旬の菜と旨い酒「おおはま」で飛魚細造り玉蜀黍掻揚げ鯵油揚定番焼売鎌倉に泊まる訳

時々思い出したかのように訪ねたくなる街のひとつが、ご存じ鎌倉。
決して近場ではないにもかかわらず、そんな観点からは随分と色々なお店や場所を訪れたような気がする。
今回鎌倉にお邪魔したのは、
梅雨入り間近の頃のこと。
空は清々しく晴れて、じわじわと暑さを感じる、
そんな日のことでした。

まず足を運んだのは、
庭園の竹林でもその名を知られた功臣山 報国寺。 朝比奈町へと抜ける金沢街道が、
滑川と並行する辺りで、
狭き谷戸の筋を上がる先に山門が見えてきました。

「竹の寺」とも呼ばれる報国寺の山門を潜り、
整えられた参道の両脇の庭木や苔の緑を愛でる。
右手の石段の上には、緑の紅葉が沢山の掌を広げる。 そして、参拝の後に歩みを進めた先には、
ゆるやかな傾斜地に広がる庭園の竹林。
思わず頭上を見上げて、
じーっと佇んでしまいます。

宿に愛車を停め、その足で向かったのは、
云わずと知れた、
鎌倉の町の中心のひとつ鶴岡八幡宮。
二の鳥居から段葛に上がり、
両脇の桜の木の葉の木陰に沿うように参道を往く。
変わらない様子の「段葛 こ寿々」の店先を眺めつつ、
のんびりと三の鳥居へと向かいます。

こうして三の鳥居に正対するのは、
なんだかお久し振りの気がする。 黄色い帽子の園児たちが取り囲む太鼓橋越しに、
舞殿の屋根、そして本宮の楼門を望む。

舞殿の脇を抜け、
銀杏の木の様子を眺めつつ、
えっちらおっちら大階段を登れば、
一段上がる毎に本宮の楼門が迫ってくる。
額にはご存じ、神聖な神の使いとされる、
二羽の鳩で表現された「八」の字がみえる。 参拝を済ませ、御朱印をいただくべく、
中から楼門を出た大階段の上からは、
舞殿越しに、三の鳥居、二の鳥居の笠木、
そして由比ガ浜方向へと真っすぐ伸びる、
若宮大路の気配が望める。

相模国一宮、鶴岡八幡宮の御朱印も、
「諸国一の宮御朱印帳」の一頁にいただいて、
二の鳥居前の宿へとひとまず戻る。

そして、開店を待ちわびるように出掛けたのが、
若宮大路のレンバイ前を過ぎ、ガードを潜り、
その先の下馬の交叉点を右折した大町大路沿い。 そう、かれこれもう5度目のお邪魔となる、
ご存じ「おおはま」だ。

この日の指定席は、
L字カウンターのちょうど角辺り。 木製引き戸の硝子越しに外を見遣れば、
漸く日の翳り出した通りを行き交う人達。
戸の脇の棚には、書籍の背表紙が見える。
「鎌倉おおはま つまみ虎の巻」は勿論持っていて、
時々お世話になっているんだ(^^)。

エビスの生中を所望して、
この日のお通し、もずく酢の小皿を受け取る。 肌理の細かい泡の麦酒が、実に旨い。
何気ないけれどきっと、
サーバーの流路の洗浄は勿論のこと、
ビールをサーブするところにも心を砕いてる、
そう思わせるところもまた、
「おおはま」の魅力の一端に違いない。

さて、「おおはま」の品書きと云えば、
この日も100行越えの盛り沢山ラインナップ。
ジャンル分けをしてくれてはいるものの、
一々気になる品書きの連続で、目移り必至。
じっくりと読み上げているだけで、
一杯や二杯呑めてしまいそうで、困る(^^)。

<お野菜>の項からまずは、
「桜海老入りしっとり鶏おから」。 桜海老の風味がふいんと利いていて、
要所々々で鶏の旨味が顔を出す。
そして、全体像はまさにしっとり。
仕入れたお野菜の幾つかは、
近所のレンバイでのものです、
なんて場合もあるのでしょうね。

