と、交叉点角の歩道に仁王立ちしているヤツがいる。 紅いボディスーツに身を包み黄色いマフラーを靡かせ、石巻駅方向を見据えているのが、 かの石ノ森章太郎画伯が生んだ「サイボーグ009」の主人公009島村ジョーだ。パネルの説明書きを眺めると、 閉館中が残念だった「石ノ森萬画館」へと向かうマンガロードに沿って、 他の00ナンバーのサイボーグや仮面ライダー、ロボコンといったキャラクターたちが迎えてくれるそう。 そんな009の背中越しにお食事処「藤や食堂」の袖看板を見つけました。
外観通りにくすんだ古色がいい感じの店内はほぼ満席。 先客さん達と入れ替えるように隅のテーブルへと腰を据えます。
窓への貼り紙には、 石巻焼きそば伝道師「ちゃちゃ丸」のキャラクターがコテを手に微笑んでる。注文んだ麦酒のラベルは、「第6回 B1グランプリ 姫路大会」誂えのもの。 石巻観光協会の「茶色い焼きそば食べ歩きマップ」によると、 こちら「藤や食堂」は、愛Bリーグ会員「石巻茶色い焼きそばアカデミー」の会長の店なのだ。 ということで、「特製焼きそば」をお願いします。
なにやら妙に忙し気な厨房のご様子。お時間掛かります、とのおねえさんのプチ困り顔にうんうんと頷いて、 麦酒グラスをちょこちょこ傾けつつ、待つことにします。
ややあって届いた「特製焼きそば」には、目玉焼きが中央に載り、たっぷりの紅生姜。焼きそばそのものは、妙な押しを思わせないシンプルな表情です。
目玉焼きの脇から引き出して啜る焼きそば。脂の甘さを思うツルンとした感触とあくまで柔らかな噛み応え、仄かな出汁の旨み。 それは勿論のノーモア・アルデンテ(笑)。
玉子の黄身を崩したりしながら1/3ほどいただいたら、 卓上のチューブを手にします。 ラベルにはキャラクターのちゃちゃ丸くんと石巻焼きそばソース、の文字。 こんなもんかなとソースを回しかけ、軽く和えて再び口へ運びます。うん、ソースをかける前の素朴さもソースをかけた後の素朴さも、 どちらにもなんだか和んでしまいます。 おねえさんのTシャツの背中には、 “石巻焼きそば、二度蒸し後がけソース”とプリントされている。 そうか、この麺は、二度蒸しているんだね。
石巻焼きそばの麺は、一度蒸し上げた麺を水で洗い、もう一度蒸し上げて作っている。 二度蒸しされることで、麺に含まれる「かんすい」が熱で変化し、茶色くなるのではというのが通説らしい。 麺を蒸したのは、まだ冷蔵庫が一般的でなかった昭和20年頃に常温保存するために工夫を施したことが起源という。 保存のため麺を蒸したことから生まれた伊那の「ローメン」のことが脳裏を過ります。
創業60年、石巻焼きそばアカデミー会長の店「藤や食堂(ふじやしょくどう)」。これからも「石巻焼きそば」を石巻のひとつの顔として、 少しずつでも石巻を活きいきとさせていってくれることでしょう。 渡波駅まで復旧なった石巻線に乗り込んで、仙台へと向かいます。
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「藤や食堂」 石巻市立町2-6-17 [Map] 0225-93-4645
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