恵比寿駅を東口に出て、小さなロータリーへとエスカレータを下り、だらだらと坂道を辿ったところが恵比寿東口交叉点。見ようによっては変則七叉路の信号を渡り、みずほ銀行の右手を斜めに入ると右側にハワイアンダイニングの「Tsunami」が見えてくる。
何故だか不思議とお気に入りのこの通りを往けば、今はクラフトビールのお店になってしまった「Aotea Rangi」の向かい辺りにも気になるバーなぞのお店が並んでる。
札幌ラーメン「前川」と「海南鶏飯食堂2」の間を抜けたビルの地階に今宵の目的地「MASA’S KITCHEN」があります。
L字に囲むオープンキッチンのカウンターではなく、
落ち着いた風情の隅のテーブルに収まって、
ちょっとだけと麦酒を所望する。
テーブルに届いたのは、
緑のボトルでお馴染みの青島啤酒の、プレミアム版。
透明なボトルに明るい色合いの麦酒。
朱と金地のラベルが煌びやかな印象を与えています。
そんな麦酒のお供にとXO醤の小皿を添えてくれた。
解した干し貝柱の姿がそこに窺えるちょっと盛り。
嫌味のない旨味の凝集が贅沢なアテになる。
浅草国際通りの有名店「龍園」のXO醤を思い出します。
この夜の前菜盛り合わせは、
ピータン豆腐を中心にして7種が囲む。
それは、大根の中華風甘酢漬けに自家製の焼豚、
淡路島の玉葱の冷たいスープ。
葱と山椒と生姜のソースを載せた鰤に脛肉の四川風の煮込みなど。
ピータン豆腐がこれまた、
「龍園」のカクテルグラスをちょいと想起させてくれました(笑)。
古越老酒の甕だし10年をデキャンタの大で貰う。
ベタつかづして、澄んだまろみ。
ただ、これのデキャンタが大ですかと、
思わず訊きそうになって思い留まる。
いやいや、少容量のように見えて意外と入っているのです(笑)。
揚げ物は、海老、烏賊、蟹と帆立を巻いたカダイフ。
例えば、新富町「Coulis」の牡蠣フライでもお馴染みのカダイフが、
中華料理にも取り入れられていることを知る。
考えたら和食にだって違和感なく使えそうな食材ではある。
そんな意味からは、
もうちょいと中華料理らしさを思わせてくれてもよいのかもしれません。
本日のスープは、
スペアリブと大根、金かハムを3時間ほど煮込んだもの。
給仕の紳士が具を取り出して、
具は具、スープはスープでいただくべしと指南してくれる。
うんうん、スープは濁りなく深い旨味でとても美味しい。
成る程、スープがメインだと仰りたかったのでありますね。
この頃になって、
もしかして時季の上海蟹のお皿を忘れているのじゃないかと、
そんな心配が頭を擡げてきた。
簡易なものでも卓上に品書きが用意されていれば、
流れを確かめることができるのだけれど、
テーブルの上はすっきりとしていてそんな余計なものはない。
給仕さんに、今夜のメニューを書き出したものをいただけないかと、
そう訊ねたら、それは出来ないと云う。
仕方なく、催促するかのように、
上海蟹はまだですか?と訊くことになってしまいました(汗)。
上海蟹はその後に控えていると承知して、
迎えたお皿が調理する前の新鮮な姿をみせてくれていた、
アズキハタの雄姿。

ハタの仲間にみられるポップな橙の斑点が、
くすむことなく蒸し上げられている。
取り分けてくれたその身の上には、九条葱。
白身の繊細な甘さを真っ直ぐ味わわせてくれました。
次なる平皿は、ご存知フカヒレの煮込み。
儚き歯触りのその身を煮含めるようにした上湯が旨い。
途中から黒酢を少々注してもまた美味也。
お皿を舐めてはイケマセン(笑)。
そんな魚翅のあとを受けて、
恭しく届けられたのが上海蟹。
甲羅に味噌や脚なぞが意外とカラフルに盛り付けらている。
甲羅の上に描いき直したモズクガニの宝飾品。
こうして両手を汚さずに自らは手間もかけずに、
滋味深い味噌や身をいただけることが贅沢なのだ。
金沢の銘おでん処「高砂」の「かに面」を思い出します。
ひと呼吸置くように小籠包。
これでも急いでいただいたのだけれど、
スープがアチチではなかった故に、
火傷しないで済んだような、
醍醐味が半減したような(笑)。
〆のお食事はやっぱり、汁なし担々麺。
器の底に潜ませたタレを十分に絡める様に和える様に。
辣や麻が尖ることなく、
全体に円やかな食べ口の担々麺。
自分には美味しくいただけましたが、
物足りない!と仰る紳士淑女も居られましょう。
愛玉のゼリーとも悩んで、
6種の中から選んだデザートは、
黒胡椒と花椒のジェラート。
自分で選んだクセして、激辛だったらどうしようなんて、
そんな心配も一瞬過ぎるけれど、
ここまでの料理の流れを考えればそれはない。
花椒の香りが楽しいジェラートでありました。
疾うの昔に有名店のひとつとなっている「MASA’S KITCHEN」は、
モダンな装いで今日もある。
そのまま洋食店にも冠せられそうな店名の”MASA’S”は勿論、
鯰江真仁(なまずえまさひと)シェフのお名前からのものでしょう。
その一方で店名の末尾に添えられた”47″はなんでしょう。
1947年とか昭和47年に由来があるのかと思ったらどうやら、
中国を意味する「支那(しな)」を”47″と表現したものであるようです。
今度は、カウンターでシェフの所作を拝みながらの食事がいたしたい。
それならきっとより臨場感のあるひと時になるのじゃないかと、
秘かに目論んでいるところです(笑)。
渋谷区恵比寿1-21-13 BPRレジデンス恵比寿B1 [Map] 03-3473-0729
http://www.masas-kitchen.com/