<お魚>の項からは、
「飛び魚の刺身 細づくり(地物)」。 場合によっては愛想のない感じのものもある、
どことなくさっぱりとした印象の飛び魚も、
脂がしっかりちゃんとあって、
美味しいめちゃ美味しい。

ここで、焼酎にしようと品書きを見る。 選んだのは、鹿児島・佐多宗二商店の「不二才」。
「不二才」と書いて、「ぶにせ」と読む。
焼き芋の香りのような風味がまろやかにする。
「晴耕雨読」と同じ蒸溜所と知った。

“いかとバター醤油”というフレーズに惹かれて、
<お魚>からもう一品選んだのが、
「やりいかと野菜のバター醤油炒め」。 筒切りの烏賊に輪切りの蓮根、ブロッコリーに、
スナップエンドウという取り合わせ。
あっさりめの仕立てにしてもなお、
いかとバター醤油という組み合わせは、
やっぱりズルい(^^)。

なるべくまとめてご注文ください!の、
<揚げ物>から選んだのは、
「ちくわと生青のりの磯部揚げ」。 青海苔の風味が想像以上にぶわわと広がり、
いいね、美味いね美味しいねと頷き合う。
竹輪そのものが美味しい上に、
揚げ立ての魅力がそっと炸裂するんだ。

芋「不二才」がちょい気に入って、
お代わりを今度は、ロックでいただく。 「おおはま」さんで日本酒へいっちゃうと、
何故だかぐいぐい呑んでしまいそうで、
そんなヘンテコな危惧から焼酎にいくことが、
実は多いのであります(^^)。

<お肉>の項からは、
「豚ロースのウイスキーバターソテー」。 何故って、”ウイスキーバター”ってなんだろ、
なんてところの興味もあって。
大濱さんにウイスキーバターのウイスキーって?、
て訊くや否や、そこへ被せるように、
「角ー!」って答えをいただく(^^)。
うんうん、ウイスキーの、いや角の風味がする。
バターソテーにウイスキーを足しちゃおうって、
面白い発想だよねっ。

ああ、鯵を捌いているなーと思ったら、
ガスコンロの上の鍋に火が点っていた。 その鍋の使い込み具合が実に素敵。
びっしりと均一に焦げの被膜が覆ってる。
ここまで大事に育てるのは、
なかなかの鍛錬が必要だったでしょう。

ということで、<揚げ物>の項からの、
「アジフライ タルタル添え」がやってきた。 タルタルのたっぷり具合がまず嬉しい。
タルタルを十分にフライに載せ、
火傷しないようにそーっと齧れば、
はふほふ、はふほふ。
ひゃー、美味い。
フライそのものはとっても軽やかで、
パン粉の目の均一さが麗しい。
火入れされ脱水されて凝集した鯵の旨味が、
タルタルに惹き立てられて、炸裂する。
いやー、旨いねー。

ここからは、
ちょうど一年程前の「おおはま」を反芻してみたい。 店を入ると左手に奥へと長めの厨房があり、
そこに寄り添うようにL字のカウンターがあり、
どん突きの奥にテーブル席がある「おおはま」。
この日も入口近くの席でありました。
椅子に腰掛けるや否や、大濱さんが、
今日からエアレジにしてみましたー、と仰る。
おおお、「おおはま」にもその日が来たかと、
感慨を覚えつつ、注文取りとその管理だけでも、
大変だものなーと腕を組んだ、うんうん(^^)。

この日のお通しは、
「小松菜と新生姜と茗荷のお浸し」。 このお題は、前出の大濱さんのレシピ集、
「鎌倉おおはま つまみ虎の巻」の小鉢の項にも、
掲載されているひと品だ。
口に含んでそっと目を閉じれば、
小松菜の、新生姜の、そして茗荷の香りが、
すっと脳内を駆け巡るンだ。

そしてまずは<お野菜>から、
「冷やし焼きトマト」。 焼いて、皮を剥いてそして、冷やして。
しっかりと冷えたトマトから焼いて凝集したよな、
甘さと滴る香気がじゅじゅっと迫る。
大蒜チップの匂いが妙に似合って、
突然にイタリアンの気配のする。

