新中華レストラン「moto」で魚翅脆皮蟹佐賀牛花生8年景徳鎮平和台球場跡近く

如何にもシニアっぽくて少し決まりが悪いものの、ふと、”一の宮巡拝”をはじめようと思い立った。
好きなアーティストのライブを聴きに行くことを旅の理由のひとつにしつつ、序でと云ってはなんだけれど、その土地の一の宮を巡って参拝しようと「諸国一の宮御朱印帳」も手に入れた。
あらかじめ全国の一の宮の名が各ページに印刷されていて、
和紙を糸で和綴じしており、大判のB5判で厚みもたっぷりの、
立派な御朱印帳だ。
少々大き過ぎるきらいがあるのが、
旅のお供には難と云えば難か(^^)。

ことはじめに訪ねたのは、
筑前国の一の宮のひとつ、筥崎宮。
地下鉄の箱崎宮前駅から出て参道へ向かい、
二の鳥居を潜ったあたりで、
一の鳥居あたりが妙に騒がしいのに気が付いた。
大型の観光バスが何台も停まっており、
その周りにひと集りがある。

神社前にしては異様な光景だと訝りつつ近づく。
そこで「HAWKS」と示すロゴが目に留まった。
あ!えー、うそー(^^)。
なんとあの憎き強敵福岡ソフトバンクの、
必勝祈願の催しに出会してしまったのだ。

人垣を掻き分けるように境内に進むも、
ちょうど選手たちが移動するタイミングに重なり、
走り出すひと多数で周囲は大混乱。
新人で入団以来世話になった上に、
強制性交等の疑いで書類送検され、
ライオンズやそのファンに大迷惑をかけ、
大顰蹙を買った挙句、
翌シーズンに大活躍することもなく、
ライバル球団へ移籍するという、
愚行を果たした山川穂高の姿が目に留まる。
大声張って「裏切者ー!」と叫んでやろかと、
一瞬思うも、ホークスファンのド真ん中で、
それはないだろうと自重する(^^)。

思えば、ライオンズも嘗て西鉄時代には、
ここ筥崎宮に必勝祈願に来ていたに違いないと、
そう思い直して参拝の列に並ぶ。 筥崎宮は、筥崎八幡宮とも称して、
日本三大八幡宮のひとつに数えられる。
楼門には「敵国降伏」の扁額。
元寇、蒙古襲来のおりに、俗に云う神風が吹いて、
未曾有の困難に打ち勝ったことから、
厄除・勝運の神としても有名、とされている。
成る程、その勝ち運に肖ろうという訳だ。

貧打に泣くライオンズにも勝機をと、
そこのあたりもお願いし(^^)、
御朱印をいただいて、二の鳥居を潜り戻る。

ふたたび地下鉄に乗り、
その足で向かったのは、赤坂駅。
赤坂駅からは、今はなき「さきと」へと、
何度か伺ったことを想い出す。

明治通りを「さきと」とは反対方向へと歩くと、
平和台と標示のある交叉点に差し掛かる。
なんだか聞き覚えのある地名だよね。 お濠端にとあるプレートを見付けて覗き込む。
そこには銅製の野球場のミニチュア。
1997年(H09年)に閉場するまで、
此処に平和台球場があり、
所沢に移転する1978年(S53年)まで、
ライオンズの本拠地だったのだ。

不思議な感慨に包まれつつ、
平和台の信号を渡り昭和通り方向へ。
昭和通りの平和台通り交叉点を、
さらに渡ったところがこの日のランチ処。 右手にいい感じの天婦羅店。
左手にイタリアンらしき店舗に挟まれて、
きっと竣工からたっぷり時間が過ぎている、
けれど、外装を綺麗に塗装し直した、
そんな装いのファサードが迎えてくれる。
美容室ですと云われてもすぐに頷く感じだね。

予約制と示すパネルを横目に、
フローリング材を貼り込んだようなドアを開ける。 店内は既にほぼ満席で、
入って右手にある個室へと案内いただいた。

ランチのコースに添えるように、
「興南花彫8年景徳鎮」を選び、
季節柄温めてもらうことにする。
燗を入れた紹興酒と云えば思い出すのが、
学生からの入社の直前に会社の役員から、
今はなき茅場町の「椿山酒家」に誘われ、
瓶ごと温めた紹興酒にザラメを入れて呑む、
という驚きの初体験場面。
当時の紹興酒はそうでもしないと飲めなかった、
のかなぁ(^^)。

