「渋谷恵比寿中目エリア」カテゴリーアーカイブ

焼鳥「鳥福」で伊達鶏媛っこ比内地鶏ハラミ〆スープ渋谷再開発とのんべい横丁と

2019年11月に開業した渋谷の新しいランドマーク、渋谷スクランブルスクエア。
新しい施設にわーっと飛びつくように出掛けるのは、何処かこっ恥ずかしくて、一周廻った頃に足を向けることが多いへそ曲がりなのだけど、屋上にオープンエアな展望施設があると知り、それは登ってみたいと思っていた、そんな2月初旬のこと。
こけら落とし公演「志の輔らくご」が待つ新生PARCO劇場へと向かう前のひと時がちょうどよいとばかりに、最上階エリアへと直行するエレベーターに乗り込みました。

2月にして陽射し暖かで、ほぼ無風にして澄んだ冬の空気。渋谷の真ん中でこの解放感はなかなか素晴らしいと頷き合いつつ、
六本木方面を見遣ったり、寝転んで真上の空を仰ぎ見たり、
富士山方向に沈む夕日をじっと眺めたりしたのでありました。

そんな渋谷スクランブルスクエア展望施設SHIBUYA SKYから、
ほぼ真北方向の眼下を見下ろすと、
かつての宮下公園や隣接していた駐車場の一角が、
不思議な立体構造の公園らしきものになりつつあるのが俯瞰できた。

その後のとある夕刻の頃。
区役所への所要の帰り掛け、
宮下公園のあの施設はどんなだろうと寄り道するも、
コロナ禍の影響か、まだ開業準備中のご様子。ならばとそのまま、お久し振りに、
のんべい横丁に寄り道しましょう。

紳士専用トイレの前から角を曲がってすぐ。
「鳥福」にお邪魔するのは恐らく、14、15年振りだ。店内を覗き込み、空席あるやを訊ね、潜り込む。
鶉の玉子を落とした大根おろしが、今も変わらぬお通し。
そして、目の前の硝子ケースの中を思わず覗き込んでしまうのも、
云わばお約束であります。

引き戸の上をふと見れば、オヤジさんのモノクローム。
今はオヤジさんから代が変わって、
その息子さんが焼き台を守る。

口開きの串二本は、左手が伊達鶏で右手が媛っこ地鶏。ぼんじりもまた、脂デロデロなのではなく、
余計なところを削ぎ落とす仕事をしてくれているような、
そんな気がします。

麦酒に続いていただいたのは「浜千鳥」。
震災後の釜石にあったプレハブ棟による吞ん兵衛横丁。
「浜千鳥」というと、寒くてそして温まった、あの夜を思い出す

焼き台の頭上には、二階とのホットラインであるところの木箱がある。タレで迫るのは、レバーにつくね。
塩が基本の串たちの中にあって、これもまたいい。

ビールに浜千鳥、焼鳥の串5本をいただけば、
満ち足りた心持ちになってくる。

そうとなればと「鳥福」が用意してくれているのが、
〆の鶏ガラスープ。
そのスープには、お好みとお腹の気分に応じて、
烏骨鶏の卵や小さい焼きおにぎりをオプション投入することができる。ひたひたとスープの滋味に浸り、
半熟の漢方卵の旨味と香ばしいご飯を啜る。
そうして小さな大団円を迎えることが出来るのです。

間を空けずのんべい横丁を訪ねることができたならば、
やっぱりこのささやかなカウンターに腰掛けたい。黒糖加那の水割りをちびちび舐め乍ら、
目の前の硝子ケースの中を覗き込むのもオツなものであります(笑)。

今回もやっぱり福島の伊達鶏、そして比内地鶏で口開き。左の串は媛っこ地鶏。
山形からのものだという右の串、
色丸ロードアイランドレッドは、わしわし噛み込む感じだ。

タレでいただく「みち」は、「きんかん」の古い呼び名だそう。
塩で焼いてもらった「ハラミ」が美味くて、秘かなお気に入り(笑)。素直に追加投入のない鳥ガラスープで仕舞うのもまた、悪くない。

