洋食「葉山食堂」で葉山牛ローストビーフ炙りハーフ丼遠藤新と岸辺露伴と葉山加地邸

池袋は自由学園明日館のデザインに初めて直接触れたのは、春夏秋冬の年にたった4度の日時限定開催という、貴重なる「明日館レストラン」でのことでした。
その後今度は、桜の花満開の明日館での夜桜見学会にも参加して、夜の明日館の景観に臨むことができた。
自由学園明日館を設計したのは、
「近代建築の三大巨匠」のひとりともされる、
アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトとその愛弟子、遠藤新。
その遠藤新が設計した邸宅として、
この間ずっと気になっていたのが、
葉山にある加地邸なのであります。

そんな加地邸での館内ツアーがあると聞き付けて、
梅雨の気配の或る日、
いそいそと葉山は一色へと向かいました。

逗子海岸から少し内陸側を走ってきた134号線が、
葉山御用邸前へ向けて坂道を下るその途中。
鮨店の脇道を多分こっちだねと進み、
その道が左に大きく曲がる処で、
もはや車の入る余地のない細い坂道へと右に逸れて、
こっちで正解かなぁと探る様に登り往く。 すると、更なるY字路の角の大谷石の土留めに、
葉山加地邸は左と示すプレートが見付かった。
土留めにも大谷石を使うあたりに早くも、
フランク・ロイド・ライトの気配があるような、
それは早合点かと思いつつ(^^)、
ここで正解だと安堵して、
案内の通り、左手へと進みます。

大谷石の土留めに沿って細道を往くと、
大谷石の階段が迎えてくれる。 その種類は失念したけれど、
大きなサボテン越しの真っすぐ奥に、
加地邸の玄関口が覗いていました。

あゝ、ここだここだと思わず口走る(^^)。 知ってるひとは知っている、
あのドラマで頻出するシーンの玄関口なのだ。

階段から続くアプローチ一帯も、
玄関廻りの外構も屋根を支える柱にも、
大谷石が使われているのが判る。 勿論、ただ積み上げたようなものではなく、
ひとつひとつの石の形状や厚み、配置などにも、
しっかりとしたデザインが窺えて、いい。

玄関前から頭上を見上げれば、
前方へそして横方向へと伸びた庇が目に留まる。 それは、テラスを構成する突端部の屋根と、
そこから続く屋根の軒にも伸びやかさを思わせる。
凹凸のある大谷石の柱と併せて、
“プレーリースタイル(大草原に建つ家)”が、
設計に踏襲されたところのひとつかと思う。

玄関ホールの右手のドアを入ると、
そこはサロンとされている一室。
入ってきた木製ドアの片袖には、
長方形で構成された明かり採りがあり、
それは玄関扉の片袖にもみられた。 幾何学模様の一種とも云える、
こんな意匠もフランク・ロイド・ライトの高弟、
遠藤新のデザインだ。

単なる四角形のみではないデザインは、
長く庇の伸びたテラスに向き合う、
南向きの窓枠にも施されていて、
その先に植栽麗しき庭先と大谷石の柱が映る。 そして、ここでも、あゝここだここだと口走る(^^)。
NHKのテレビドラマ「岸辺露伴は動かない」で、
高橋一生演じるところの主人公、岸辺露伴が、
漫画原稿を執筆するデスクが置かれていた場所。
岸辺露伴の自宅の撮影は、ここ加地邸で行われた。
「岸辺露伴は動かない」の独特の世界観に、
遠藤新の設計・デザインが少なからず寄与した、と、
うんうん頷きながら、そう思う。

フランク・ロイド・ライトの薫陶を受けた、
遠藤新は、その設計コンセプトとして、
「全一」という概念を掲げていたそう。
それは、建築を全体として捉え、
統一された理念に基づき設計するという建築哲学で、
家具や照明器具などに至るまで、
すべての要素が有機的に繋がり、
全体が統一的に調和している状態を目指す、
というものだという。

二階のライブラリーからサロンを見下ろす。
開口部や屋根形状の輪郭に沿う木枠や、
梁などが構成する線の交わりがなんだか美しい。 部屋の中央に大谷石の暖炉が据えられていて、
奥側の壁沿いには、子供用にも映る椅子が二脚。
自由学園の食堂にあった暖炉や六角椅子を想い出す。

サロンの奥から右手を覗けば、
三角形に窓枠が迫り出したサンルーム。 ここでも、あゝここだここだと口走る(^^)。
「岸辺露伴は動かない」でも使われたけれど、
TBS日曜劇場「ラストマン-全盲の捜査官-」で、
寺尾聰演じる、元警察庁長官護道清二が、
隠居する海沿いの別荘としても登場していて、
第6話のオープニングはこのサンルームで、
福山雅治演じる全盲の捜査官・皆実広見と、
護道清二が、将棋盤を挟んで向き合い、
大泉洋演じる警部補・護道心太朗が、
その様子を見守るシーンから始まる、のだ。
嗚呼、ワタシいつから、
こんなミーハーになったのでしょう(^^)。

サロンの北側には、数段上がった位置に、
プレイルームとされるフロアがある。 サロンの暖炉と背中合わせにもうひとつの暖炉。
ビリヤード台があった往時の様子が想像できる。
両側に開けられた風抜きの窓から庭先が望めます。

二階に上がって真っすぐ南に向かえば、
眺望室とされる部屋に出る。 加地邸の屋根は、印象的なエメラルドグリーン色。
それは銅板葺きの屋根の緑青が発する色味だ。
往時、こんな色合いの屋根を持つ邸宅は、
そうそう他になかったでしょう。
“草原様式”の住宅にはこんな色の屋根がよく似合う。

アメリカ近代建築の巨匠のひとり、
フランク・ロイド・ライト。
その高弟、遠藤新が1928年に設計・デザインした、
近代建築の秀作、国登録有形文化財、葉山加地邸
ひと夏をこんな邸宅で過ごしたい。
一色海水浴場も近代美術館も歩いて行けるし、
134号線沿いに湘南へも三浦半島のどこへも、
ドライブと洒落込むこともできる。
なーんて夢のようなことを想ったりなんかする。
でも、ひと夏、なんて勿論そもそも到底無理。
でもね、1日1組限定、一棟貸し2連泊、なら、
なんと、泊まることができるのだ。
でもねでもね、
2泊でたっぷり30万円越えと高価なのだけどね(^^ゞ。
利用定員は6名なので、有志6人集まって、
なんてのもいいかもしれないね。

玄関口やアプローチで、
記念写真を何枚も撮ったりなんかして、
後ろ髪を引かれるようにしつつ、
大谷石の土留め沿いに小路を下ります。

134号線まで戻ったところで、左に折れてすぐ。
そこがこの日のおひる処「葉山食堂」。 手前に突き出た二階部分が、その下に軒を作ってる。
鏝で塗り込めたような伽羅色の壁が印象的だ。

木戸を開いて予約の名を告げると、
入ってすぐ右手のテーブル席へとご案内。 ファンの回る天井がぐっと高くて、心地いい。
奥側にひとつと左手にひとつ、テーブルがあり、
入ってすぐ左手のテーブルは、おひとりさま用か。
意外と席数が少ないのが見て取れる。
やっぱり予約しておいてよかったね。

洋食「葉山食堂」のメニューの軸は、
葉山牛を用いたランナップ。 ソースなぞが異なるハンバーグ4種に、
ローストビーフ丼、炙りカルビ丼に、
葉山食堂風牛丼ですと説明書きのある、
葉山牛ネギ丼なんてのもある。
葉山牛モノ以外も幾つかあって、
三崎まぐろのほほ肉のステーキとか、
神奈川県産ポークソテージンジャーソース、
鳥取産の鶏ももを使うチキンストロガノフ。
ハヤシライスは定番なるも、
コンビーフカレーなんてのは案外珍しい。
ビーフシチューは夜のみメニューで、
葉山牛ステーキには事前予約が必要だという。

まずは、セットのサラダがやってきた。 醤油ベースのようでいて、
色々と複雑な食味のドレッシングが、いい。
きっと地物の野菜たちなんだろね。
ん、これは白菜かなぁ(^^)。

