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炭火割烹「淡々」で地蛸ぬた針烏賊昆布〆神石牛寳劔甘鯛松笠恵比須鯛ご飯生口島の夜

尾道映画祭2026の一幕として催された大橋トリオの西國寺金堂でのライブを軸にして出掛けた、尾道への旅の初日のこと。
久々の長ーい新幹線での旅は、おそらく5年振りの福山駅まで。
駅南口の「自由軒」で5年振りにランチしたーいと思うも、いつの間にか夕方からの営業になっていたと知る。
ならば、ふたつの備後国一の宮へ巡る、
その道中でランチをと、
駅北口で借りたレンタカーを駆って、
ローカル色漂う福塩南線沿線方面へ向かいました。

降り出した雨と暗い空の下、
芦田川の畔に建つ洋館のレストラン、
「ビストロ・ル・レーヴ」に到着。 見晴しの良いテラスでの食事を目論んでいたゆえ、
生憎の雨模様が恨めしい(^^)。

レストラン営む先輩ご夫婦に、
ご馳走さまの挨拶をして、
福塩線の上戸手駅近くにある、
備後國一の宮「素盞嗚(すさのお)神社」へ。 随神門から参道を往き、
神楽殿越しに本殿に向かう。
本殿の御祭神はその名の通り、
牛頭天王、天道神ともされる素盞嗚尊に、
素盞嗚尊の后神、奇稲田姫命(くしなだひめ)。
素盞鳴尊と奇稲田姫命との間に生まれた、
八人の皇子、八王子命(はちおうじのみこと)。
そうか、都下の”八王子”の名もまた、
スサノオとその八人の子に由来するのだね。

福山市内にある「素盞嗚神社」から、
車で10分弱の場所にもうひとつ、
備後國の一の宮「吉備津神社」がある。 上随神門へ向けて石段をえっちらと登り、
神楽殿の脇の百度石を横目にしつつ、
拝殿の脇を抜けて朱塗り鮮やかな本殿へ。
「吉備津(きびつ)神社」の主祭神は、
大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)。
岡山市内に、備前國の一の宮「吉備津彦神社」と、
備中國の一の宮「吉備津神社」とがあって、
ややこしいことこの上ない(^^)。

ふたつの一の宮にお詣りしご朱印をいただいて、
福山でのミッション終了。
雨の中そこから向かったのは、尾道方面。
西瀬戸尾道IC起点の自動車道といえばそう、
お初の「瀬戸内しまなみ海道」であります。
晴れていれば、風光明媚なドライブなのになぁと、
嘆きつつ、生口島北ICで自動車道を降りた。

そのまま島の縁を反時計回りして、
目的地の瀬戸田地区に辿り着いた。
この日のお宿は、地区のメインストリート、
しおまち商店街沿いの「yubune」。
“yubune”とはそのまま”湯舟”。
島の情景が壁一面に描かれた「銭湯」を持つ、
ちょっと不思議なお宿であります。

晴れていて到着が早ければ、
しおまち商店街を散策するところ、
日の暮れた雨降りの商店街は、およそ真っ暗。
ならばと、ひと休みしてから、
商店街沿い徒歩1分のご近所へ。 今宵の止まり木は、炭火割烹「淡々」。
通りに向けて左右に広く提げた、
大振りな小豆色の暖簾が印象的だ。

暖簾を払って、店内へ入ってみると、
商店街に面した面ばかりでなく、
向かって左側も全面の硝子張り。 オープンな厨房をL字に囲むカウンター。
その中央に大きなダクトを戴いた、
焼き場らしき煉瓦積みの舞台がある。

まずは、本日のネタのご案内。 地穴子に地蛸、恵比須鯛に甘鯛、魬(はまち)。
福山からの黒毛和牛「神石牛(じんせきぎゅう)」。
雲丹は宮崎方面からのものだという。

キンキンに冷えた赤星の瓶をいただいて、
迎えたひと品目が「地蛸の炙りぬた」。 酢味噌がたっぷり。
細かく包丁を入れた様子の蛸に、
しんなりさせた分葱が載る。
ああ、纏わせた山椒の香りがいいね。

この酢味噌で吞めちゃうね、
なっつって(^^)、日本酒を所望する。
やっぱり地の、広島のお酒がいい。
ならばと出てきたのが、「寳劔(ほうけん)」。
雨模様に少し冷えた感じもするので、
最初だけでもと、ぬる燗につけてもらう。

続いて「蟹真丈のお椀」。 昆布主体の優しい、いいお出汁だ。

東京→福山の新幹線3時間半は、
いよいよシンドクなってきたなぁなどと、
そんな話をしているところへ、
お造りの六角形の平皿がやってきた。 平目、鯒の酢〆、地穴子の炙り、針烏賊昆布〆。
針烏賊なんて初めて聞く名ですと話すと、
紋甲烏賊、墨烏賊、針烏賊と、
甲烏賊には三種類あって、
その中で一番甘くて柔らかいのが針烏賊だという。
確かにめっちゃ柔らかく、そして甘い。
東と西とでの呼び名の違いなどがあって、
このあたりのことはややこしいけれど、
うん、針烏賊という名前も覚えておこう(^^)。

