
今年は、「鯔背や」で一杯呑った足で極近所の川縁の桜の古木の並木沿いを漫ろに歩いたり、自衛隊入間基地隣接の桜咲く稲荷山公園を初めて訪れたりした。
やがて桜は桜でも、
芝桜の開花状況の知らせが届くようになる。
ずっと気にはなっていたのが、羊山公園。
天気の良い日を選んで、
特急ラビューに乗り込みました。
西武秩父駅からのんびりとなだらかな坂道を往く。
えっちらおっちらと最後のアプローチを登り切り、
公園内に入場するとすぐに視界が開けた。
丘の上の中央が谷合いのように、
広く両側から斜面を形成していて、
そこ一面に幾つもの色合いの芝桜が咲いている。
園内に10種類ほどの芝桜があるという。
ということは、ピンク色にも幾つものピンクがあり、
白にも紫にも違うものがあるのかもしれない。
それらの色のグラデーションが成る程の壮観だ。
こうして斜面を彩る芝桜のデザインは、
秩父市の職員がレイアウトしたものだそうで、
イメージしているのは、
ユネスコ無形文化遺産に登録の「秩父夜祭」の、
山車に乗った囃子手の”襦袢模様”だという。
芝桜の斜面の背景には、武甲山のシルエット。
うんうん、穏やかな春の陽射しの中で、
心地よく、いいものを見ることが出来た。
羊山公園からの帰路はタクシーを拾って、
秩父鉄道の御花畑駅近くへ。
有名店「珍達そば」の前には案の定の行列。
10名ほどが待つその列の最後尾に着いて、
その先を見遣れば、そこにはやはり武甲山。
側面がピラミッドのそれのように、
階段状になっているのが、肉眼でもよく判る。
石灰岩の採掘が盛んに行われているようで、
旧い山頂は既に失われていて、
山容もどんどん変化し続けている模様。
近くにセメント工場があるのが頷けます。
割りとテンポよく行列は進んで、
テーブル席やカウンターを横目に、
奥にある座敷へとご案内。
よっこらしょと座卓のひとつに腰を下せば、
なんだか田舎のお祖母ちゃん家に来たような、
そんな気分もいたします(^^)。
そして間もなくやってきた、
チャーシュートッピングの「珍達そば」。
相棒は、「珍達そば」基本形だ。
どれどれとまずは、蓮華でスープを掬う。
すると、短めに斜め切りした葱が、
蓮華の中へと入り込んでくる。
そのまま葱とともにスープを味わえば、
屋台の中華そばに思い描くような、
懐かしくも優しい味わいの中に、
フレッシュな葱の香気と甘さが弾ける。
珍達そばの特徴を体現する葱は、
埼玉県北部で生産される「土男ネギ」。
深谷葱なら知っていたけれど、
そんなブランド葱もあるのだね。
ほんのりと香る胡麻油の加減にも感心しつつ、
脂の按配も悪くないバラの煮豚を頬張る。
ちなみに、メニューにある「チャーシューメン」は、
チャーシューをトッピングした珍達そばとは、
異なるどんぶりなんだそう。
なんだかそっちも気になるじゃんね(^^)。
珍達そばの麺はと云えば、
これまた屋台の中華そばに連想するような細麺。
ただ、そのツルツル具合は想像以上で、
スープ、葱、煮豚と抜群の親和性を持つ。
年嵩を重ねると特に、
こふいふ中華そばが欲しくなるのだ。
ふたりで分けようと「黒豚餃子」を添える。
鹿児島県産の黒豚を使っているという餃子もまた、
強過ぎる味や角もなく、でもすっと一本の芯があり、
珍達そばのとそれと同じベクトルの優しい味わいだ。
西武秩父駅も至近な秩父鉄道御花畑駅を背にした、
秩父市役所向かい側の団子坂脇に、
秩父名物支那そば「珍達そば」は、ある。
Webサイトによると、
「珍達そば」団子坂店の創業は、
1966年(昭和41年)頃とされている。
現店主の祖父の師匠が始めたというから、
今は三代目が担っているということになる。
きっとことの始まりは屋台だったのではないかと、
そう思えて仕方ないけれど、その辺りは判らない。
そして、”団子坂店”とされているからにきっと、
“本店であった店”があったであろううことも、
想像に難くないものの、その辺りも判らない。
そしてそして、袖看板にある、
“関東甲信越で有名な”という、
少し不思議なショルダーフレーズも気に掛かる。
「チャーシューメン」をいただきにまた伺って、
素朴な疑問について訊いてみたいけれど、
きっとまた行列に忙しくされている、ね。
「珍達そば」団子坂店
埼玉県秩父市東町23-4 [Map]
0494-22-1571
https://www.chintatsusoba.jp/