「大寒」と題したコースの口開きは、
前菜の盛り合わせ。 手前にポジションしているのが、
水烏賊の葱ソースにキビナゴの黒胡椒揚げ、
シラサエビのスイートチリソース。
キビナゴがじわじわっと辛い。
辛さが時間差でやってくる。

深めの硝子器にあるのが、
クラゲの冷菜とホタル烏賊の紹興酒漬け。
硝子の平皿には、ヨコワのお刺身。 ヨコワはここではきっと、
クロマグロの幼魚のこと指すンだね。
濃いぃ味を控えつつピントが合っていて、
昼下がりの紹興酒にもよく似合う。
クラゲってよく千切り状になっているけど、
こうしてシート状で柔らかくいただけるって、
なんか、いいねぇ。

お品書きのお次には、「魚翅」とある。
これってたしか、鱶鰭のことだよなーと、
話しているところに熱々の土鍋がやってきた。 鱶鰭をズワイ蟹と一緒にぐつッと煮込んである。
ふーふーふー。
うんうん、美味しい美味しい。

下地のスープがまず旨いんだな。
オイスターソースも使っている様子だけれど、
その塩梅もいい感じ。 こうしてみると、姿煮である必要はないとも思える。
何処の何方が一番最初に、
鱶鰭をこうして食べようとしたのだろうね(^^)。

お次のメニューは「脆皮蟹」。
そのまま読んだら脆い皮の蟹、だよね。 厨房方面から豪快な揚げ音が聞こえた後、
ソフトシェルクラブの姿揚げが、来た!
これはこれは、見ようによっては、
タランチュラの姿揚げ(^^)。
でろんとかかったスイートチリソースの赤味も、
なんだか、おどろおどろしい!?

易々と箸で千切った身を、
どれどれと、そーっと齧り付く。 片栗粉を纏わせ揚げた様子が思い浮かぶ。
おー、いいね、美味しいね。
うん、辛過ぎないチリソースがよく似合う。

お次のメニューのタイトルは「佐賀牛」。
すると、口を括った透明なフィルムの、
包みを載せたお皿がやってくる。 包んで焼いているとのことなので、
耐熱のフィルムってことなのだね。

そう話しながらフィルムを解き開くと、
ふわーっといい匂いが立ち昇る。
佐賀牛のお供は、冬野菜たち。
蓮根にカリフラワーに芽キャベツに赤蕪、
お芋の種類はなんだろう。
佐賀牛は勿論のこと、野菜たちにも、
ソースがぐっと沁みていて、いい。

さらにお次のお題は「花生」。
何だろうと思っているところに届いたのは、
なんと、担々麺、だ。 成る程、花生はつまりは、落花生。
よってピーナツバターを使った担々麺、
という解になる(^^)。
胡麻ペーストも含むけど、
メインは、ピーナッツバターだという。
過ぎない濃密なスープに、
やや縮れの細めの麺の相性やよし。

コースの仕上げは、苺で飾った杏仁豆腐。 バニラビーンズの入った杏仁豆腐が、
ココナッツミルクの海に潜んでる。
苺は、佐賀ほのか。
杏仁粉の風味がしっかりとあって、
それが苺の甘味・酸味といいコンビだ。

福岡は、嘗て球場があった平和台交叉点から、
昭和通りを渡ってすぐの右手に、
チャイニーズレストラン「moto」は、ある。 シェフのお名前が、作元哲也。
苗字の”元”をとって「moto」としたと云う。
綽名では「サク!」と呼ばれているものの、
それではなんだなーと、
その下の”モト”から「moto」としたそう。
お店の正式な肩書、ショルダーフレーズは、
“New Chinese Innovative Style Restaurant”。
お品書きの最後のページには、
シェフのお名前とともに「不易流行」との文字。
いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、
新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。
不易流行の精神のもと、地元九州のテロワール、
九州の薫りや素材感を大切に考え、
カテゴリーや先入観にとらわれない料理に挑戦する、
そう宣言する作元シェフのお皿たちに会いに、
今度は、夜の部にも訪ねてみたい。

「moto」
福岡県福岡市中央区舞鶴3-2−18 [Map]
092-600-0780
https://moto-maizuru.com/

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