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書店の喫茶「長崎次郎喫茶室」で新町電停の景色と珈琲フロートにclassicなプリン

熊本城ホールで開催の玉置浩二オーケストラツアー「LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2026 “Fanfare”」を契機として熊本、そして阿蘇を訪れた、この5月のゴールデンウィーク後半のこと。
阿蘇の高森駅でフランキーに、西原村の俵山交流館 萌の里でナミと逢ってから熊本市街に戻り、華僑料理「会楽園」で、
今や熊本の郷土料理となった、
「太平燕」をするっといただいた。

ご馳走さまーと「会楽園」を離れて、
熊本市電B系統の洗馬橋電停の脇を抜け、
クランクするように進んで、
中央郵便局を背にしてのんびりと歩く。
すると、視界の先の路面に、
カーブするレールが見えてきた。
左手には、飲食店風の古民家があって、
近寄ってメニューを眺めると、
「Clasiqueクラシク」という名のビストロで、
道路境界との狭い狭い隙間にも、
椅子テーブルを出している。
なんだかとってもいい感じなのだけれど、
たった今、おひるを摂ったばかり。
今度来よう、と相棒と頷き合う(^^)。

その「Clasiqueクラシク」に隣接するのが、
洗馬橋電停のひとつ先の電停、新町駅。 真北に進む道路に沿うようにカーブする、
ちょうどその位置に新町電停がある。
プラットホームに佇んでいると、
上熊本と健軍町とへそれぞれ向かう市電が、
レールに沿ってするすると、
時折レールを軋ませて曲がってくる。
この、路面電車が曲がりゆく景色って、
やっぱり、いい風情だ(^^)。

ふと、鹿児島市電の高見馬場とか、
京阪京津線・石山坂本線の浜大津駅前とか、
豊鉄市内線の新川交叉点を想い出す。 そんな新町電停のプラットホームから、
路面電車越しに見えて気になったのが、
「長崎次郎」という文字の縦書きと、
どこか瀟洒な二階建ての建物でした。

向かい側の歩道からその建物を眺めると、
まるで防火壁”うだつ”のような造りが見付かる。
うだつが上がらない、の”うだつ”だね。 その漆喰塗りの壁には、
並べた煉瓦で囲んだ「長崎次郎」の文字。
そして、アーチを描く二階の窓枠や、
庇の下を横一文字に飾る雷紋が目に映る。

横断歩道を横切って建物に近づいて、
入口近くでふと見上げれば、
「静観堂」と示す大振りな扁額が掲げられている。 静観堂は、建物一階のギャラリーの名であるらしい。
開け放たれた観音開きの硝子戸と、
街路樹の緑との様子が、なかなかいい。

柱型には、緑青色の銘板が取り付けられていて、
建物が登録有形文化財に登録されていることが判る。 銅色加工の別のパネルの中央には、
「長崎次郎書店」との文字が刻まれていて、
歴史的風致形成建造物の指定を示している。
熊本市の指定、第1号の建造物でもあるのだ。

1874年(明治7年)創業の「長崎次郎書店」は、
熊本に初めて出来た書店として親しまれたが、
2024年に閉店し、今は「静観堂ギャラリー」として、
イベントなぞのスペースとして活用されている模様。
この味わい深い建物は、
辰野金吾に師事し、三菱の丸の内の、
赤煉瓦オフィス街の設計を行ったことで知られる、
建築家 保岡勝也によって、100年を遡る、
1924年(大正13年)に建てられたものだという。

ウォールナット系の深い茶色の階段を登ると、
案の定、空席待ちのひと影が複数ある。
席の空くのを待ちながら窺う店内は、
建物の外観の風情にも通じる、
白い壁に落ち着きのある調度たち。 屋根の梁が剥き出しになっていて、
そこへもきちんと塗装を施していて、
細部にも手入れが行き届いているのが判る。

間もなく案内いただいたのは、
フロアを横切った先にある、
外から見たら一番左手の隅のテーブル席。 そこからは、路面でカーブを描くレールと、
新町電停に向かい、停車し、発信する、
熊本市電の電車たちがよく見えた。
広告塗装か、空色と白の1200型に、
超低床車両の0800型かと思われるが、
鉄ちゃんでないのでよく判らない(^^)。

鮮やかな黄色に塗装されていた9200型に、
これがスタンダードなのかなぁと思わせた、
アイボリーに二本の緑のラインのデザインが、
1958年・1959年に登場の1200型、らしい。 熊本交通局のWebサイトによると、
一番古い現役の車輛はなんと、
1951年(昭和26年)登場の1060型、らしい。
こんなオツな観覧席に偶然座われたので、
なんならそれも見てみたかったなぁ。