もういっちょ<お野菜>から、
「空豆と海老と焼き椎茸の白和え」。 季節々々の白和えも「おおはま」での、
好みの小鉢のひとつに間違いない。
でも、品書きにある幾多の誘惑を払い除け、
この註文を決めるまでに決断を要した。
どれにしようかの註文選びの深い悩みは(^^)、
定番の「ポテトサラダ」から始まり、
冒頭の<お野菜>のカテゴリーで既に、
千々に乱れるのが常なのであります。

恒例のように大濱さんから、
シューマイご所望の方はお知らせくださーい、と、
声が掛かれば手を挙げるなりすればいい。 きっと全員分を一気に蒸し上げた「シューマイ」。
それが湯気を上げ乍ら手許に届く。
ほろほろと肉々しくて、加減よくジューシーで。
素直な旨味が直截に味蕾に伝わってくる。
これも「鎌倉おおはま つまみ虎の巻」にも載る、
定番中の定番のひとつの大人気な逸品だ。

<揚げ物>で毎度々々註文したくなるのが、
「とうもろこしのかき揚げ」だ。 ズルいじゃん、ウマいに決まってるじゃん。
そう思いつつも十中八九食指が動く。
そして、この日は”初物”と冠詞まで付いていた。
揚げ立てをこれまたそっと齧れば、
想定以上に弾ける玉蜀黍の甘さ甘さ甘さ。
やっぱり、ズルい(^^)。

「とうもろこしのかき揚げ」と同時に、
註文していたのが「あじなめろう大葉の包み揚げ」。 鯵の切り身そのままではなくて、
叩いて味を添えたなめろうにして、
それをどう考えても相性抜群の大葉で包む、
なんて小さく喝采を叫んでも、いい(^^)。

ここでふたたび<お野菜>に戻って、
気になっていた品書きのひとつをお願いする。 それは「ビシソワーズ(新じゃが芋と新玉葱)」。
新じゃがも新たまもきっと、
春から初夏にかけての時季の旬のもの。
旬のふたつを掛け合わせりゃ、
ビシソワーズ出来るやん!と、
大濱さんが呟いたかどうかは知らないけれど(^^)、
澄んだ旨味の水平線にそれぞれの香りがあって、
いやはややるなー、の逸品でございました。

ここからは、3年半ほど前の想いでを少し。
11月の或る日はカウンターの一番奥の席へ。
この日もやっぱり焼酎へと寄っていたようで、
まずは、伊佐・大山酒造の「伊佐大泉」。 そして、八千代伝の「熟柿」。
あ、この日も「不二才」をいただいているね(^^)。
この日もっとも印象的だったのが、
「揚げじゃがの酒盗がけ」。
揚げ立てじゃが芋と酒盗の塩っ気個性の掛け算。
芋の焼酎に、めっちゃ合ってたんだもん。

はー、大満足ー、ご馳走さまーと告げて、
「おおはま」の暖簾、いや引き戸を後ろ手にする。 レールが軋む音に右手を振り向けば、
ちょうど通り掛った江ノ電がゆっくりと、
和田塚4号踏切を行き過ぎる。
そうだそうだ、鎌倉に居たのだった。
ゆっくりし過ぎて、ちょと忘れてたみたい(^^)。

鎌倉のレンバイの程近く。
若宮大路から右折した大町大路沿いに、
旬の菜と旨い酒「おおはま」は、ある。 大濵さんの「おおはま」で吞むために、
鎌倉に泊まったことが数度ある。
帰ろうと思えば勿論帰れるのだけれど、
ゆったりと余韻に浸るのもいいのじゃないかと。
残念乍らお邪魔することのなかった、
阿佐ヶ谷時代の「おおはま」はどんなだったのかな、
なんて思ったりもする。
そんな旬の菜と旨い酒「おおはま」は、
更なる新天地での活動に向けて、
この7月で鎌倉のお店を閉じるようです。
逗子と聞く新拠点にもお邪魔する機会が、
あればいいなーと、今はただ思うばかりであります。

「おおはま」
神奈川県鎌倉市御成町4-15 みゆきビル101 [Map]
0467-38-5221
https://www.instagram.com/kamakura_oohama/

column/02919

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください