「喰いねぇ 鮨天麩羅鰻」カテゴリーアーカイブ

鮨「伊とう」で相模湾地物魚介の肴鮨伊藤家のつぼは今真鶴の粋な佇まいの中に在る

伊豆というと真っ先に思い出すのがずっとずっと若い頃のこと(笑)。
多分大学に入って最初の夏だったと思うのだけど、多々戸浜か碁石浜辺りの、浜からちょっと離れた山間に建つ別荘を仲間でお金を出し合ってひと晩かふた晩借りた。
夏の陽射しガンガンであっという間に真っ黒になり、日焼けした背中にひーひー。
砂浜に腰掛けてずっと眺めていた夏の海の光景がずっと印象に残っています。
海っていいもんだなぁってね。

それ以来、
道路の渋滞に嵌りつつもちょこちょこ下田白浜方面へ出掛けたり、
会社の先輩たちのクルーザーで西伊豆や南伊豆へ向かったり。
すっかり南の島系リゾートダイバーになっちゃたので、
伊豆のポイントを沢山知っている訳ではないものの、
海の中もやっぱりいい。
そうそう、シュノーケリングも愉しいヒリゾ浜も素敵な場所でした。

話は替わって昨年の晩夏のこと。
「伊豆半島太鼓フェスティバル」というイベントが、
南伊豆の松崎町で催されました。

松崎海岸の防波堤の向こうに夕陽が沈みゆく。
松明が炊かれ、そんな海辺の夕景をバックに太鼓が響く。ロケーションも手伝って、街中の祭り太鼓とはひと味違う臨場感。
地元以外の太鼓団体も招聘し、
例年4組のそれそれに特徴のあるグループが競演する。
既にもう20回近くの開催を数える、
晩夏恒例のイベントとなっているようです。

なかなか素敵なひと時だったし、
遅い夏の伊豆の浜辺で寛ぐのも悪くないぞと、
今年も伊豆行き、松崎町詣でを計画。
ところがなにやら秋雨前線の活動活発により雨予報。
フェスティバルの実行委員会が下した開催の決定にほっとして、
ふたたび松崎海岸の特設ステージ前に陣取りました。
ところがところが、太鼓の演奏中に暗雲垂れ込め雷鳴轟き雷光閃く。
あっという間に物凄い土砂降りとなって、
急遽イベント中止と相成りました。
ずっと多量の雨が打ち続ける中を合羽を頼りにとぼとぼ歩く。
この夏を象徴するような極端な天候を身をもって味わったのでした。

土砂降り雨の翌朝は、
予報が外れて台風一過のような清々しい空。堂ヶ島の並びにある田子瀬浜海水浴場に寄り道してひと泳ぎ。

さっと着替えて長駆、伊豆の尾根を跨いで向かったのは、
湯河原のお隣、真鶴半島のど真ん中。細い半島ゆえの狭隘な道から急坂の先を見上げると、
よく見知った扁額が目に留まる。
八丁堀・入船の市場通り沿いにあった「伊藤家のつぼ」は、
2017年の夏で移転のため店仕舞いしていたのです。

移転先はどんな様子なのだろうと、
駐車場から更に坂道の上を見遣ればなんと、
格式ある旅館のような佇まい。玄関の土間に履物を脱いで板敷きの廊下に上がり、
すぐ脇の引き戸の先へと案内いただく。
忽ち目に飛び込んでくるのは、窓枠を額縁とした紺碧の海と空だ!

そして、柔らかく迎えてくれるのはいつぞやのご尊顔と、
デデンと横たわる一枚板のカウンター。地元の路地物柑橘で作った「真鶴果実のザクザクサワー」が、
すっきりと美味しい(らしい)。
運転手は呑めないねと悔しがる(笑)。

カウンターも然る事乍ら建具や調度もとてもいい。思わずきょろきょろした先には、
スポットライトを浴びた素麺南瓜や台湾茄子、冬瓜なぞの飾りが映る。

口開きは坊ちゃん南瓜の天麩羅に落花生。清澄白河の「リカシツ」で仕入れたという硝子の器に盛り込んだのは、
地のメジナに築地から届いたつぶ貝。
そして、藁で炙った地物の鰹。
辛味を添えたおろし玉葱と実によく合います。

立派な陶板への盛り込みがやってきた。穴子の手毬鮨はもとより地物の蛸に煮付けた床臥がいい。
どうやって蛸を柔らかく煮るのかと大将に訊くと、
なんでも一度冷凍するのもコツのひとつなんだそう。
嗚呼、お猪口をきゅっと合せられないのがなんとももどかしい(笑)。

と、大振りで活きのいい伊勢海老の顔見世興行(笑)。ちょっと可哀想な気にもなるけど、
さてどんな姿で供されるのか愉しみが膨らみます。

握りの手始めは、地の笠子。
カサゴらしい品の良い甘さが口腔にすっと広がります。皮目も艶やかな奴はと云えば、これまた地物の金目。
相模湾の深いところに潜んでいた奴なんでしょう。

島寿司よろしく芥子をちょんと戴いた鮪の酸味。白鯛は昆布〆にすることで艶が出て、
利かせた梅酢もまた粋な仕事になっています。

ひと呼吸置かせてくれた椀の中心には、真薯がある。
そのネタは嘗てスミヤキと呼ばれたクロシビカマスだそう。
相模湾周辺でよく食べられるもののようだけど、
初めていただくお魚であります。そして、障泥(アオリ)烏賊が旨い。
麺状に切りつけたものを纏めて、胡麻をあしらい檸檬を搾って。

旨いと云えば藁炙りしたトロがいい。秋刀魚も炙れば、実山椒の似合う味の凝集をみる。

巻物に続く大トリがお待ち兼ねの伊勢海老。身包み剥がされ、こんな姿になってしまって!と一瞬思うも、
そんなことはすっかり忘れて、
口に含んだ素敵な甘さにただただにんまりしてしまいます(笑)。

時季や海況により左右されてやりくりする必要は勿論あるのだけれど、
相模湾周辺から眼下の真鶴港に揚がる地物の魚介を極力供したい。
そう、大将は仰る。
それを八丁堀で鍛えた(笑)、手練で繰り出してくれるし、
そのステージや背景が素晴らしい。
加えて、大将や女将さんから自ずと滲み出るひと当たりの良さも、
大きな魅力なのであります。

八丁堀・入船で人気を集めた「伊藤家のつぼ」は今、
真鶴半島の真ん中の粋な佇まいの中に在る。此処が「伊藤家」「伊とう」となる前は、
旅館をリノベーションして、
岡本太郎作のユニークな「河童像」が出迎える、
アートミュージアムであったらしい。

アートミュージアム閉鎖後の建物を手に入れて、
あちこち傷みのきていた内外装に手を入れて、
雰囲気に似合うアンティークな家具を揃え、
大きなカウンターを重石に据えた鮨「伊とう」には、
なんとお泊りが出来る。宿泊場所となる二階の肘掛け縁からも勿論、
相模湾の青に臨むことが出来る。
そう、お泊りしちゃえば、車の運転の心配もないまま、
お酒をお供に大将の料理や握り、お喋りを堪能できるのです(笑)。

「伊とう」
神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1200-18 [Map] 0465-87-6460
http://manadurunoitoke.blog.jp/

column/03757

和食「松うら」で一品勝負の天丼の湯気と六月の晦日の夏越ごはん

市場通りと鍛冶橋通りが交叉する八丁堀駅前交差点。
交差点の北東側の角に建つ「WISE OWL HOSTEL」の一角には、昼に夜にお世話になっている「フクロウ」がある。
同じ区画には夙に知られたスタンドバー「maru」や大食漢たちのオアシス「八丁堀食堂」がある。
町の中華「十八番」の方へと折れ入った処には、イタリアワイン呑まぬひとお断りのワインバー「metameta」がひっそりとある。

その先の「串八珍」の脇から、
「フクロウ」の横手へと抜けて行く裏道がある。
春先のある日。
移転した居酒屋「海」の前を通り過ぎた処で、
散り掛けの花を咲かせた梅の枝振りに目を留めました。当の梅の木の前に立つとその奥の行燈に灯りが点ってる。
此処は確か、以前「日比」という居酒屋ではなかったでしょか。

店先のA看板にあったように、
此方のランチは基本的に一品勝負。
カウンターから厨房の様子をぼんやりと眺めて暫し。
「天丼」が湯気を上げてやってきました。単純に海老の二尾いる光景が嬉しい(笑)。
それに茗荷の天ぷらもまた想定外の嬉しさ。
濃くて黒いヤツなんかでない、
ほんのり甘めのツユにさっと潜らせた塩梅も悪くない。

季節は移ろって空梅雨の頃。
稲庭うどんのお誘いに乗ってカウンターに就く。
するとたった3食限定にて「夏越ごはん」もあると云う。夏越と書いて、なごしと読む。
卓上に小さな冊子があってそれによると、
「夏越の祓い」とは、
一年の前半の最終日にあたる六月の晦日に行われるお祓いの神事。
神社で「茅の輪くぐり」を行うのは、
一年の前半の罪や穢れを払い、
残りの半年間の無病息災を祈るもの。
半年の区切りに行うものだとは、
恥ずかしながら知らんかったであります(汗)。