そんなことも想いながら窓の外を見ていて、
ふと、窓枠の外側の柱型のタイルが目に留まる。 素焼きのテクスチャのタイルで、
手描きで溝のラインを入れた様子が判る。
スクラッチタイルと呼ばれるタイルで、
関東大震災後から昭和初期まで、
全国的に流行したタイルであるようだ。
いいね、いい表情をしているね。
今はもう作られていないのかな。

お品書きの左手には、
限定15杯の「水出しアイス珈琲」にはじまり、
珈琲系あれこれにソフトドリンクが続き、
ワイン、ビールまでのラインナップ。
右手には、10食限定の「ビーフカレー」に、
「ナポリタン」「次郎風フレンチトースト」の、
喫茶室的軽食メニューにはじまり、
プリンに珈琲ゼリー、栗ぜんざいまでが並ぶ。
「珈琲ぜんざいバニラのせ」なんてのもあって、
“珈琲ぜんざい”なんて初見だと気になりつつ、
「珈琲フロート」に「クラッシックプリン」を。
「ナポリタン」も食べてしまいたいところも、
「会楽園」で「太平燕」を食べた直後だし、
無理するのは美味しくないので、
オジサンは自重するのです(^^)。

銅のマグカップに満たされた茶褐色に、
プカプカとバニラが浮かぶ。 その背後の窓越しには、
新町交叉点を臨む。

アイスクリームディッシャーでカシュッと、
刳り貫いたままの表情がバニラにあって、
そこへ珈琲豆がひとつ、飾られている。 円やかな苦みと仄かな酸味、
すっきりとしつつ深みのある美味しい珈琲。
そこへバニラの控えめな甘さがよく似合う。

「クラッシックプリン」はその名の通り、
洗練された昭和のカフェのプリンの装い。 滑らかながらもやや硬めの仕上がりで、
玉子の風味、牛乳のコク、
そして抑えた甘さとのバランスがいい。
カラメルの仄苦みがオトナだ(^^)。

古民家のビストロ「Clasiqueクラシク」が、
やっぱり気になって、店先の様子に飽き足らず、
店の中をちょっと覗き込んだりしつつ、
新町電停に路面電車が到着するのを待った。

間もなく到着した電車に乗り込み、
三つ先の辛島町電停で下車して、
最寄りのサクラマチクマモトへ。
SAKURA MACHI Kumamotoは、
この日一宿のお世話になった、
KOKO HOTEL Premier熊本も収容する、
熊本城と庭つづきにある複合商業施設。 ホテルの部屋からはおよそ正面に、
熊本城の天守閣や櫓たち、そして、
2016年の熊本地震からの復旧のための、
大掛かりな足場が間近に望めた。

KOKO HOTEL Premier熊本へのアプローチは、
サクラマチクマモトの2階にあって、
その入口の近くには、くまモンがいる。 そしてその背後にあるのが、この日、
玉置浩二のSYMPHONIC CONCERT開催の、
熊本城ホールメインホール。
ホテルの部屋からおよそそのままライブ会場へ、
なんて便利なこと、なかなかないよね(^^)。

上野公園の東京文化会館で初めて、
玉置浩二のシンフォニックコンサートを聴いた時は、
楽団との一体感ある歌声に痺れ、
特にマイクを外しての生声の響きに打たれた。
でも、毎年ライブ会場に足を運んで聴く裡に、
新鮮さが失われてきたかなとも思うのが、
正直なところではある。
MCがないのは、演目の性質上仕方ないとしても、
演奏時間が短く、インターミッションを挟むので、
最近は少し物足りない感も残る。
このために編曲された楽曲を演奏する、
著名な指揮者が指揮するフルの交響楽団をバックに、
玉置浩二の歌声を聴けるなんて、
めっちゃ贅沢なことなのに、ね(^^)。

熊本市電B系統の新町電停から目と鼻の先、
新町交叉点に接する路面電車通り沿いに、
書店の喫茶「長崎次郎喫茶室」は、ある。 “九州屈指の老舗書店”とも評された、
長崎次郎書店が擁した喫茶室の粋が、
書店を閉めた後も、往時の空気、
時代の残り香とともに今に伝わるよな、
そんな気もする、
居心地のいい喫茶店でありました。

「長崎次郎喫茶室」
熊本市中央区新町4丁目1-19 2階 [Map]
096-354-7973
https://nagasakijiro.jp/

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