葉山牛ラインナップから選んだのは、
ローストビーフと炙りの両方がいただけるという、
欲張りな「葉山牛ハーフ丼」。 ハーフ丼の構成は基本的に、
ローストビーフ4枚に炙り4枚。
そこに1枚づつ増量が出来る。
ならばと1枚づつ足してもらうことにした。

ローストビーフは、タレでいただくカタチ。 ご飯を包むようにしながら口に含むと、
忽ち脂が蕩けていって、その甘味が口腔に広がる。
そしてそれが、噛む間もなくすぐになくなる(^^)。
旨味を含みつつすっきりとしたタレが、
その味わいに輪郭を与えてくれる。
北海道産の山山葵、
ホースラディッシュの風味もよく似合う。

炙りは、タレではなくて塩、とした。 炙ったことで脂が滲み出ていて、脂の甘味よりも、
身肉を芳ばしくいただく格好になる。
うーむ、美味しい。
美味しいけれど、それぞれもう少し厚く、
スライスしてくれたら、食べ応えも加味されて、
美味しさが倍増するような気もするなぁ。

相棒は「葉山牛入りハンバーグステーキ」。
選べるソースはやっぱり、デミグラスソースで。 付け合わせには、ポテトにズッキーニ、
サボイキャベツ、つまりはチリメンキャベツだね。

ハンバーグそのものはおそらく、
つなぎや玉葱なぞをほとんど使っていない、
丸々ビーフのハンバーグパテ。 葉山牛がどの程度含まれているかは勿論、
食べて判るような舌は持ち合わせていない(^^)。
でもでも、十二分に肉々しいハンバーグ。
時間をかけて仕込んだであろうデミソースは、
雑味のないくせに旨味たっぷりのもの。
うんうん、文句なし。

神奈川県の銘柄牛”葉山牛”とは、
三浦半島酪農組合協会連合会によると、
肉牛の種類は、黒毛和種の未経産雌牛並びに去勢牛。
連合会の会員が、同牛舎において、
指定の飼料を給与し、12ヶ月以上肥育したもので、
かつ、一定の格付けに評価される、
外観及び肉質・脂質が優れている枝肉、
と定義されている。
例えば、栗坪の里「石井牧場」は、葉山町上山口で、
1963年(昭和38年)から繁殖・肥育しているという。
三浦半島にそんなに沢山の牧場はきっとないので、
葉山牛は間違いなく、希少でありましょう。

ルイボスティーに添えてくれたのは、
三浦産の薩摩芋の羊羹。 ご馳走さまでした。

葉山町は一色の134号線沿い、
葉山 加地邸に至る小路の入口近くに、
洋食「葉山食堂」は、ある。 ご夫婦で営む「葉山食堂」のご主人は、
ホテル出身で、その歴40年以上の料理人。
「葉山食堂」開業から四半世紀になるという。
葉山と云えばやはり、北は葉山マリーナに始まり、
森戸海岸、真名瀬海岸、一色海岸、
そして町南端の長者ヶ崎海岸に至るまでの、
海岸線、海水浴場のイメージが強く、
海岸沿いに有名人・著名人の自宅や別荘などが、
多く点在する別荘地としての印象も多分にあって、
葉山 加地邸もそんな別荘の一軒ということになる。
葉山の別荘族も訪れたであろう「葉山食堂」へ、
今度は、加地邸で過ごす夏の日のランチにふたたび、
いや、ディナーに葉山牛のステーキをいただきに。
そんな機会があればいいなぁ(^^)。

「葉山食堂」
神奈川県三浦郡葉山町一色1758-8 [Map]
046-876-3272
https://getw100.gorp.jp/

column/02921

「洋食「葉山食堂」で葉山牛ローストビーフ炙りハーフ丼遠藤新と岸辺露伴と葉山加地邸」への2件のフィードバック

  1. 森戸方面まではよく行っているけど
    ここは知らなかったですね
    最近は葉山牛のポテチなど、
    スナック菓子も出てきましたね

    それにしても、使い方がよくわからなくてまだ試運転で
    アナウンスもしていないのにインスタよく見つけましたね

    1. Re:ロレンスさま
      なんかね、もしや?という勘が働いたのですよww
      インスタのフォローもよろしくお願いしまーす。

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