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珈琲「唐変木」でピナイサーラの滝の冒険とおばぁの味イカのスミ汁そばソーキカレー

前日に石垣島の離島ターミナルから八重山観光のフェリーで渡ってきた、西表島。
石垣島には何度も来ているのに、お隣の西表島には漸くの初来島だ。
時にやや激しく降ったり、曇り空から急に晴れ間が覗いたりする、島の天気らしい生憎の空模様ではあったものの、島の外周を走る白浜南風見(はえみ)線を端から端までドライブすることが出来た。
ドライブ途中の船浦湾を渡る海中道路から、
湾の奥の山間に見えた大きな滝が印象的でした。

その翌日は、少し早起きをして食事を済ませ、
お迎えのワンボックスカーに乗り込む。
車は上原港を過ぎて、
海中道路の手前から山の中へ。
ダブルブレッドパドルを手に簡単な手解きを受け、
マングローブ林の中に潜り込んだ。

カヤックを漕ぎ出したのは、マーレ川。
カヤックは、石垣島の宮良川とか、
沖縄はやんばるのクイナ湖あたりで経験があり、
相棒と呼吸を合わせて、スイスイと下った。

やや遠くに前日渡った海中道路が見える、
船浦湾も近いヒナイ川との合流点から、
右に転回して、今後はヒナイ川を遡上する。
遡上すると云っても、潮が満ち始める時間帯。
パドルをゆったりゆったりと交叉させれば、
これまたスイスイと進んでくれる。
と、視線の先にあの滝が見えてきた。 思わず、おおおおーと呟いて、
パドルを水平に休めてしばし眺め遣る。
記憶に残る印象的な光景だ。

その滝の名は、ピナイサーラ。
見え隠れするピナイサーラの滝を目標に、
そのままヒナイ川を遡上し、
上陸ポイントに辿り着いた。

そこからは、ジャングルの木々の中へ。
時に大きな段差がある大きな岩の間を、
左右にうねるように、一歩一歩登り歩く。
足許は、濡れて滑る石や木の根や泥濘んだ土。
滑ってコケたら大怪我だとより慎重になりつつ、
時折休憩と給水を挟みながら、一歩一歩と登る。
やがてだんだんと自重がより重くなってくる。
ダイエットしておくんだったと後悔しても、
時すでに遅し(^^ゞ。

滝の水音が近づいてきたなぁと思ったら、
ぱっと視界が開けて、
ピナイサーラの滝の全貌が目に飛び込んできた。 おおおおおー。
遠く眺めた滝を目の前にすればやっぱり、
壮大なる迫力がある、ある。

岩の上に腰掛けてしばし、滝を眺める。 滝口の向こうには、
漸く晴れてくれた蒼空が覗き、
なんだかとっても晴れ晴れとした気分だ。

ひと休みして給水したらやっぱりと、
滝壺の冷たい水に身体を沈めてみる。
ひぃいいいいー、つ、冷たいぃ。
身体が冷たさに少し慣れたところで、
滝の下まで泳いで、岩に掴まって、
頭上の滝を眺め上げた。
画像に残せなかったのが残念だけれど、
それもまた記憶に残る光景だった。
皆さん、滝壺では泳ぎましょうね(^^)。

すっかりクールダウンしてリフレッシュ。
ピナイサーラの滝の雄姿を背にして、
登ってきた難路をふたたび一歩一歩下り辿る。
ヒナイ川にカヤックを漕ぎ出して、
今度は、川縁のマングローブの様子を観察しつつ、
ゆっくりとゆっくりと下り往く。 シオマネキが大きなハサミを一斉に振る様子は、
マングローブ定番の光景だね。
と、カンムリワシが翼を広げて、
カヤックの真上を飛び抜けていった。
これもまた、印象に残る情景だ。

ホテルに戻って、シャワーを浴びたら、
ちょっと遅めのランチタイム。
遠出している間もないのでと、
ホテルへの導入路へと歩き出る。
すると、生い茂る熱帯の草々に埋もれそうな、
案内板を歩道の脇に見付けた。 右へ折れ入るよう促すプレートにあるのは、
「唐変木」という、店名にしては珍妙な三文字。
頭上を両側からの樹木に覆われた、
少し暗めの細道を探るように向かいましょう。

あ、あった(^^)。
喫茶「唐変木」は間違いなくありました。 右手の建物が母屋で、
その庭先に造られた格好の可愛らしい建物。
琉球瓦の連なりの中程に、
少し厳つい表情のシーサーが祀られていました。

暖簾を潜って、左手のテーブル席へとご案内。
硝子窓越しに今来た門の廻りが見渡せる。
唐、変、木と記された暖簾が時折、
ゆったりした風に押されて戦いでいる。
敷地の隅では、
大振りなガジュマルが存在感を示しています。

お向かいのテーブル席には、
赤ちゃん連れの欧米系人と日本人客とが相席中。 天井板は張れておらず、
梁などの構造部材の様子がそのまま眺められる。
空間に高さがあるというのはそれだけで、
なんだかゆったりするものです。

奥の間との境の格子戸には、
「6月4日は誕生日」にはじまる文と、
色鮮やかなパステルな絵。 左下に”37″と貼り紙があるのはきっと、
「唐変木」の37歳の誕生日のことを示してる。
そして「唐変木」が愛されていて、
「唐変木」がある日常に感謝する様子がよく判る。

ふと手にした箸袋には「うめ~し」の文字。 「うめ~し」は、沖縄弁で「お箸」のこと。
旨いしー、と同じ響きの言葉が箸袋に書かれていると、
そんな意味かと思っちゃうよね(^^)。

おひとりで、少し忙しない様子のおばぁの手が、
落ち着くのを待って註文を伝える。
ご近所のどなたかがフォローして作成してくれたのか、
メニューには、英文での簡単な説明書きもあるンだ。

ご註文のひとつが「イカのスミ汁そば」。 お椀から立ち昇る湯気の奥には、
烏賊の切り身や下足がたっぷりだ。

そりゃ、烏賊墨だものなぁと思いつつ、
真っ黒な汁を少し様子を窺う様に蓮華から啜る。 思いの外さらっとした口当たりの汁で、
嫌な臭みの類の気配は皆無でありつつ、
軽く煮付けたのであろう烏賊からの旨味が、
ベースの汁に滲んでいて、ただただ旨い。

黒味を帯びた烏賊の身を口に運べば、
これまた思いの外の柔らかさ。 啜る麺は、八重山そばらしいストレート麺であるも、
丸麺ではなくて、やや平打であるのも面白い。
まろやかな烏賊墨の汁に良く似合う、
謂わばまろやかな食べ口の麺だ。

壁に貼られていた「沖縄タイムス」の記事には、
使う烏賊は障泥烏賊(アオリイカ)のみで、
軟骨やワタ、くちばし以外はすべて活かして、
程良く煮詰めて柔らかく仕上げている、とある。

もうひとつのご註文が「ソーキカレー」。 所謂ソーキ、豚の骨つきアバラ肉が煮込まれ、
ホロホロになっているところに、
8種のハーブや野菜を活かしたというカレーが、
たっぷりとかけられている。
南の島でのシャワーの後のひる下がりに、
ゆったり気分でいただくカレーとあらば、
そりゃ、美味しいに決まっているよね(^^)。

2018年(平成30年)の「沖縄タイムス」の記事には、
西表島産ノコギリガザミで作る「カニ汁定食」や、
島のイノシシが味わえる「カマイチャンプル定食」といった、
これまた島の味らしい品書きの記述もあるものの、
今のメニューには残念ながら見当たらない。
でもそれは、おばぁおひとりで賄うには、
何かしらの無理が生じてきているからに違いない、ね。

上原地区にある星野リゾート、西表島ホテル近く。
白浜南風見線から樹々の間に入り込んだ森の中に、
喫茶「唐変木」は、ある。 店を切り盛りされているおばぁは、
ともに沖縄出身の旦那さんと一緒に、
20代の半ば頃にここ西表島に移住。
大工だった旦那さんが仲間とともに店を建て、
おばぁが料理に工夫を凝らしてきたという。
「唐変木」とは、古代の中国(唐)から伝わった、
扱いづらい変わった木、という意味から、
気の利かない人や一風変わった偏屈な人、
物分かりの悪い相手を罵る際に使われた、
店名とするにはとってもネガティブな言葉。
それを敢えて店名に据えたのは、
辺境とも云える西表島に移住してきたことが、
背景にあるのかもしれません。
敢えて自らを”変わり者”となぞらえながら、
島に、この土地に謙虚に馴染もうとしたのかな、
なんてことを思ったりするけれど、
そのあたり、どうなのでしょうね(^^)。

「唐変木」
沖縄県八重山郡竹富町字上原749 [Map]
0980-85-6050

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