column/02877 @6,000-
京料理「修伯」で 鱧と冬瓜かますの柚庵あまだいと蕪むかごご飯
久し振りに八坂の塔への石畳をゆっくりと上がる。
例によって、なんちゃって舞妓さんが塔の前辺りで佇んでいるのをやや遠くに眺めながら、ゆっくりと。
塔に突き当たった処を左に行けば、「イル・ギオットーネ」だなぁと思い出しながら、のんびりと。
金剛寺の前からT字に折れる下河原通りという小路との角には、板塀で囲んだ日本家屋がある。
そこが、今日のお昼の目的地、京料理店の「修伯」だ。
白い暖簾を払い、格子戸を抜けると、その右手にある竃の羽釜が湯気を上げている。
おくどさんが迎える料理屋には、今まで出会ったことがなかったけれど、
風情のいいものですな。
白木のカウンターの中央へ通されて、ひとまずプレモルを所望する。
大振りな海老の殻を剥いたり、刺身のさくに包丁を入れる主人の所作が目の前で眺められて、それを肴にツツッと一杯。
5,000円のコースの最初の器は、栗やお麩、三度豆などを含んだ白和え。
後口のクリーミーさが印象的だ。
続くお椀は、鱧と冬瓜。やや濁りを思うも、しっかりとした旨味を伝える出汁にしみじみ。
ふんわりとした鱧の身と出汁をたっぷり含んだ冬瓜の身を交互にいただき、ぷちほっこり。
今度は、五つの小皿が並べられて、それは、天然鯛の昆布じめ、剣先烏賊のつくり、さわらのしゃぶしゃぶ、鯖の棒寿司、秋刀魚の肝醤油がけ。
熟成して甘くさえある鯛の身、細かい包丁が甘さを引き立てる烏賊の身、腸の香りが大人な秋刀魚の身。
それぞれをちょこっとずついただけるという訳だけど、雑然と小皿を並べられると、やや興が冷める感もある。
大きめの目の皿にゆったり離して配置して供する方がいいのじゃないのかな。
お次は、長皿の左にかますを柚庵で焼いたもの、右に万願寺甘唐、海老芋にフルーツトマト。かますの身がほろほろとしながら脂で解け、皮目の香ばしさと一緒に嬉しがらせる。
出汁あんのたっぷりかかっているのは、蕪とあまだいの蒸しあげ。あまだいの身の品のいい甘さに目を閉じて、その下のかぶの甘さにもまた目を閉じる。
あんを全部掬って食べちゃったのは、ちょっと下品だったでしょうか(笑)。
ここでご飯となって、それが入り口の竃で炊いてた、むかごご飯。
むかごの香りが微かにご飯にも移っている、ような気がします。
そして、デザート。
諳んじた内容を辿るように、七つほどのデザートの説明をしてくれ、そこからいくつでも選んでいいと云う。
思わず、「あ、賛否両論と一緒ですね」と云いそうになって、ここが京都だったことを思い出して、云い噤む(笑)。
お、選択肢の中にパフェがある!
ってことで、ここでまたまた急遽、「パフェラッチ!」。「桃のパフェ」は、下層にタピオカ、中層に刻んだ桃、
上層に生クリームとバニラアイスのトッピング。
桃の澄んだ甘さとむにっとしたタピオカの取り合わせは、なかなかどうして悪くない。
天火で炙った紅芋饅頭は、薄皮の中にたっぷりの粒あん。甘さをおさえたあんの深いコクが口腔でむむっと花開いて、さっと消えるのだ。
八坂の塔を眼前に臨む、京料理「修伯」。フレンチの経験を下地に持つという主の吉田修久さんは今、白木のカウンターの中にある。
ひとつひとつのお皿に、特別遜色があるという訳ではないのだけれど、全体の印象として、どこかちぐはぐというか、完成度がもう一歩緩いというか。
そんな気がする。
それは、ささやかでも、くっと引き込まれるような感動を期待しているからのことでもある。
そんな印象を抱かせるのは、まだ若い主人のフレンチの経験が京料理の中で昇華する途上でのことなのでしょうか。
口関連記事:
RISTORANTE「IL GHIOTTONE」京都で お肉たちやわらか煮(08年06月)
日本料理「賛否両論」 でめくるめくおまかせにデザート全部(07年02月)
「修伯」 京都市東山区下河原通高台寺塔之前上ル金園町392 [Map] 075-551-2711