「中華そば」タグアーカイブ

手打ちらーめん「燎」で焼豚味玉醤油らーめん早朝から仕込む麺帯七彩と焔のその先に

南北には、日比谷線が地下を走る市場通りこと新大橋通りと、晴海通りの築地「布恒更科」辺りから兜町へと抜けて行く平成通り。
東西には、昭和通りの新京橋から新富一丁目交叉点を通り、入船一丁目から南高橋へと進む通りと、首都高を渡る三吉橋から築地橋や入船橋の脇を抜けて佃大橋を渡る通り。
それらの通りに東西南北の四方を囲まれた、
新富一丁目・二丁目界隈は、
ひっそりとしつつ何気に魅力的な飲食店が、
バランスよく散在するエリアだ。

そんなエリアの一角の、
Bistro「Bois de pin」の向かい側、
そして焼き鳥「ドリフ」の向かい側に、
2024年4月にオープンしたのが、
手打ちらーめん「燎」。

おひる時に当の裏通りを往けば、
およそ必ず、空席待ちの一群に出会す。 立ちん坊ではなく、丸椅子があるのが、
一種の落ち着きを生んでいるような気もする。

ただ、なるべく待ちたくない気持ちもあって、
此処に伺う時はファストパスを利用する。
江別製粉ハルユタカ使用店を示す、
ホーロー風の看板や、
京都産九条ネギねぎ直送を示す木札を、
硝子越しに眺めながらしばし待っていると、
ファストパス利用者へと声が掛かる。

お先にと失礼して、暖簾を払い、
入口脇にある券売機にてチケットを買う。 細かく並んだ照明の下、蟹歩きしつつ、
席6つのカウンターの奥寄りに着座します。

カウンターが正対する厨房は、
奥にある裏口から狭く続き、
手前側がやや広がって、
そこに寸胴や大鍋、調理器が据えられている。 それ故、平笊で麺の湯切りをする所作も、
調理工程の一部始終がおよそ眺められる。
湯掻く時間は、1分半程、らしい。
天婦羅用に近いような、
太い菜箸を使っているね。

最初のご註文は「焼豚味玉醤油らーめん」。 つまりは全部入り(^^)。
味玉は、名古屋コーチンを使った煮卵。
スープはやや濃いめに映る醤油に澄んでいる。
某TV番組によれば、その醤油ダレは、
濃口、淡口、白など5種類をブレンドしているそう。

たっぷりと盛り込まれるは黒豚焼豚。 バーナーで炙って芳ばしく仕立てた焼豚に、
挟み込むように置かれているのは、
糸島メンマという支那竹。
福岡県糸島産の孟宗竹を使用したというメンマ、
つまりは国産のメンマということになる。
柔らかめで均一な歯触りのするメンマだ。

そして、白眉はやっぱり手打ちの麺。 カウンターの中でワンオペしている店主の、
ちょっとヤンチャそうにも見えるご尊顔が、
麺や「七彩」にあったのをよく憶えている。
湯掻く直前にめん切カッターで手切りし、
じっくり手揉みすることで、
活き活きした麺にさらに独特のクセがついて、
それが個性的なピロピロの食感を生むのだ。

別の日には「味玉醤油らーめん」。 最初の日に比べて、
醤油ダレの色合いがやや薄目のような気もする。
醤油のブレンド具合も、
時に見直しているのかもしれないね。

青森シャモロック、天草大王、黒さつま鶏、
といった地鶏をベースに、
羅臼昆布などでとるスープ。 濁りのない滋味がひたひたと豊かなスープだ。

ちょっと欲張って、「肉ご飯」を添えてみる。 件の黒豚チャーシューを厚切りして、
賽の目状に刻んで、ゴロゴロっと盛り付ける。
ご飯は見えない(^^)。
加減よくタレも利いていて、
旨いに決まってるじゃんね。

さらに別の日には「焼豚醤油らーめん」。 きっと、白い刻み葱が千住葱で、
青い葱はおそらく九条葱、か。

そしてやっぱり、
「七彩」仕込みの手打ち麺が、美味しい。 「燎」では、春よ恋、はるゆたか、ゆめちから、
きたほなみといった国産小麦粉を配合しているそう。
「燎」の麺が「七彩」と違う点は、「七彩」では、
およそ註文に応じて粉への水回しから始めるけれど、
「燎」では、手捏ね、足踏み、伸ばしまでを、
毎朝早朝から三時間半かけて行って、
所謂麺帯をつくって準備しておき、
註文を受けてから手切りし、手揉みして、湯掻く。
ワンオペで如何に、手早く手打ち麺を提供するか、
色々と思案した上でのオペレーションなのでしょう。

何気に魅力的な飲食店がバランスよく散在する、
新富一丁目・二丁目界隈の一隅に、
手打ちらーめん「燎」は、ある。 暖簾にもアルファベットのルビがあるように、
「燎」は「かがりび」と読む。
店名の由来について訊ねると店主の応えは、
那須の手打「焔(ほむら)」さんが元々好きで、
店名の火偏が恰好いいなぁと思っていて、
火偏のひと文字を探して「燎」に辿り着いた、と。
一方、某TV番組では、こう訊いていた。
何故そうまでして自家製手打ち麺に拘るのか、と。
それに対して店主は、こう答えた。
お客さんに出すものはすべて自分でつくりたい。
もしかしたら味に違いはないのかもしれないけれど、
盛り付けているときの感情が、
僕の中で違うのです、と。
デジタルに対してアナログの良さを想うような、
“アウラが違う”感覚が、
ここにもあるのかもしれません。

「燎」
東京都中央区新富1-9-5 SOPHIA GINZA1F [Map]
https://x.com/teutikagaribi

column/02910