いつの間にか開業していた「ミヤシタパーク」に登ってみる。
渋谷スクランブルスクエアの展望施設から眼下に見た通り、
以前は勿論地続きにあった宮下公園が、
構造物の最上階に立体的に再構成されている模様。
階下のフロアには飲食店やショップがあり、
さらにはホテルまであるらしい。そんな真新しい施設から、
そこだけ置き去られたような風情ののんべい横丁を見下ろす。
大規模で広大な再開発が進行している渋谷にあって、
この一角だけはいつまでもこのままであって欲しいとそう思う。

大掛かりな再開発進む渋谷駅周辺にあって、
どこ吹く風と昭和なままなのんべい横丁に「鳥福」はある。此処のお店は八月は鳥が弱るので休むのよ。
L字5席のカウンターに偶々同衾した姐さんがそう仰る。
例年が例年でない今年は、お盆以外の八月も営業しているようです。

「鳥福」
渋谷区渋谷1-25-10 のんべい横丁[Map]03-3499-4978

column/03819

中華麺店「喜楽」で炒飯炒麺焼餃子タンメンもやしワンタン麺三業地の残り香と

kiraku買い物か何かで偶々渋谷の街にいるということはある。
折角なので何処かで食事を済ませてしまおうと考えた時、小洒落た店の幾つかでも思い付けばいいのかもしれないけれど、ツイツイ脳裏に浮かぶのは、道玄坂を上りかけたその先を右に折れたあの辺り。
嘗ての三業地、今の円山町も間近なあの急坂の辺りだ。

道玄坂に面して迎える鳥居が示すは、
「しぶや百軒店」。kiraku01急坂の右手には、残念ながら未だ闖入したことのない、
「渋谷道頓堀劇場」のネオンサインがある。
コント赤信号が幕間に出演していた頃に訪れたかったなぁ、
なんて思ったりもする(笑)。

とりかつやハムかつの「とりかつ」のある路地を覗く前に、
店の前に並ぶ空席待ちのひと影に気がつくことも間々ある。kiraku02その人数が重なるとそれはそれで、
何事かと訝ってしまうけれど、
そんな風に街の定番になっているのが、ご存知!
中華麺店「喜楽」であります。

訪問当初は、基準点「中華麺」を考えている。kiraku03でも、お品書きをじっと見詰めるに連れて、
結局「もやしワンタン麺」とか、
ついつい「チャーシューワンタン麺」とかに盛りたくなってくる。

「喜楽」の中華の特徴のひとつはやはり、
醤油色の表層を占める脂の層と渾然となった揚げ葱の風味。kiraku04もしかしたら大蒜による習慣性よりも、
揚げ葱が誘う輪廻の方が地力が強いのじゃないかと思ったりもする。

麺はどちらの製麺所によるものなのでしょう。kiraku05やや平打ちの黄色いヤツ。
もうちょい細めの麺の方がスープに似合うよな気もするけれど、
こうして食べ応えもあるのが若者に受けているのかもしれません。

夕闇頃には、間違いなく”ご飯切れ”の憂き目に遭って、
いただくこと叶わないのが「炒飯」のお皿。kiraku07特筆すべきチャーハンではないものの、
ご飯のひと粒ひと粒がしっかりラード風味にコーティングされて、
北京鍋を煽る回数に不足はない誂えになっています。

サイドメニューの自覚なんて微塵もない感じなのが、
「喜楽」の「焼餃子」。kiraku06包み込んだあんのボリュームやたんまり。
パリッとした皮目もいい。
「餃子ライス」ファンも少なからずおられることでしょね。

時には塩味系もオツなんじゃないかと、
「タンメン」を所望する。kiraku08スープそのものに含んだ野菜の甘さが、
塩っ気に引き出されるように滲んでくる。
同じ塩味の部の「五目麺」との違いを確かめるのは、
今度お邪魔した時のお楽しみ(笑)。

汁物でなくってもな気分の時には、
素直に「炒麺」という手もある。kiraku09それは、ゴテゴテさせない明るい色合いの。
麺に薄く纏った油に甘さを思いつつ、
ちゃっと炒めた野菜たちの歯触りを愉しむのであります。

「炒麺」と似て非なるは「肉野菜」。kiraku10「餃子ライス」と「肉野菜」なんてガッツリ贅沢版をいただいて、
ふぅ~、満足満足(笑)。

云わずと知れた妖しき百軒店にずっとある風景は、
中華麺店「喜楽」の佇まい。kiraku11学生に時代に感じたワクワクはもう、
ここで感じることはないけれど、
なんだか足が向いてしまうの心持ちがあるのも否めない。
これからもずっとそんな存在であり続けてくださいな。

「喜楽」
渋谷区道玄坂2-17-6 [Map] 03-3461-2032

column/03672

洋食「キッチン パンチ」で目玉焼きのっけにナポリタン生姜焼きに牡蠣フライ

punchいつから共用が始まったのかなと思いつつ、中目黒駅の南改札口を出る。
GTタワーの敷地を斜めに横切るように抜けると小さな祠の脇に出る。
目黒銀座入口の端にひっそりとある小じんまりとした神社が、第六天社。
小さな境内にまだ細い桜の木がある。
高層ビルの谷間にこんなスペースを確保して祀っているんだねと思いつつ、その向かいの横道へと入り込みます。

入って右手へとさらにクランクするように忍び入ると、
両サイドに飲食店の灯りがいい具合に点ってる。punch01「草花木果」「いふう」に大阪串かつ「殿金」、
「なかめくん」「セイロンイン」に「コロッセオ」。
有名どころでは、ピッツェリア「聖林館」。
そして、そんな気になるお店が並ぶ裏道に、
昭和41年創業の洋食店があるのです。

店先にはお約束のショーケース。punch02例えば、白金北里商店街「ハチロー」や、
百反坂の食堂「さんご」のショーケースのように、
草臥れて褐色を帯びたサンプルが並ぶものでなく、
例えば、五反田の「さんばん」のそれのように、
生き生きとした発色が眼を惹きます。
まずは覗き込ませ、迷わせ誘う、
ショーケース本来の役割を十二分に果たしています。

ショーケースの脇の扉を入れば、
左手にカウンター、右手にテーブル席。punch03一番奥のテーブルを定位置にした、
創業者とも思しきオヤジさんが、
あれこれと愛想を送ってくれる。
時におひとりさまでもテーブル席を勧めてくれます。

ショーケースでも生まれた迷いは、
黄色地赤文字のメニューを手にしても、
治るどころか増すばかり(笑)。
まずは”看板メニュー”から
「ハンバーグ目玉焼き付き」をお願いしましょう。

追加アイテムあれこれから選ぶ、
“いろいろのっけメニュー”からポテトサラダを選んで、
添えてもらうのが定番になっている。punch04ロコモコならずとも目玉焼きひとつがこうも、
地味色になりがちなお皿を朗らかにしてくれるのですね。

ジャストサイズの目玉焼きの下を覗き込むようにして、
認めたハンバーグはなかなかに端正なフォルム。punch05punch06粗引きとしっとり挽肉とが交雑するハンバーグに、
目玉焼きの黄身のコクとデミソースの旨みが交錯する。
はい、美味しい。
ハンバーグはこれでよいのだ(笑)。

メニューには勿論「ナポリタンスパゲッティー」もある。punch07punch08ナポちんが2皿目までも食べているナポリタンは、
摩り下ろしたチーズが蕩けて網状になりかけているのが特徴で、
ハンバーガーのと同じデミソースの気配もする炒め口だ。

メニューには勿論「豚バラ肉の生姜焼き」もある。
punch10punch11じんじゃーちんスペサルプッシュ(*^_^*)な生姜焼きには、
その頂に薄っすらと七味の雪が降る。
縒れて寄り添う豚バラ肉にキリッとしたタレがよく似合います。

これもひとつの看板メニューらしいのが、
4~9月の期間限定「鳥レバーフライ」。punch09噛めばじわっと小粋なレバーの風味。
癖のない滋味の軽やかさに大感心。
春から夏にかけての人気のメニューであろうことに頷きます。

そして季節が秋へと移り変わると、
厨房の壁に掲げられた黒板にはこんな白墨の文字が躍る。punch12例年のことながら、
シーズン早々はまだ仕入れが不安定なこともある、牡蠣。
震災から復興の道を辿る三陸産の牡蠣を使うことが多いようです。

10月半ばの牡蠣フライは、期待通りのジャストサイズ。punch13punch14軽やかな揚げ口の衣の中から澄んだ滋味エキスの迸る。
出来ればもうちょっと玉子玉子したタルタルが好みなのだけど、
それも満足感を歪めるものではありません。

年が替わった冬の時季には、
「オムライス」を所望したりする。punch15punch16デミソースではなく、
お腹の真ん中にくっきりしたコントラスのケチャップ化粧。
やっぱり欲しいとカキフライをのっけしてもらうという、
そんな暴挙もどこ吹く風に受け止める、
玉子包みのチキンライスもいい塩梅であります。

目黒銀座界隈の裏道に、
昭和41年創業の洋食店「キッチン パンチ」がある。punch17マガジンハウスが発行していた男性向け週刊誌「平凡パンチ」が、
冬眠と称して休刊してしまったのが1988年(昭和63年)のこと。
なんとなく”パンチ”という言葉には、
昭和の時代の勢いと甘酸っぱさが含まれているような、
そんな気もするのです。

「キッチン パンチ」
目黒区上目黒2-7-10 [Map] 03-3712-1084

column/03654

お座敷洋食「ハチロー」でショウガヤキカキフライメンチカツとイチローかハチローか

hachiro恵比寿駅、広尾駅、白金高輪駅に白金台駅、そして目黒駅。
そのいずれからもなかなか距離のあるのが、恵比寿三丁目交叉点。
それ故、バス通りの交叉点にもなっていて、並木橋辺りから続くバス通りは、首都高2号目黒線が高架を走る恵比寿三丁目を抜けて、北里研究所前を通って白金高輪駅のある桜田通りへと辿り着く。
方や、西麻布辺りからやってきたバスは、広尾駅前や天現寺橋から恵比寿三丁目を抜けて、首都高に沿って目黒駅方面へと向かい行く。
そんな風に、バス便も便利な恵比寿三丁目界隈ですが、嘗ての「ロウホウトイ老饕檯」や「きえんきえら」のある白金北里商店街へは、広尾駅から散策モードで訪れたりもいたします。

交叉点を背に北里研究所方向に少し歩くと、
あれ?「きえんきえら」はここだっけ?
という風景にすぐに出逢う。hachiro01成る程「きえん」という「きえんきえら」の兄弟店なのかと、
横目で覗きながら歩くと、
青いアクリルに灯りを点した看板に目を惹かれます。

庇を作るテントも然ることながら、
壁の上部に取り付けた横長サインの書体も素晴らしい。hachiro02青い看板には、
お座敷洋食、レストラン「ハチロー」と標されています。

“お座敷洋食”といえば、
最近ご無沙汰の大森「入舟」を思い出す。hachiro03「入舟」の女将さんの様子を思い浮かべながら、
覗いたショーケースの目玉焼きは、
日当たりのよい所為か、少々陽に焼けて燻んでおりました。

扉を引くと左手にテーブル席が並んでる。hachiro04一番手前は列車のボックスシートのようにもなっていて、
おひとりさまが似合いそう。
頭をぶつけてペンダントライトを揺らしつつ(笑)、
腰を落ち着けます。

