column/01499再会
手打ち蕎麦「成富」
海水魚ショップでの買い物ついでにご無沙汰の「成富」に寄ってみました。ひとり客は素直に右手のカウンターへ。アスパラ、伏見唐辛子、みょうが、ズッキーニ、大葉、空豆と括弧書きされた「夏野菜天の冷やしそば」に目移りしながらも、季節のそばから「焼きなすの冷やしそば」をお願いしました。湯釜前の大将の顔を何気なく見ると、開店当初のどこか力みの窺えた表情とは違って、自身の漲った柔和な雰囲気があるのに気がついた。大きな金物の笊を下からぱんぱんと叩いて水を切る、独特の動作へと至る作業の流れも淀みない。その背で、寡黙な初老の料理人が揚げ物を賄っている。「焼きなす大盛り、いきます」。そして、どんぶりが届きました。ひんやりとしたなすの上におろし生姜をちょんとのせ換えて、甘汁に浸すようにしていただきます。いいね、涼味だね。本日の蕎麦は、茨城産と北海道産のもの。どちらのものか、ブレンドか。仄かに甘さを思わせるそばだ。「流石」の「ひやかけ」と較べてしまうのは無粋だなぁと思い直して、茗荷の千切りを薬味にずるずるずるずる。うんうん。食べ終わりそうになったところへ、酒器に入ったそば湯がすっと届けられた。そば粉を溶くなどして手を入れたそば湯が、冷やしそばにも添えられるのです。汁も完飲することになっちゃうね。
「成富」 中央区銀座8-18-6 03-5565-0055