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手延べ素麺「なかぶ庵」でオリーブの生そうめんムニちゅる箸分け体験と小豆島の蒼空

丸亀城への朝の散策ではじめた、香川への旅の三日目。
丸亀駅からJR予讃線に乗り、高松方面へ向かう途上の坂出駅で途中下車。
目的地は、これまた讃岐うどんの有名店のひとつ「日の出製麺所」。
製麺所が本業ゆえに、ひるの1時間しか営業しないという異色さも夙に知られている。
高架下から坂出港線の通りに出ると、
やや先の右手になにやらひと集りが出来ている。
一歩一歩と近づいてみて明らかになる、
そこを取り巻く大行列に慄いた(^^)。
開店からのひとの流れはスムーズなものの、
なんだかベルトコンベアーに載せられた、
荷物のように席に着き、
忙しなくうどんを啜った。
近くの鎌田醤油で醤油アイスを舐めて小休止。
高松駅へと向かいました。

駅前のJR四国系列のホテルに荷を降ろし、
もうひと休み。
そろそろ行こうかとサンポート高松エリアへ。
地上30階のシンボルタワーの下を潜り抜けると、
アリーナのふたこぶ駱駝のようなフォルムが、
海の上の蒼空に溶け込むように目の前に現れた。
今回の旅の契機となったのはそう、
この年の春に開業したばかりの、
あなぶきアリーナ香川で催された、
小田和正アリーナツアーの香川公演なのでした。

ちょうどこの日の前日に、
誕生日を迎えた小田は、御年78歳。
コンパクトにまとめられ、
音響も素晴らしい会場で、
もしかしたら最後になるかもしれないツアー。
その一幕を歌声を一挙一動を存分に愉しんだ。
客席との距離を近づけるべく、
アリーナを巡るように設けた回廊の真ん中で、
ピアノ弾き語る「言葉にできない」に震えたっけ。

その翌日、香川への旅の四日目は、
駅近くのレンタカー店から始まった。
始業前から店の前に待ち構えて、
スタッフを急かすようで申し訳なかったけれど、
お陰様で一本早い小豆島フェリーに乗れた。 薄い雲はあるものの、眩しいほどの海を往く。
甲板で風に吹かれるのもまた心地いい。
何艘ものフェリーと行き交いつつ、
一時間で小豆島の土庄港に着いた。
小豆島を訪れるのは勿論、初めてだ。

世界一狭い海峡と云われる、
土渕海峡をちらと見て、
向かったのは、小豆島オリーブ公園。 ギリシャ風車が蒼空に映える。
“魔法のほうき”と呼ぶ箒を、
施設で貸し出していて、
風車の周りでも沢山のひとが、
その箒に跨ってぴょんぴょんと飛んでいる。
そしてそれを写真に上手いこと収めようと、
苦心して、またぴょんぴょんと。

園内は当然のようにオリーブの樹だらけ。 小豆島オリーブ園がこの地に、
オリーブを植樹したのは、
1917年(大正6年)ことだという。
100年を超える月日に亘り実り続ける、
日本最古のオリーブ原木も拝むことが出来た。

広く海を見渡す小高い丘の上には、
オリーブ色した古の丸型ポスト。 “オリーブストーリー”と呼ぶ、
大きな本のモニュメントがあって、
ファンシーな気分にも寄り添う準備に怠りなし。
若者に負けじと写真撮ったりなんかして(^^)。

のんびりし過ぎた、予約の時間に間に合うか、
とキビキビと車を走らせて、島の東側へ。
国道436号線から左へ鋭角にハンドルを切り、
その先の狭い急坂を登る。 素麺の製造・販売を手掛ける中武商店のお店、
「なかぶ庵」へとやって来ました。
箸分け体験・工場見学、
そして食事の予約をしていたのであります。

しばし待機をと案内された部屋で早速、
木製のハンガーのようなものに吊るされた、
手延べの素麺とご対面。 こうやって、およそ均等に、
美しく吊り下げて乾かすのだなぁ。

衛生帽的キャップを被り、
社長の中武さんと思しき先生に引率されて、
建物奥側の工場へと入り込む。
見慣れない機械が並ぶ工場内で、
素麺の製造工程を説明いただきました。

まずは、小麦粉と瀬戸内海の海水で出来た塩と、
小豆島の水とで、麺のもと、生地をつくる。
大気を素肌で感じ、天気を読んで、
長年の経験を元に塩加減を決めるという。
麺の生地を円筒状に整えて切り出し、
その麺帯を一定量に分けて2つの桶に収める。
2つの桶の麺帯を合わせて1本の麺帯にし、
太くなったものに力を加えて少し薄く延ばし、
桶に取り分け、さらに2本を合わせまた延ばす。
それを4回繰り返すことで、
16層がしっかり折り重なった麺帯が出来る。 その麺帯を2回ほど圧延して厚さ2cmに。
これを折り畳みながら丸めて、
直径5cmのロープ状にして桶に巻き入れる。
この時、麺の滑らかな表面を乾燥から守るため、
芳ばしく温めた胡麻油をうすーく表面に塗る。

2本を合わせるを繰り返し沢山の層をつくるのは、
うどんをつくる際に何度も折り畳み足で踏むのと、
同じ意図・目的の所作だね。

熟成させた麺帯を今度は、
2本の管に通して、撚りをかけながら巻きつける。 麺に捻りを加えて合わせて、
さらに沢山の層と筋とで強くするんだ。
素麺を手延べして伸ばしても、
切れたりし難い理由はここにあるんだね。

保管、熟成を経て、
手延べの下地のために管を少し引き伸ばして、
さらに熟成させての準備が整えば、
箸分けの工程へと進みます。

工場の別のエリアに移動して、
いよいよ箸分け体験だ。
まずは先生が解説しながら手本を示す。 管を延ばし機に留め、麺を引き伸ばしながら、
交差し付着している麺を2本の箸で捌いて、
細い1本の麺へと仕上げる。
50cm程の麺がおよそ2mまでになるという。

続いて、参加メンバーが交代で、
先生の合図と指示に合わせて箸を動かす。 容量の良い人とそうでもない人がいる(^^)。
力の加減を探りながらスススと伸ばし、
箸先の入れ処を確かめつつ、広げる。
なはは、なんだか心地いい。
塗ってあった胡麻油が効果を発揮するのか、
伸ばすと艶が出るような気もするな。

箸分けを終えた麺を吊った延ばし機を、
天日にさらすために戸外に並べる。
太陽の光を浴びて、風味を増してゆく。
島の穏やかな日光と風でゆっくりじっくり乾燥。
仕上げに室内の乾燥機に入れる。
干し上がった麺を、裁断し、把ねて箱詰めする。
なんとここで終わりではなくて、
圧倒的にニーズの高まる夏のシーズンまで、
蔵で長期に熟成させ、コシを生むのだという。

成る程ねー成る程ねーと呟き合いつつ、
キャップを頭から外して、隣接の食堂へ。
ここでは、今さっき箸分け体験した工程あたりの、
おそらくは、干し上げる前の素麺、
つまりは、”生そうめん”がいただけるのであります。

シェアして食べようとまずは、
「オリーブ生そうめん」。 中武商店の自家農園で採れた、
小豆島産のオリーブによる、
エキストラバージンオイル100%をつかった、
そして生の素麺だ。

オイルを贅沢に含んでいる所為か、
艶々として、
その透明感が生っぽさをより感じさせる。 つけ汁にちょんとつけて、いざ。
あああ、ムニムニっとしてちゅるんとして。
こりゃぁ、初めての不思議な食感だ。
如何にも直截なオリーブオイル感はないものの、
啜るごとにふんわりと香りを感じる。
うん、美味しい。

続いて、シンプルな、でも生のそうめん。 あああ、これまたちゅるんとしてムニっとして。
何層にも折り重ね、捻って合わせてを繰り返し、
鍛錬した力強さが、
細い細い麺の中に宿っている気がする。
その中から小麦粉の風味がしっかり伝わる。
しっかし、乾麺とはおよそ別の代物なんだね、
生そうめん、って。

瀬戸内に浮かぶ小豆島の東側。
国道46号線から鋭角に折れ入った急坂の途中に、
手延べ素麺「なかぶ庵」は、ある。 素麺の製造・販売、そして工場見学に、
オリーブの栽培・製造・販売を行う、
中武商店の店「なかぶ庵」。
生の素麺のビビッドな食感を味わうにはきっと、
小豆島の現地を訪ねるべきだと、そう思う。
その際には工場見学・箸分け体験の予約もぜひ。
次の夏が気配がしてきたら、
冷蔵品の生そうめんの配送をお願いしなくっちゃ(^^)。

「なかぶ庵」
香川県小豆郡小豆島町安田甲1385 [Map]
0879-82-3669
https://shodoshima-nakabuan.co.jp/

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