの炊き込みご飯」だ。 うむむむ。
ここで牡蠣への誘いがあると思っていなかった。
シンプルに「醤油そば」にというイメージだったけれど、
誘惑に抗う理由はなにひとつない。
素直に「牡蠣そば」のボタンをポチとしよう。

店内は、左側にゆったりとした厨房があり、
そこへ全8席のカウンターをL字に据える。
チケットを渡して、腰を下ろすと、
調理台の下、寸胴の上に麺箱が見えた。
麺箱には三河屋製麺の文字。
この夜は、ご主人によるワンオペでありました。

さっき眺めた氷柱の話なぞをしているところへ、
「牡蠣そば」のどんぶりがやってきた。 ほど良いサイズの牡蠣が三つに青菜。
大き目な葉の三つ葉の彩りに、
刻んだ柚子が載る。

まずはスープをと蓮華で掬って、啜る。 顔を上げて思わず口走ったのは、
「うわー、やっさしー、優しいー」。
雑味がなく、身体に負担の少ない、
優しい中華そばを目指しています、
とメニューの右下にさりげなく書かれていた、
「こだわり」の中の”優しい”を、
まんまと言葉に漏らしてしまった(^^)。

存分に優しい塩そばベースのスープは、
啜るほどにじわじわと滋味が伝えてくる。 そんな美味しいスープには、
広島産だという牡蠣のエキスも滲み、
齧ればブリっと旨い。
うむむ、これはズルいじゃぁないか。
スープがやや白濁してみえるのは、
カクテルでお馴染みの、
フランス産薬草・香草系リキュール、
「ペルノー」が水と出逢うと白濁する特性、
によるものかもしれない。
スープの縁に薄っすらと浮かんでいるのは、
サフラン由来の油分、みたいだ。

細めストレートの麺もまた、優しいテイスト。 やや加水多めの感じが、
優しいスープに良く馴染んで、いい。
こんな中華そばを欲するお年頃に、
もうずいぶん前からなっているのだ(^^)。

相棒は、メニュー筆頭の「醤油そば」。 横から啜ったスープは、醤油にも角がなく、
まろやかな旨味がひたひたっとする、
これまた優しい味わいだった。
9種類の醤油を使っているとメニューにあるけれど、
使う醤油やその配分には、繊細さを思う。

「こだわり」をそのまま体現していて、
僕らに合った美味しい中華そばだったねぇと、
話し乍らふたたび特急Laviewで帰った、
その10日ほどの後日。
裏を返すように、飯能駅北口に降り立った。

この日の季節メニューAは、
鴨肉、春菊、柚子と書き添えた「赤味噌そば」。
うぬぬ、それも悪くないと悩ませるが、
ここは初志貫徹して、チケットを買いましょう。 流石、ランチタイムにはやはり、
空席を待つ余裕も必要なようで、
入ってすぐに用意された椅子にて、しばし。
今日は、もうひとり女性スタッフもいる。

やってきたどんぶりは、「山椒 白醤油そば」。 青菜に三つ葉は他のどんぶりと同様なるも、
岩海苔に全体に散らばった緑山椒の粒が特徴。
「肉増し」は別皿でというスタイルだ。

「塩そば」のスープと比べれば、
白醤油の味わいがスープの輪郭を縁取る。 そして期待に過不足のない緑山椒の風味が、
ふんふんとひらひらと、
味蕾と鼻腔の間を行き来して、
スープの奥行きをふくよかにする。
ちょっと垂らしたオイルにも、
山椒の風味付けをしているのかもしれない。
いいねいいね、美味しいね。

啜る麺が、過日のものとちょっと印象が違うような。 乾麺を戻したもののような、
透明感が増している感じもしたけれど、
勘違いかな。
それにしても、どのどんぶりも美味しい。
三つのデフォルト中華そばに、
季節メニューが加わって、
今度来た時に迷うこと必至だね。

なんだかちょっと名残り惜しいような、
そんな気分にもなって、
煮干し醤油味「和え玉」をハーフサイズで。 麺は全粒粉入りの細麺に変わります、とある。
ご指南の通り、よーく掻き混ぜていただくのは、
例えば、「丿貫」福富町本店での和え玉に同じ。
「丿貫」ではあの手この手のソースを繰り出して、
攻めたテイストの和え玉だけれど、
ここでは、シンプルに煮干し粉と醤油のソース。
「和え玉」もやっぱり優しい風合いなのだ。
ところが、ふんふん頷きながら麺を啜っていると、
麺そのものの旨味がどんどん確かめられてくる。
ただ簡単につくっている訳ではなさそうだ。

飯能駅北口ロータリーから伸びる、
駅前通り沿いに中華そば「きなり」は、ある。 「きなり」は、駒込に創業した後5店舗を展開、
現状では飯能店と東中野店のみ営業している。
2022年1月開店のこの飯能店は、
新所沢駅東口から移転したものらしい。
より身近なのに知らんかったなぁ(^^)。
店名「きなり」についてメニューには、
「生成り」素材そのものを大切に。
「木成り」自然に熟すように。
「奇成り」事実は小説より奇なり。
「喜成り」美味しいは喜び。
と想いを当てた言葉を挙げている。
繰り返しになるけれど、
スープを初めて啜った際に思わず口走ったのは、
「うわー、やっさしー、優しいー」。
メニューの右下にさりげなく書かれていた、
雑味がなく、身体に負担の少ない、
優しい中華そばを目指しています、とする、
「こだわり」文中にあった”優しい”を、
まんまと言葉に漏らしてしまったことになる(^^)。
久し振りにわくわくするラーメンを食べた。
それが秘かにとっても嬉しいンだ。

「きなり」飯能店
埼玉県飯能市柳町7-9 誉田ビル1F [Map]
https://www.instagram.com/kinari_hanno/

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