都内から住処を移してからめっきり、恵比寿に足を向けることもほぼなくなった。なんと15年振りに、笠原さんの「賛否両論」にお邪魔したことを思い出すくらいで、多少寂しい感じがしなくもないものの、恵比寿界隈の妙にトンガッたお店への興味は、もうない。いや、もともと、そんなに、ない(^^)。
唯一、定期的に通っているのは、
1970年代後半から1980年代にかけて流行った、
DCブランドの流れを汲んだ某ブランドNICOLEの、
ガーデンプレイスで催されるファミリーセール。
実に昭和だねーと云うなかれ(^^)。
偶には、ショップにも顔ださなきゃと思いつつ、ね。
ピーク時を避けて臨んだセールでの物色を終えて、
恵比寿スカイウォークを急がず歩かず利用して、
東口改札前を通り過ぎて向かうは、恵比寿通り沿い。
駒沢通りとの恵比寿一丁目信号方向へ進み、
横断歩道を渡ったところで目に留まるのが、
シャッターボックスに書かれた、
めし処「こづち」という文字だ。
傷みのみられるスタンド看板越しに眺める、
壁のお品書きの風情が、いい。
独特の味わいのある白抜きの手書き文字。
その横には黒板に白墨の文字。
残念ながら「本日の日替定食」は完売みたいだ。
数人のお客さんたちと入れ替わる様に店の中へ。
入ってすぐのカウンターに居場所を得て、
壁に横一列に貼られたお品書きを改めて眺める。
どーれーにしようかなぁー。
やっぱり目移りしてしまうであります(^^)。
麦酒をとひと声掛ければ、
しっかりと冷えた赤星がやってくる。
うん、この雰囲気には、赤星が、いい。
赤星のお供となればやっぱりまずは、
「ポテトサラダ」でありましょうか。
滑らかなマッシュとゴロゴロとした部分との、
二段構えのポテサラにマヨネーズを惜しみなく。
ご飯との相性にピントを合わせたポテサラは、
麦酒のお相手にもいい塩梅なのですな。
厨房の大鍋の底の方からなにやら、
掬い上げてるなーと思ったらそれが「肉豆腐」。
煮汁の褐色をしっかりと纏った豆腐が唆る。
豚バラ肉も負けじと同じ色味に染まっていて、
うん、こりゃ、絶対に旨いヤツだ。
お品書き札の列の中に「やきハム」を見付ける。
「やきハム」って、やっぱりそりゃそのまんま、
ハムを焼いたヤツ?に違いあるまい。
でもね、なんだか妙に誘われるじゃんね。
届いたお皿はおよそ想像通りだったけど、
しっかり目に焼いた焼き目や縁取りがシズル。
キャベツと一緒にご飯にのっけて、
そこへマヨネーズをぶちゅっとして、
急くように掻き込みたい衝動にも駆られます(^^)。
勢いに乗じて、お酒をくださいと云えば、
それは勿論、コップ酒。
入ってすぐのカウンターからは、
厨房の様子が手に取る様に見渡せる。
お母さん!と呼びたい女性に、
フライパンや北京鍋のコンロ前ご担当、
そして、奥の肉豆腐大鍋前で差配する兄さんと、
そんな感じの陣容のようです。
待ってました!と思わず口遊んでしまったのは、
「アジフライ」到着時(^^)。
開いた鯵を一匹かと思いきや、
尾っぽがふたつあるのが判りますでしょうか。
揚げ物は醤油で、の通説(?)通り、
お醤油を軽く振ってかけて嚙り付く。
あ、フーフーするのを忘れてはいけません。
フライパンものからは「オムレツ」を。
ケチャップをチャチャッと広げ、箸を入れる。
中はそれなりのトロトロ具合で、いい。
洋物系のお皿には漏れなく、
キャベツの千切りが添えられてくることに、
漸く気が付いた。
マイマヨネーズを持参した方がよいかしらん(^^)。
およそ半年後の、同じセールからの帰り道。
ふたたび同じルートで恵比寿通りを渡ります。
入口で覗き込んで、人数を告げれば、
前回と同じ、入ってすぐのカウンター席へ。
この日もまずは赤星の大瓶をもらってから、
壁のお品書きの列を右から左へ左から右へと、
例によって、視線を彷徨わせる。
それがちょっと、なんだか愉しいぃんだ(^^)。
最初に届いたお皿は、
単品でとお願いした「唐揚げ定食」。
濃い目の揚げ色の通り、
周囲の芳ばしさがまず口腔に広がって、
すぐさま鶏肉のジューシーさと、
下味の風味がやってくる。
お品書きに肩書しているのは、
“手仕込み”と小さ目の字で。
せっせと大蒜、生姜などなどを含む、
調味液に揉み込んでいる光景が浮かんでくるね。
お皿が届いたところで、
あ、前回も「オムレツ」頼んだねと顔を見合わせる。
どうしても外せず註文んでしまうモノって、
不思議とあるもので(^^)。
定食物の単品註文も出来ると、
悪い知恵がついてしまった所為で、
お次のオーダーもまた単品での、
「肉ニラ炒め定食」。
決して炒め過ぎるようなことなく、
手慣れた所作でさっと手早く北京鍋を煽り、
シャッと流し入れた様子が伝わるお皿だ。
ちょっと汁ものが欲しくなったねと、
品書きをふたたび眺めて、
「とん汁」があるのを目ざとく見付けた。
煮詰まって濃くならないように気をつけたよな、
白味噌の風味豊かな豚汁に、ゆるゆるとする。
営業時間は、10時半から18時である模様。
でも、16時を回った頃には厨房で片付けが始まり、
やがて急速に閉店準備の気配に満ちてくる。
並びの止まり木はもう、畳まれてしまった。
我々もそろそろお愛想、いたしましょう。
恵比寿駅東口からの、恵比寿通り沿い。
恵比寿一丁目信号寄りに、めし処「こづち」は、ある。
「こづち」創業は、1957年のことであるらしい。
そうするとそろそろ70周年ということになる。
創業から今日に至るまでの間には、
駅そのものや駅ビル、駅周辺はもとより、
店の周囲の様子も大きく様変わりしたことでしょう。
そんな中で、昭和のままの佇まいを、
残してくれていることがなにより有難い。
今度は、完売する前に、日替定食をいただきたいけれど、
もしも間に合わなかったら、何にしようかな。
「牛バラ定食」か「肉生姜定食」あたり、かな(^^)。
「こづち」
東京都渋谷区恵比寿1-7-6 陸中ビルハイツ1F [Map]
03-3444-3763

