羽田の沖合へと流れる多摩川が大きく右に蛇行する辺り。
大田区の”ヘソ”のように川崎側へと出っ張った辺りに、第一京浜と並行して走る京浜急行の雑色駅はある。
雑色駅周辺の仲六郷とか南六郷といった町名には聞き覚えがあるものの、
“六郷”を名乗る六郷土手駅は雑色駅のもうひとつ先、
駅名そのまんまの多摩川っ縁、六郷土手に接してある。
するってぇと「雑色」という駅名は、
一体全体どこから来たのだろう。
そんなことを考えながら、
雑色商店街通りのアーケードを往く。
雑色駅の駅名の由来はどうやら、
開業当時の地名である雑色村にある。
鎌倉時代、宮中の雑役の役目をしていた者達が、
多く住んでいた村の名だったが、
明治の末頃六郷村に編入され、
現在は駅名にその名を残すのみとなっている、
ということらしい。
へー、そうなのか(^^)。
アーケードを抜けて、真っすぐ進むと、
JRの線路を渡る踏切に突き当たる。
東海道線(上野東京ライン)、
そして京浜東北線が敷設される踏切は、
ここでも”雑色”の名を残す雑色踏切だ。
踏切長20m弱の踏切の向こう側。
そこに宍道湖しじみ中華蕎麦「琥珀」の、
白い暖簾が揺れていました。
予約の名を告げて、腰掛けたのは、
たった5席のカウンター席のひとつ。
湘南色的帯色が通り過ぎるのが、
硝子越しに見えたりするそんな席。
カウンター越しの厨房の正面には、
筆書きにデザインされた”蜆”の文字が、
大きく染め抜かれた暖簾が掛かる。
券売機に掲示されていた黒板メニュー。
几帳面さや誠実さを思わせる端正な文字が、
その日の蜆の産地地区や漁師の名を知らせてる。
ぐるっと三周くらい迷ってから(^^)、
「宍道湖しじみ<特製>中華蕎麦」の塩を選ぶ。
真っ直ぐに澄んだスープにはきっと、
蜆から抽出された出汁がふんだんに、
濁りないまま含まれているであろうことが、
見た目からもう想像できる。
どれどれと蓮華の先をスープに挿し込んで、
そっと啜り込み、味わう。
なははははー、と脳内歓喜。
想像通りの滋味深さが、
加減のよい温度感とともに身体に滲みる。
“特製”には3種のチャーシューに、
肉ワンタン1つと味玉がトッピング。
何某かの低温調理の賜物か、
旨味たっぷりながらしっとりとして、
蜆のスープの邪魔せずによき友となる、
そんなチャーシューだ。
繊細なる塩のスープには、
パツパツ系のストレート細麺が名コンビ。
醤油スープには手もみ麺の選択肢があるけれど、
塩スープには細麺のみとなっているのも、
至極当然、さもありなんであります。
裏を返すようにふたたび、
雑色踏切の向こう側へとお邪魔して、
今度は醤油の「<特製>中華蕎麦」。
醤油ダレによって輪郭の深まったスープ。
浮かんだ油もまたコクと香りに一役かっている。
うんうん、やっぱり、醤油もいいね。
トッピングに芽葱を使うセンスも悪くない。
塩では刻み玉葱だった薬味が、
醤油では長葱になっている。
味玉の中は勿論、とろんとした半熟であります。
そして、麺はと云えば、手もみ麺。
ピロピロッと口元を滑っては、
小麦の風味をしっかり感じさせる。
醤油にはこの麺がよく似合うし、
でも確かに細麺もきっと、いい。
京急雑色駅から商店街を真っすぐ抜けた、
JRの雑色踏切の目の前に、
宍道湖しじみ中華蕎麦「琥珀」東京本店は、ある。
店名の「琥珀」の由来はどうやら、
蜆などの貝類が持つ旨み成分であるところの、
コハク酸の”コハク”であるらしい。
塩のスープを見れば、それもまた琥珀色。
きっとそんな意味合いもあるのではあるまいか。
今はTableCheckでの予約で通い易くなった。
北池袋の裏道にも店舗があるようです。
「琥珀」東京本店
東京都大田区西六郷2-1-3 [Map]
03-6690-0893
https://www.instagram.com/ramenkohaku/