昔ながらの見開きのメニューから「メンチカツ」を選びました。hachiro05hachiro06狐色では不十分とばかりに、
くっきりときっちりと揚げた衣が特徴的。
油はきちんと切れていて、成る程さくっと芳ばしい。
煮浸した茄子の小鉢も気が利いていて、
懐かしさの滲む、安心なる食堂の味わいです。

日を替えて今度は、
Gingerちんも齧ってた「ショウガヤキ」を所望します。hachiro07hachiro08カタカナ書きがレトロでいいかもと思いつつ横から眺めると、
まるで隠すかのように重ねたロースの二枚重ね。
おろし生姜の表情を確かめながら齧り付く。
その噛み応えになぜかニンマリ。
ショウガの利きが嬉しいしょうが焼きです(笑)。

季節が巡って冬となったなら、
此処にも「カキフライ」シーズンがやってくる。hachiro09hachiro10ただし、夏も冬も揚げ油の温度は変わらない。
小振りな牡蠣フライをわらわらっとお皿に盛ってるのも特徴的。
醤油使いもよく似合う牡蠣フライでありました。

白金北里商店街の片隅にお座敷洋食「ハチロー」がある。hachiro11イチローならぬハチローさんがご主人なのかと、
そうだとばかり思っていたらなんと、
ご主人の苗字が鉢蝋さんだから。
ロレンスさんによると大森にも同系の「ハチロー」が現存するらしい。
大森「ハチロー」にもお邪魔してみなくっちゃだ。

「ハチロー」
渋谷区恵比寿2-39-4 [Map] 03-3444-8600

column/03643

モダン中華「MASA’S KITCHEN」でXO醤ピータン豆腐魚翅煮込上海蟹に担々麺

masas恵比寿駅を東口に出て、小さなロータリーへとエスカレータを下り、だらだらと坂道を辿ったところが恵比寿東口交叉点。
見ようによっては変則七叉路の信号を渡り、みずほ銀行の右手を斜めに入ると右側にハワイアンダイニングの「Tsunami」が見えてくる。
何故だか不思議とお気に入りのこの通りを往けば、今はクラフトビールのお店になってしまった「Aotea Rangi」の向かい辺りにも気になるバーなぞのお店が並んでる。
札幌ラーメン「前川」と「海南鶏飯食堂2」の間を抜けたビルの地階に今宵の目的地「MASA’S KITCHEN」があります。

L字に囲むオープンキッチンのカウンターではなく、
落ち着いた風情の隅のテーブルに収まって、
ちょっとだけと麦酒を所望する。masas01テーブルに届いたのは、
緑のボトルでお馴染みの青島啤酒の、プレミアム版。
透明なボトルに明るい色合いの麦酒。
朱と金地のラベルが煌びやかな印象を与えています。

そんな麦酒のお供にとXO醤の小皿を添えてくれた。masas02解した干し貝柱の姿がそこに窺えるちょっと盛り。
嫌味のない旨味の凝集が贅沢なアテになる。
浅草国際通りの有名店「龍園」のXO醤を思い出します。

この夜の前菜盛り合わせは、
ピータン豆腐を中心にして7種が囲む。masas03masas04それは、大根の中華風甘酢漬けに自家製の焼豚、
淡路島の玉葱の冷たいスープ。
葱と山椒と生姜のソースを載せた鰤に脛肉の四川風の煮込みなど。
ピータン豆腐がこれまた、
「龍園」のカクテルグラスをちょいと想起させてくれました(笑)。

古越老酒の甕だし10年をデキャンタの大で貰う。masas07ベタつかづして、澄んだまろみ。
ただ、これのデキャンタが大ですかと、
思わず訊きそうになって思い留まる。
いやいや、少容量のように見えて意外と入っているのです(笑)。

