洋食堂「のろ」で一挙両得ランチ血鯛モリカータに赤味噌デミ煮込ハンバーグ62度玉子

それは、大橋トリオ、毎年恒例のファンクラブ”CAFÉ PRETAPORTER”限定ライブツアーの京都教育文化センターでの公演を契機に、お久し振りに訪れた京都初日のこと。
インバウンドでぐちゃくちゃに劇混みだったらイヤだなぁと思いつつ新幹線を降りた京都駅は、学生の団体が目立つくらいで、案外ずっと以前と変わらない印象の混み具合。
安堵しつつもとっとと離脱しようと、
真っ直ぐに地下東口改札を出て、
地下鉄烏丸線に乗り込んだ。

五条、四条、そして三駅目の烏丸御池で降り、
旧京都中央電話局を活かし、
隈研吾がデザイン監修したという、
京都市指定・登録文化財であるところの、
新風館なる建物のコンコースを抜け出て、
トランクを転がし乍ら三条通りを東へ歩いた。

交差する高倉通り、堺町通りを通り過ぎ、
柳馬場通りとの交叉点で、
角に立つ洋館風の建物を仰ぎ見た。 突然の洋館の佇まいに立ち尽くし(^^)、
その様子をへーとばかりにしばし眺めた。

花崗岩が屹立するその瀟洒な建物は、
日本生命京都三条ビル旧棟とされるもの。 隅切り右手の閉じられた扉は、
その方立の両側を階段に沿って立ち上げていて、
その上部には浅い石造りの庇を配してある。
自宅の玄関がこんな感じだったら、
それはそれで恰好いいかもと思ったり(^^)。

隅切りのレリーフのようなものの下部には、
登録有形文化財定番の緑青色の銘板。
そして、第2回京都美観風致賞の銘板も、
併せて掲示されている。

柳馬場通り側から回り込むようにすると、
やや奥まった所に別棟のエントランスが見付かる。 フロントに荷物を預けて上がった4階の、
宿泊者専用のキッチン付ラウンジからは、
これぞ登録有形文化財とも思わせる、
青銅製の尖塔のとんがり帽子に臨めた。
捻じり込んだようにも見える、
屋根材がつくる造形が面白いね。

旧日本生命京都三条ビルは、
辰野片岡建築事務所の設計により、
1914年(大正3年)の竣工。
登録有形文化財指定部分を残して建て替え、
ホテルへの改修を経て今は、
TSUGU 京都三条 by THE SHARE HOTELSに。
辰野片岡の”辰野”は、
東京駅や日本銀行本店等を設計し、
建築家として「日本近代建築の父」といわれた、
辰野金吾そのひと。
辰野片岡の”片岡”はと云えば、
日本の都市計画研究のパイオニアで、
関西建築界の重鎮にして、
日本建築協会会長を長年務めた、
片岡安そのひと。
両巨頭が共同した設計事務所は、
大阪市中央公会堂や旧北國銀行京都支店など、
西日本にも多くの建築作品を残したという。
旧大阪教育生命保険ビルと云えば、
嘗てあの「シェ・ワダ」本店があった場所だね。

旧日本生命京都三条ビルを離れて、
今来た三条通りを逆戻りして、
烏丸通りを突っ切り、室町通りを左折し、
一本南側の六角通りへ。 京町家風に格子を構えた建物に、
リケーネLichene色の扉が目印。
洋食堂「のろ」でランチと洒落込みましょう。

ずずずいっと奥まで案内いただいて、
オープンキッチンのカウンターの一隅へ。 入口方向を振り返れば、
玄関ドアの内側も腰壁の板も、
翡翠色の同系色で塗られている。
耐火被覆材剥き出しの天井に、
アンティーク調の家具と併せて、
悪くない景色だ。

グラスの麦酒でもという気分も、
この後歩き回ることを考えると、
麦酒吞んでカッタるくなるのは避けたいと、
グッと我慢する(^^)。

洋食堂「のろ」のランチメニューは、
お値段の低い方から、
五里霧中ランチ、一期一会ランチに、
一挙両得ランチ、椀飯振舞ランチの4種類。
メインのハンバーグが軸になる一期一会か、
さらにそこにお魚かパスタを選べる一挙両得か。
うん、ちと欲張って一挙両得を選びましょう。

ご註文を済ませて辺りをキョロキョロして(^^)、
目の前にあった銅製のカップに挿し入れていた、
棒状のものを何気なく手にしてみた。 するとそれは、
先端に何やら放射線状にギザギザと刻みを入れた、
ピザカッターのミニチュアのようなもの。
訊けば、パイ包みの周囲に切り込みを入れるための、
所謂パイカッターの一種だという。
オブジェみたいなものです、とお兄さん。
へー、初めて目にしたもので(^^ゞ。

まずは、前菜3種盛り合わせ。 奥側には、シーザーサラダ・カルディニ風。
ロメインレタスへのドレッシングに、
ウスターソースを忍ばせるのも特徴のひとつだという。
南瓜のサラダには、オレンジの風味がする。
オレンジの果汁を煮詰めてシナモンを加えたものが、
不思議なアクセントになっていて、面白い。

小さなお魚は、鯵の炙りのカルパッチョ。
アンチョビにオリーブ、ケッパーに大蒜を使った、
タプナードソースを載せている。 右手には、ピスタチオを練り込んでいるという、
パテドカンパーニュ。
隅っこにちょんと載せた粒マスタードは、
左京区の鹿ヶ谷でつくられているものだそう。
調べてみるとどうやら、
閉業された「プルストカフェ」に由来する、
プルストファクトリーのP.マスタード、らしい。
うんうん、しっとりとしたパテに、
辛味を纏うマスタードの風味がよく利いて旨い。
ワインが欲しくなるじゃぁないか(^^)。

本日のスープは、薩摩芋と新玉葱のスープ。 トッピングには、デュカ。
デュカとは、中東発祥のミックススパイスで、
ローストしたナッツ類に香辛料を合わせたもの。
薩摩芋による濃密さが、デザートのよう。
漂う甘さは、新玉葱の甘さだね、きっと。

本日のお魚は、血鯛(ちだい)。 ソースは、金柑と白味噌、柚子の果汁をつかった、
ヴァンブランソース モリカータ。
ああ、皮目の下の血鯛の身がふわっふわだ。
モリカータというのは、パン粉にアンチョビ、
オリーブ、ケッパー、大蒜を含ませたもの。
その芳ばしさが上品な血鯛の身肉に色を添えて、
うんうん、美味しいおいしい。

この日はシェフ店主の河野竜二さんはご不在と、
あらかじめ承知していたものの、
キッチンで立ち動くお兄さんふたりは、
キビキビとして、応対も所作も気持ちいい。
なので、シェフ不在をすっかり忘れていた(^^)。
そして、そのおふたりの雰囲気や佇まいが、
余りによく似ているものだから思わず、
ふたりって、兄弟?と訊いてしまった。
すると、よく云われるのですけれど、
血縁があるとは、判明してないですー、
今のところー、とにこやかに応えてくれた。

そんなお兄さんのひとりが、
キッチンの隅の深めのキッチンポットから、
玉子を幾つか取り出す様子が見れた。
ポットには低温調理器が挿し込まれていて、
62度と温度表示していたっけ。
その玉子を割り、手早くかつスムーズに、
ハンバーグの上に半熟の玉子を載せる、
その所作が面白くてじっと見る。
滑り落ちそうで落ちないのが素晴らしい(^^)。
そして、プルルンと玉子を載せたハンバーグは、
オーブンに入れられて完成に向かうのだ。

洋食屋「のろ」のスペシャリテ、
「洋食堂のろの煮込みハンバーグ」のお皿が届いた。 ソースは赤味噌デミグラス、
工程を見た通りの、ポーチドエッグ添え。
付け合わせは、素揚げした茄子にズッキーニ、
薩摩芋のマッシュポテト。

まずはそのお姿が、麗しい(^^)。
九州は宮崎県からの黒毛和牛「尾崎牛」と、
鹿児島県の「幸福豚」との合い挽きが、
ハンバーグに成形される、という。

落ちそうで落ちない玉子をじっと見る。 まずはその玉子を避けるようにして、
ハンバーグの隅を突き崩して口へ運ぶ。
ああ、赤味噌の濃密さが伝わる、
まったりとしたデミグラスソースだ。
京都鷹峯の松野醤油の赤味噌を隠し味に、
と云うが、全然隠れていないじゃん(^^)。

そしていよいよ玉子に手を伸ばす。 薄い膜を破ればあっという間に零れ落ち、
妖艶なる湖をお皿の上に創る。
こうなればもう、なんの説明もいらないよね(^^)。
正確にはポーチドエッグというよりは、
超ソフト温泉玉子、62度玉子の応用か。
素揚げの茄子もトロトロで美味しかった。

3種のデザートから選んだのは、
「リモンチェッロのカタラーナ」。 ご存じリモンチェッロは、
南イタリア発祥の伝統的なレモンリキュール。
あー、いい匂いーと第一声。
お兄さんは冷凍のプリンのようなもの、
とも説明してくれていたけれど、
表面のキャラメリゼ含めて、
成る程そんな感じもする。
冷たくて爽やかででもコクもあって、いい。

京都は烏丸通りを西に入る六角通り沿いに、
洋食堂「のろ」は、ある。 洋食堂「のろ」は、メンチカツが人気であり、
イタリアン仕込みの割烹のように楽しむ洋食の、
「リストランテ野呂」の姉妹店。
そのオーナーシェフの野呂和美さんは、
旧山の上ホテル、サバティーニ青山在籍の後、
イタリアに渡って修業し、帰国後には、
京都駅のホテルにあったイタリアンや、
あの「洋食おがた」を経て、
「リストランテ野呂」を開店された。
この日お会いすることは出来なかったけれど、
洋食堂「のろ」の店主シェフ河野竜二さんは、
洛北の高級ホテル「アマン京都」の料理長や、
東京「フォーシーズンズホテル」といった、
どちらかといえばフレンチ寄りの経歴を積まれた、
そんな方であるらしい。
洋食堂「のろ」の”のろ”は当然、
オーナーシェフの姓”野呂”からということになる。
店名が「こうの」でも「りゅうじ」でもなく、
「のろ」であることだけを考えると、
野呂シェフが「俺の店だ」と示しているようにも、
パッと見では見えてしまうけれど、
河野シェフが野呂シェフの料理をただ作るような、
そんな構図ではきっと良いお店は営めないし、
師弟関係というのともまた違う気がする。
互いが思い描く姿の特徴ある店となるよう、
野呂シェフと河野シェフがタッグを組んで、
尊重し合いながら日々の舵取りをしているのではと、
なんとなくそんな気がしています(^^)。
「リストランテ野呂」にはいつお邪魔できるかなぁ。

「のろ」
京都府京都市中京区玉蔵町115-1 WAKOビル1F [Map]
075-746-6900
https://www.instagram.com/yoshokudonoro/

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