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居酒屋「萬屋松風」でジン六と皮剥肝和え穴子一夜干し納豆揚げ明日館夜桜見学会から

19世紀末から20世紀にかけて活躍したアメリカの建築家で、「近代建築の三大巨匠」のひとりともされるが、ご存じフランク・ロイド・ライト、その人。
フランク・ロイド・ライトとその弟子の遠藤新の設計によって建てられたのが、池袋の自由学園明日館だ。
以前、春夏秋冬の年にたった4度の日時限定開催という、貴重なる「明日館レストラン」当該日に訪れた際には、
内外装の随所に見られる特徴的なデザインをつぶさに観て回り、
嘗ての女学生たちの食堂で、
「コルドンブルー」総料理長による料理とワインをいただいた。

その時、帰り際にこう想った。
庭には、大きく枝を広げた桜の木が4本ある。
桜見学会・夜桜見学会に、また出掛けたいな、と。
そして、この春漸く、訪れる機会を得たのです。

夜桜見学会の始まる18時には少し早い夕暮れ時。 生憎の花曇り乍ら、雨も上がり、
一気に花開いた明日館前の桜たち。
やはり、桜咲く明日館の佇まいも、いい。

枝先にはまだ蕾を残す染井吉野。 その背景に三角屋根の銅板葺の緑色や、
ホールの窓枠の意匠が映える。

18時が近づく頃になるとライトが点灯。 小教室などが並ぶ棟を背にして、
桜の枝振りがよく分かる。

件の食堂で見学券と瓶のハイネケンを引き換え、
ホールの六角椅子に腰掛けて、乾杯! 幾何学模様の窓枠越しの桜をしばし眺める。
これは、間違いなく、この時季だけの光景だ。

帰りがけに事務局前にもしばし佇む。 満開になってさらにボリュームが増したら、
もっともっと壮観なんだろうなー、とそう思う。
およそ60歳、還暦あたりの年嵩という。
染井吉野に挟まれて、
大島桜が一本あるようです。

明日館の夜桜漸く見れたー、と思いつつ、
F.L.ライトの小路を後にする。
クランクするように住宅地を抜けて、
メトロポリタン通りへ。
向かうは、一転して池袋西口界隈の猥雑さ漂う、
西一番街中央通りだ。

如何にも古くからの歓楽街らしく、
雑多な店舗やその看板類が犇めいて、
サインの照明がギラギラとして喧しい。
即物的でこれ見よがしのへったくれ、
情緒も風情もなにもない通りに忽然と、
居酒屋然とした佇まいを呈する店があり、
以前からずっと気になっていた。 まるで明日館のホール屋根の如く、
三角屋根に銅板を葺いているように見える。
その上の壁の扁額には堂々と、
「松風」と金箔貼りの文字が店名を示してる。

踏み込んだ店内は、
アンダーな黒茶色の木が基調。
予約の名を告げれば、
二階の隅のテーブルへとご案内。 和紙貼り風の照明が手許を照らし、
箸袋には「よろずや松風」とある。

ドリンクメニューに、
“桜花””桜葉”という文字を見付けて、
プレミアムジン「六」のソーダを。 桜花・桜葉に煎茶・玉露に山椒・柚子。
6種類の旬の和素材を使ったジンと謳う「六」。
ソーダ割りの中ゆえ仄かながら、
桜花や桜葉の風味を探し乍ら、吞む。

壁に貼られた品札と卓上の品書きを交互に眺め、
あれこれと酒肴たちを物色する。
お品書きの文字、プロの手によるものと思うけど、
いいフォルムの書き振りで、好みだ(^^)。

刺し盛りの中から選んだのは、
「皮はぎ刺肝和え」。 もう少し肝の風味が強い感じを期待したけれど、
これはこれは十分ズルい美味しさだ。

お魚の焼き物からは、「穴子の一夜干し」。 芳ばしい皮目と身肉の脂の甘味がいい。
“浜田”と肩書きされているのは、
島根県は浜田市産の穴子ということらしい。
浜田市へは何度か訪れたことがあるけれど、
浜田市沖合の海域が穴子の漁場だとは、
全然知らなかったなぁ。

揚げ物からは、なんだそれ?と、
顔を見合わせつつの「なっとう唐揚げ」。 届いたそれは、揚げボール状の見栄え。
納豆をそのまま唐揚げにするのは、
やっぱり無理だよねーと笑いつつ、
そして熱さに気を付けつつ齧り付く。
うんうん、確かに、そのまま、
納豆を練り込んだ揚げボールだ(^^)。

プレミアムジン「六」のソーダから切り替えて、
お次はご存じシングルグレーン「知多」のソーダ。 中国か欧米か分からないけれど、
投機筋にも妙な爆買いをされて品薄になり、
びっくりするような価格になっていて、
なんだか縁遠くなりそうな気配もする、
サントリーのウイスキーたちなので、
お手頃価格をお品書きに見付けたらなら、
ぜひ呑んでおきたいところ、だもんね。

炒め物からは、「舞茸バター」。 舞茸というとすぐ天婦羅を連想しちゃうけど、
こうしてバターソテーするのも、
お手軽にして美味しいに決まってる。
自宅キッチンでもやってみよー。

お肉系焼き物からは、「合鴨ロースみそ漬け」。 所謂パストラミ的合鴨ロースとは違って、
味噌の風味に焼いた香ばしさを味わうタイプ。
こふいふのも面白いね。

ふたたび揚げ物から、「山芋ののり塩揚げ」。 期待通りの山芋のシャクシャクと、
海苔塩の調味が当然のようにマッチ。
熱々齧れば、そりゃ旨いわな(^^)。

最終コーナーには、「出し巻き玉子」。 十分に出汁の旨味が利いた優しき玉子に、
ふっと安らいて、ご馳走さまでした。

池袋西口を北に出た西一番街中央通りに、
居酒屋「萬屋松風」は、ある。 如何にも雑然たる繁華街の一角に、
そこだけぽっかりと別世界のような、
そんなファサードが実に気に掛かる。
店内の佇まいもチェーン系には、
容易に出せないような味がある。
お品書きの珍味の頁に捲ればそこには、
ホタル烏賊やスルメ烏賊、烏賊腸沖漬け、
ふぐの子に鮎うるか、このわたにばちこ、
塩うにに酒盗、赤ほやや牡蠣の塩辛、
べっこう玉子に唐墨までもが並ぶ。
話しに興が乗って大声になっている卓も、
ない訳ではなかったけれど、
総じて行儀のいい客たちではなかったか。
肩寄せあうカウンターで一献、
なんてものいいかもしれないね。

「萬屋松風」
東京都豊島区西池袋1-24-5 [map]
03-3986-1047

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