揚げ物は、海老、烏賊、蟹と帆立を巻いたカダイフ。masas08例えば、新富町「Coulis」の牡蠣フライでもお馴染みのカダイフが、
中華料理にも取り入れられていることを知る。
考えたら和食にだって違和感なく使えそうな食材ではある。
そんな意味からは、
もうちょいと中華料理らしさを思わせてくれてもよいのかもしれません。

本日のスープは、
スペアリブと大根、金かハムを3時間ほど煮込んだもの。masas09masas10給仕の紳士が具を取り出して、
具は具、スープはスープでいただくべしと指南してくれる。
うんうん、スープは濁りなく深い旨味でとても美味しい。
成る程、スープがメインだと仰りたかったのでありますね。

この頃になって、
もしかして時季の上海蟹のお皿を忘れているのじゃないかと、
そんな心配が頭を擡げてきた。
簡易なものでも卓上に品書きが用意されていれば、
流れを確かめることができるのだけれど、
テーブルの上はすっきりとしていてそんな余計なものはない。
給仕さんに、今夜のメニューを書き出したものをいただけないかと、
そう訊ねたら、それは出来ないと云う。
仕方なく、催促するかのように、
上海蟹はまだですか?と訊くことになってしまいました(汗)。

上海蟹はその後に控えていると承知して、
迎えたお皿が調理する前の新鮮な姿をみせてくれていた、
アズキハタの雄姿。masas11masas12masas13ハタの仲間にみられるポップな橙の斑点が、
くすむことなく蒸し上げられている。
取り分けてくれたその身の上には、九条葱。
白身の繊細な甘さを真っ直ぐ味わわせてくれました。

次なる平皿は、ご存知フカヒレの煮込み。masas14masas15儚き歯触りのその身を煮含めるようにした上湯が旨い。
途中から黒酢を少々注してもまた美味也。
お皿を舐めてはイケマセン(笑)。

そんな魚翅のあとを受けて、
恭しく届けられたのが上海蟹。masas16甲羅に味噌や脚なぞが意外とカラフルに盛り付けらている。
甲羅の上に描いき直したモズクガニの宝飾品。
こうして両手を汚さずに自らは手間もかけずに、
滋味深い味噌や身をいただけることが贅沢なのだ。
金沢の銘おでん処「高砂」の「かに面」を思い出します。

ひと呼吸置くように小籠包。masas17これでも急いでいただいたのだけれど、
スープがアチチではなかった故に、
火傷しないで済んだような、
醍醐味が半減したような(笑)。

〆のお食事はやっぱり、汁なし担々麺。masas18masas19器の底に潜ませたタレを十分に絡める様に和える様に。
辣や麻が尖ることなく、
全体に円やかな食べ口の担々麺。
自分には美味しくいただけましたが、
物足りない!と仰る紳士淑女も居られましょう。

愛玉のゼリーとも悩んで、
6種の中から選んだデザートは、
黒胡椒と花椒のジェラート。masas20自分で選んだクセして、激辛だったらどうしようなんて、
そんな心配も一瞬過ぎるけれど、
ここまでの料理の流れを考えればそれはない。
花椒の香りが楽しいジェラートでありました。

疾うの昔に有名店のひとつとなっている「MASA’S KITCHEN」は、
モダンな装いで今日もある。masas21そのまま洋食店にも冠せられそうな店名の”MASA’S”は勿論、
鯰江真仁(なまずえまさひと)シェフのお名前からのものでしょう。
その一方で店名の末尾に添えられた”47″はなんでしょう。
1947年とか昭和47年に由来があるのかと思ったらどうやら、
中国を意味する「支那(しな)」を”47″と表現したものであるようです。
今度は、カウンターでシェフの所作を拝みながらの食事がいたしたい。
それならきっとより臨場感のあるひと時になるのじゃないかと、
秘かに目論んでいるところです(笑)。

「MASA’S KITCHEN」

渋谷区恵比寿1-21-13 BPRレジデンス恵比寿B1 [Map] 03-3473-0729
http://www.masas-kitchen.com/

column/03642