
東芝の敷地内にある海芝公園から愛でた、煌く海辺の景色が脳裏に鮮明で。
鶴見川の向こう側、沖縄区と呼ばれる界隈の、うちなーすば「ヤージ小」のドンブリも美味かった。
そんな記憶を抱きつつ、陽が落ちた鶴見線のある駅のホームにいました。
鶴見駅を出たレールが、鶴見川を渡らんと、
大きくカーブを描いたところに置かれたホーム。
降りるひとも電車に乗り込むひとも疎らな駅は、
その名も「国道駅」。
改札口へと階段を下って、反対側への通路を進むと、
そこから更に下の通路が見下ろせる。
何気に視線を降ろしたら早速、
お目当てのお店が突然視界に飛び込んできました。
鶴見線の所属駅はすべて無人駅。
それ故、何処も改札口付近には、
出場と入場をそれぞれチェックする、
Suicaの改札機が設置されています。
やや薄暗がりの通路を改札口から右へ出ると、
国道を渡る横断歩道に出る。
成る程、JR鶴見線の国道駅は、
国道15号(第一京浜)をガードで渡った、
すぐ際にあるのです。
そして、逆方向に通路を抜けたところにある、
跨道橋を潜る道が、旧京濱國道、
つまりは明治時代の「1號國道」であるようです。
阪神の今津線にも阪神国道駅というのがあるらしい。
確かに国道の脇にある駅は、
全国あちこちにあるだろうけど、
トラック行き交う産業道路っぽい道路のガード下に、
ぽっかりと入口を空けた此処にこそ、
古き1号国道の沿道にあり続ける此処にこそ、
この名が相応しいように思えてきます。
国道駅は昭和5年の開業以来、
これといった改築がなされていないという。
ふたたび戻った通路はやっぱり、
昭和の匂いが色濃く漂ってる。
まるで、ラーメン博物館を設えたのと、
同じチームが作り込んだセットのよう。
「三宝住宅社」の看板が実に味がある。
中に灯りが点っているのだけれど、
もしかして現役なのかしらん。
そして、その向かいには、
白雪提供、お酒とお食事「とみや」の看板。
こちらはどうやら、とても残念ながら、
既に閉めてしまっているようだけど、
看板の下で今にも朽ちようとしている、
そんな佇まいに昭和の残り香を思います。
通路をさらに奥へと戻ると改めて、
灯りを点した看板がささやかに誘ってくる。
ただ、店を前にしてみると、
余りに出来過ぎた雰囲気に気圧されて、
少々たじろぐ(^^)。
意を決して、暖簾に顔を突っ込んで、
空席を訊ねましょう。
カウンター席は一杯で、
その背後に置かれた小さなテーブルの丸椅子に、
居場所を得ました。
瓶の麦酒をと女将さんに所望すると、
手渡されたのは、キリンラガーの瓶とコップ。
こふいふ雰囲気には、此奴が一番似合うね。
女将さんを通じて焼き台前に立つオヤジさんに、
通った注文は、焼き鳥の盛り合わせ。
大皿に仕込んであった串がもうすぐなくなりそうな、
そんなタイミングで何とか焼き鳥の串にありつけた。
タレの甘さが印象的。
そのためか、辛味味噌が添えてあるのかもしれません。
カウンターのお客様のおひとりが、
仲間がやってきたということで、
外で呑むよとカウンターを離れたので、
その後釜にと移ります。
いままで座っていた丸椅子辺りを振り返ると、
このスペースが都橋商店街「ホッピー仙人」では、
ダークダックス的立ち飲みスペースになってるんだね、
なんて思ったりいたします(^^)。
お願いしていた「ポテトサラダ」が丁度目の前に。
それぞれの具材がごろごろっとしながら、
全体がしっとりジャガイモに包まれている、
そんな感じの仕立てでございます。
奥の壁の隙間に押し込めるように貼られた、
変形黒板がお品書き。
斜めの天井が階段下のそれだとすると、
此処に二階があるのでしょうか。
「もつ野菜煮」は、さらっとした味噌仕立て。
野菜から滲んだ甘さも含んでいるようで、
野菜も一緒に炊いちゃえっていう、
ちょっとしたアイデアがいいね。
正面の棚をみるとそこには、
近頃珍しいダルマのボトルも並んでる。
こんな処にも昭和にタイムスリップしたような、
懐かしき気分にさせるアイテムが潜んでいます。
「ダメよ~ダメダメ未亡人朱美ちゃん」なーんて、
名書きしたダルマも見付かります(^^)。
亀甲柄のジョッキを見つけて、ハイボール。
あ、角でなく、オールドでハイボールに、
してもらえばよかったな。
お隣さんの注文の真似をして「サンマさし」。
脂ノリノリで蕩ける美味さに間違いはありません。
戦前のまんまの国道という名の駅の下に、
昭和のまんまの居酒屋、
その名も「国道下」がある。
カウンターで行き交う話題は、
実に地元色の濃いぃもの。
東芝や旭硝子、富士電機の事業所へと通う、
そんなひと達がそこに混じって、
日毎賑わっている様子を想像したりしつつ、
振り返りつつ、ホームへと上がりましょう。
「国道下」
横浜市鶴見区生麦5-12-14 [Map]
045-503-1078