然らばということでお願いした「夏越ごはん」。
茅の輪の由来からくる粟や豆を用いるのが基本線のようですが、
ざっくり云えば夏野菜の掻き揚げ丼。夏野菜をたっぷり摂って、
夏を乗り切る準備をしようねと囁いてくれていると思えば、
それもまた有難いことではありませんか。

八丁堀駅前交差点近くの裏道に和食「松うら」はある。旬のお造りの盛り合わせから尼鯛一潮焼き、帆立香り揚げ、
蓮根餅揚げ出しに自家しゅうまい煮、ばち子等々。
或る日の夜の品書きにはそんな気取りのない酒肴の件が並ぶ。
気の置けない気分でふらっと、
宵の口にも寄ってみたいなと思います。

「松うら」
中央区八丁堀3-23-9 カネコビル1F [Map] 03-5543-6268

column/03728

鮨「おけいすし」で丁度一年振りの同じ白木のカウンターに今更乍ら想うこと

okeisushi油面辺りの目黒通り沿いも有名だけど、青山界隈もどふいふ訳か、インテリアに関するお店が多い。
例えば、長青山梅窓院の竹林アプローチの先にある「MASTERWAL」とか、神宮球場に向かう道を外苑西通りに向けて別れた通り沿い両側に点在する店々とか。
ただいずれも高級過ぎて、おいそれと手が出る代物たちではなく、でもいいものはいいものなぁと指を咥えることになるのが常なのであります。

そんな青山は南青山三丁目交叉点から外苑西通りを北上する。
それは、誰が呼んだか(コシノジュンコ?)キラー通りとも俗称する通り。
キラー通りが右にカーヴし、あれこんなに歩いたっけ、
このまま往くと「ホープ軒」の灯りが見えてきちゃうぞと思う頃、
とある鮨屋の前に辿り着きます。

店先に掲げた大振りな魚の骨にふと、
西早稲田「元祖一条流がんこ」の牛骨を思い出しつつ暖簾を払う。okeisushi01ちょうど一年前の同日にお邪魔した時と同じ、
白木と椅子が迎えてくれました。

ここからはほんの少しの訳あって、
一年前の写真を振り返りたいと思います。okeisushi02okeisushi03okeisushi04okeisushi05okeisushi06okeisushi07okeisushi08okeisushi09okeisushi10okeisushi11okeisushi12okeisushi13okeisushi14okeisushi15okeisushi16okeisushi17okeisushi18okeisushi19okeisushi20okeisushi21okeisushi22すっと白木の上に置かれた寿司酒肴のひとつひとつが、
決して過ぎることのない味わいの裡で、
篤実で魅力的な美味しさを届けてくれました。

それから一年振りに訪れたカウンターは、
なんとはなしに何かが違う。okeisushi23資質だけでも難しいのは勿論のこと、
熟練だけでも昇華することの難しい職人世界を、
図らずも覗き込んでしまったような、
今更乍らそんな心持ちを抱いた宵となりました。

キラー通りの片隅にひっそりと「おけいすし」がある。okeisushi24いつの日か頭の部屋「鈴政の部屋」を、
貸し切れる身分になりたいものだと思ったり、
いや、それが仕合せだとは限らないゾと思い直したりする。
めんどくさいへそ曲がりで御免なさい(笑)。

「おけいすし」
渋谷区神宮前2-3-26 松岡ビル1F [Map] 03-3405-4610
http://www.okeisushi-suzumasa.jp/

column/03706

寿し「福助」で路面電車に薬売りふっと誘われ地魚にぎりサスに八目に白海老に

fukusuke路面電車の走る街ってやっぱりいいなとそう思う。
過日訪れた富山県高岡市にも、万葉線と呼ぶ鉄道に高岡軌道線という路面電車があるのを初めて知った。
ひと気の少ない街の停留所から乗り込んだ路面電車にも乗客が少なくて、その存続が心配になる。
その昔、富山新港が整備される前には、射水線を経由して富山軌道線と直通運転をしていたらしい。
大掛かりな橋を渡して、鉄路を残そうとはしなかったのでありますね。

富山の駅に降り立てばすぐさま、
嘗て高岡とも繋がっていたという富山軌道線の車輌に出逢える。fukusuke01近代的なフォルムの「セントラム」や「サントラム」もいいけれど、
やっぱり7000形辺りのレトロな電車に惹かれてしまう。
そして、色々な塗装色があるのでありますね。

市電の行き交う駅前の通りの向こうには、
富山と云えば、の薬売りのブロンズ像がある。fukusuke02こんな入れ子の柳行李を背負って、
各地を巡回訪問していたのですね。

そんな富山駅前のすぐ近く。
「西町大喜」の富山駅前店の手前に寿司屋の暖簾を目に留める。fukusuke03fukusuke04アクリルの看板には「地魚定食」や「晩酌定食」。
「地魚のにぎり寿し」の案内も勿論あって、
肩肘張らない装いに好感を抱きます。

春の気配のする頃には、一本だけと燗のお酒を所望する。fukusuke05fukusuke06銘柄はやはり「立山」で、
時季の蛍烏賊は、期待以上の甘さがぷちっと弾けて唸らせます。

この日の「地魚のにぎり寿し」の下駄はこんな感じ。fukusuke07fukusuke08白海老の澄んだ甘さの誘惑断ち難く。
富山で「サス」と呼ぶ脂の細やかなマカジキの中トロも美味くって、
ぺろっと一気に食べちゃった(笑)。

晩夏には、蛍烏賊の代わりに墨烏賊の黒づくり。fukusuke09fukusuke10fukusuke11オレンジ色が目を惹くのが「サス」で、
北陸で割りとポピュラーな「八目」はメバルのことだと大将。
あれま、メバルってこんなに上品な身質だったでありましょか。

路面電車の行き交う富山駅前近くに何気なく、
地魚の寿し「福助」はある。fukusuke12駅構内に新しく設えた風の寿司処でもなく、
ちょいと敷居を高く構える寿司店でもなく、
ふらっと誘われるような風情がいいんだな。

「福助」
富山市新富町1-3-22 [Map] 076-442-0001

column/03693

天ぷら「天房」で天麩羅定食穴子芝海老丼美しき赤身の限定鮪定食もございます

tenfusaどふいふ訳か、築地場内に足を運んでも、海鮮丼の店にはまったく食指が動かない。
そもそも魚がし横丁に海鮮丼の専門店が登場したのは、後発のことのような気もするしと思い至ると、それは「仲家」の印象があまりにも悪かったからそふいふことになっているのだと気が付いてそっと苦笑いする、なんてことを繰り返している(笑)。
刺身定食の方がいいに決まっているけれど、手軽に掻っ込む海鮮丼そのものに罪はない。

ずっと”うみさちもん”と読んでいた(恥)、
海幸門(かいこうもん)から1号館の前を通り抜ける。
この風景も遠からず見られなくなってしまうのかと、
ちょっと遠巻きに5号館から7号館辺りを眺めます。tenfusa01tenfusa02今日はそんなでもないかなぁと、
6号館前の通路の混み雑具合を覗き込む。
天ぷら「天房」の前にも空席を待つ人影がありました。

しばし待ってから女将さんに手招きされて、
壁に向かうカウンターの隅に席を得る。tenfusa03暖簾の内側から眺めるお向かいさんは、
築地ゴム長の元祖長靴専門店「伊藤ウロコ」の店先だ。

或る日には「天ぷら定食」。tenfusa04tenfusa05海老に芝海老、鱚に槍烏賊、獅子唐に海苔。
そこに稚鮎が加わる嬉しい時季もある。
求道的な揚げ口なんかではなく、
すっと馴染める揚げっ振りに和んでしまいます。

また或る日には、店先の貼紙を確かめてから「天丼」を。tenfusa06tenfusa07定食と同じく、海老に芝海老、鱚、
海苔に獅子唐が基本ラインで、
そこに帆立と鰯を添えてくれている感じ。
浸した汁は特段甘すぎることなくじわっと迫ります。

気が付けば一番多くいただいているのが「芝エビ穴子丼」。tenfusa08tenfusa09お約束通りに丼から食み出した穴子天を枕にして、
芝海老の天ぷらがズラズラっと並んだ画を壮観に思う。
海老の外殻の芳ばしき甘さがたっぷりと愉しめる、
そんなドンブリなのであります。

海老の身の甘さも堪能したけりゃ、
「大エビ天丼」という手がある。tenfusa10海老天の上に載せた海苔の天ぷらに一種の愛嬌を思います。

天麩羅専門店なのに!と語られていそうな、
「天房」定番にして限定メニューが「マグロ定食」。tenfusa11tenfusa12tenfusa13トロなんかで媚びることなき美しき鮪の赤身。
海鮮丼と比べるまでもなく、潔くも真っ当に旨い膳が此処にある。
そして、鰯の天麩羅がそっと添えられるのが、
天ぷら専門店の力みなき矜持なのでありましょう。

築地場内・魚がし横丁6号館のとば口にずっと構える天ぷら「天房」。tenfusa14店内の壁に豊洲市場での移転場所を示すフライヤーが貼られてた。
天ぷら「天房」は、「大和寿司」「富士見屋」と並んで、
青果棟の一階へと移るようです。
魚がし横丁の店々は、この一軒間口も魅力のひとつなのだけど、
豊洲ではどんな店構えになるのでしょうね。

「天房」
中央区築地5-2-1 築地市場 魚がし横丁6号館 [Map] 03-3547-6766

column/03689