と、お造りから一転お肉へという意外な展開(^^)。 「神石牛(じんせきぎゅう)」とは、
神石牛公式サイトによると、
広島県神石郡神石高原町で最長期間飼育された、
去勢牛または未経産雌牛の黒毛和牛で、
年間に約400頭しか出荷されていないため、
「幻の和牛」とも呼ばる、らしい。
ああ、サシが過剰に入ってなく、
それでいて赤身の肌理が細かくて、
しっとり柔らかなお肉って、いい。
ボリュームや削ぎ切りの加減も含めて、
いまの僕らには、こふいふのが、いい。
そして、山椒の風味を隠した黒胡椒のソースが、
肉を軽やかにしてくれるような気がする。

同じ「寳劔」の純米吟醸 八反錦 かすみ酒を、
そうね、そのまま冷たいので。 その首に、円に「生」と示した一升瓶は、薄いブルー。
滓絡みの気配のする雫には、
ふっくら柔らかなお米の旨味と穏やかな吟醸香のする。
酒米は、広島県産の八反錦100%。
宝剣酒造は、未訪の地、呉市の仁方町という町にある。
1871年(明治4年)創業と聞けば、
その歴史150年を超える老舗酒蔵ということになるね。

和牛から焼き魚という流れも案外珍しい。 魚は甘鯛。
甘鯛の焼き物といえばやはり、松笠焼きだ。
折角の松笠の上に雲丹が必要かどうかと思いつつ、
鱗にパリッと箸の先を入れていく。
下に敷いた菊芋のソースがコクを添えて、
精細な甘鯛の身と鱗を下支えしてくれる。
でも、やっぱり、雲丹はいらないか(^^)。

「大号令」生酛純米八反錦をいただきながら、
一升瓶のラベルは馬のフォルムだねと眺めていたら、
安芸郡熊野町の酒蔵の名が、馬上酒造だからと知る。
そこへ「春菊のおひたし」。
春菊のお浸しは、春菊はもとよりなめこもいい。 ここにきて、「魬(はまち)の藁焼き」。
そうだ、冒頭のネタ見せにハマチがあったじゃん(^^)。
しまなみ海道の一番の尾道寄りの島、
向島産の青パパイヤの酢漬けを背面に添えて。
塩で軽くもんでから水にさらしてよく搾り、
土佐酢に漬け込んだ、という。
青パパイヤの酢漬け、素朴に美味しい。

そして、羽釜にて恵比須鯛の炊き込みご飯。 聞き覚えはあるような、
でも食べた覚えはないような、
そんな気のする恵比須鯛、夷鯛(えびすだい)。
仄かに山椒と黒胡椒の香りがする。
あおさの味噌汁ともども、
お陰でお腹が美味しく落ち着いたね。

デザートは隠し味に塩を使った塩プリン。 ちゃんと苦めの大人のカラメルがいい。
添えてくれた地元の蜜柑がめちゃ甘い。

ちょいと失礼して席を立ち向かったトイレは、
流石に目隠しはされていたけれど、
個室の二面が引き違いのサッシという不思議な空間。
オーナーが建てた建物は、鉄骨造の全面ガラス張りで、
飲食店用としてはどうかなぁと戸惑ったという。
ちなみに内装の設計及び施工は、
しおまち商店街の並びに威容を保つ、
泊った「yubune」と同じ経営の、
豪商の邸宅を大規模にリノベーションした、
「Azumi Setoda」と同じだそうだ。

しまなみ海道の真ん中あたりの生口島。
瀬戸田地区のしおまち商店街沿いに、
炭火割烹「淡々」は、ある。 福岡の出身だという大将は、福岡から、
熊本、東京、三重、東京、滋賀、そして広島と、
代々の親方の指示であちこちに移り、
飲食勤めをしてきたそう。
訊けば、一番長く働いていたのは東京で、
宿泊施設のお食事処、厨房を主として、
寿司や和食、懐石、鉄板焼きなどに携わり、
ここ生口島へとやってきたのは、
隣接する「SOIL Setoda」のオーナーの、
和食をやりたいがどうか、との誘いを受けて。
店名「淡々」について訊くと、
海(≒水)の近くで、炭(≒火)を使うことから、
この「淡」という字は使いたかったンですと。
「淡」を使って、語呂やテンポのいいものと考え、
「淡々(たんたん)」としたと云う。
うん、なんか、佳き店名でありますね(^^)。

「淡々」
広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田259-1 [Map]
070-8326-7959
https://www.instagram.com/tantan.setoda/

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