
恵比寿以上にご無沙汰なのが、広尾〜天現寺界隈。
というか、振り返れば、ご無沙汰という程そもそもそんなに足を運んでいない。
思い出すレストランといえば、せいぜい「incanto」とか、山田シェフの「MARCHE AUX VINS」とか。
「ACCA」や「LA BISBOCCIA」なんて妙に懐かしい。
「エノテカ」二階のレストランはまだあるのかな。
移転前の「Aroma-fresca」にも一度潜入したっけ。
そんな広尾に久々に呼ばれたのはきっと、都内某所で行われたあの品評会がきっかけ。
日本オイスター協会内におかれた実行委員会が、実施にあたっての制約に苦慮し、
延期を経て開催した
「かき日本一決定戦」。
その審査委員長が、”牡蠣養殖の父”と呼ばれる宮城新昌さんの娘にして、
“おいしゅうございます”でも知られる料理研究家、岸朝子さん。
審査会でもそのチャーミングなところをみせてくれた岸さんの向かいに座っていたのが、
特別審査員の日高シェフなのだ。

日本一と評した牡蠣を日高シェフの手で、という展開ではないけれど、
そんな繋がりの上にある今宵のディナーで、「アクアパッツァ」の地階フロアは貸切です。
随分前に一度だけ訪れたことのある「アクアパッツァ」。

中央に階上の「ACQUAVINO」への吹き抜け部があって、
そのために凹形になっているのを思い出します。

ノンビンでも美味しいスプマンテ「corte di Cavour Brut」で乾杯。
そして、岩牡蠣「春香」を主題とした今宵限りのスペシャルコースを日高シェフが解説してくれる。


海士いわがき水産が提供してくれた「春香」は、
島根県・隠岐の島の海で育った、春先に採れる岩牡蠣。
一般に真牡蠣の時季が終わり、岩牡蠣にはまだ早いと思われているこの時期に万を時して出荷する、岩牡蠣の長所と真牡蠣の長所をいいとこ取りをしたような牡蠣だ。
「ジャック・ポット」佐藤さんの説明によると、
今季あたりから”ミミズリ”ではなく、”カイデライト”を用いる手法で垂下しているそう。
その「春香 Special Menu」の口開きは、
「海苔の衣で揚げた”春香”のゼッポレ ナポリ風」。

ナポリ名物という”ゼッポレ”とは、ピザ生地に海藻を練り込んで揚げた揚げ団子。
その中に細かく刻んだ春香が入ってる。
軽さがグラスの泡を軽快にしてくれます。
Antipastのふた品めは、「サッとしゃぶしゃぶにした”春香”海の香りのゼリーを添えて」。

昆布出汁と網焼きした海苔とで作ったゼリーに包むように浮かべた春香。
牡蠣の身にさらに磯の風味を掛け合わせる手法に思わずニンマリ。
底の方に仕込んだのは意外な展開のじゃが芋のピューレ。
なにより、生のままでなく、サッと湯掻いたところに磯風味の掛け算を美味しさに纏めたキモがありそう。
これぞ、素材を活かす「アクアパッツァ」らしい料理であります。
このあたりからワインが「Inycon Sicilian Fiano」に。
続いて、「”春香”のスフォルマート あおさ海苔のフリット添え」。

スフォルマートは、和食で云えば、茶碗蒸し。
春香をロボ・クープにかけ、裏漉しし、茶碗蒸しのベースに。
青海苔をフライにしたものをトッピング。
これが、旨い(笑)。
春香の滋味を真っ直ぐ上手に温かいペーストに仕立ててある。
そこへ海苔のパリッとした歯触りがいい合いの手を添えてくれています。
4皿目は、「”春香”と魚介のフリット ジェノヴァ風のクリームソースで」。



公魚、黍魚子、ほたる烏賊、そして春香のフライ。
六角形の容器に沸々と湧いた若草色のバジリコソース。
ジェノヴェーゼなソースはなんでも大好きなのだけど(笑)、このソースもこれまた旨い。
フリットした春香にたっぷりとソースを絡ませていただきます。
ああ、こんな取り合わせのパスタもいいかも。

意外やワインがロゼ「Cerasuolo d’Abruzzo Terre Casali lo」に。
Primoには、「”春香”とルーコラのスパゲッティー」。

粉をはたいて軽く揚げ焼きして旨みを閉じ込めた春香とルッコラと。
一転シンプルに春香を楽しむお皿になっている。
これもまた、「アクアパッツァ」らしい料理ともいえましょう。
そして、Secondには、「カダイフで巻いた”春香”のカリカリ焼き
ジャガ芋のピューレと菜の花のカリカリ揚げカレー風味」。

カダイフはご存知、
トルコなどで伝統的に使われている小麦粉でつくる細い麺状の衣。
日本の洋食的カキフライとはやっぱり違うアプローチ。
うんうん、こふいふカキフライもあっていい(笑)。
Dolceは、「果肉たっぷり甘夏のジュレとリコッタチーズのムース
ローズマリー風味のグラニテを添えて」。

甘夏の甘酸っぱさとリコッタチーズの柔らかなコク味とがよく似合う。
流石にデザートに春香は使っていないようです(笑)。
“春香のフーガ”と喩えたいコース料理のお皿たち。
きっとあれこれ思案したであろう日高シェフと、
“春香”を提供してくれた海士いわがき水産さんに感謝です。
1990年西麻布に生まれ、広尾で今を供する老舗イタリアン「アクアパッツァ」。

「ACQUA PAZZA」は、姉妹店「ACQUA VINO」の地階に潜んでる。
今度は陽射しが気持ちのいい頃に、
フロア真ん中の吹き抜けテラスでのんびりランチでもいただきとうございます(笑)。
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「ACQUA PAZZA」
渋谷区広尾5-17-10 EASTWEST B1F
[Map] 03-5447-5501
http://www.acquapazza.co.jp/
column/03259