「2F COFFEE」の入る旧き三船ビルのある入船一丁目の交叉点から東へ、亀島川を渡る南高橋方向へ進んで、何とも居心地のいいやき鳥「さくら家」の前を通り、ご無沙汰している日本料理「八丁堀 こまつ」の店先を眺めつつ歩くと、湊一丁目の信号に辿り着く。湊交番のところで交叉している道が鉄砲洲通りで、右折すればすぐに、鐵砲洲稲荷神社の鳥居が見付かる。
そのまま鉄砲洲通りを南下して、
児童公園の脇を抜け、暫く歩くと、
酒店やトリミングサロンのサインが見えてくる。
その並びをちょいと進めば、
そこが手打ちそば「梠炉」の店先。
おひる時は時に、空席待ちが出来るので、
気になっている方もおられましょう。
ご多分に漏れず、数人の列の最後尾について、
しばし後、カウンターへとご案内。
つけ台の立ち上がりに貼られていたタイルに、
何気なく視線が惹きつけられた。
微妙に異なる、色味が様々なタイルで、
そもそもそのひとつひとつの形状が面白い。
註文を終えてふと、頭上やや左手に視線を遣ると、
額装の写真に白い犬が映っているのが目に留まる。
補助具を装着している様子のその犬は、
スーパーヒーロー「ロロちゃん」であるようだ。
この日のご註文は「小海老天せいろ」。
お盆の右奥に長方形のせいろが収まり、
その左に小海老天の皿が控え、
前列にその天汁、塩の小皿、辛汁の徳利、
薬味の皿を載せたお猪口とが並ぶ佇まいだ。
せいろの蕎麦は、
二八かと思われる薄い茶褐色。
辛汁は、鰹の風味が芬芬として、
その汁とともに一気に蕎麦を啜れば、
うんうん、街の蕎麦屋さんの蕎麦はこれで、
いや、この感じが加減のいい旨さで、いい。
綺麗に整列した小海老天は、衣ふわふわ。
小海老のブリプリ感が惜しみなく表現されていて、
やっぱり塩がよく似合い、
小海老の甘さを引き出してくれる。
絶妙のタイミングで届けてくれる蕎麦湯。
丁度良い濃度の蕎麦湯を辛汁に注ぎ、
口に含めばふたたび、鰹の風味が蘇る。
早春の候、
まだ肌寒さの残る或る日には、「力そば」。
真ん中に載せた二枚の蒲鉾に凭れる、
まさしく生と思しき大判の若布がいい。
そして、ひとひらの柚子に法蓮草。
たっぷりとした甘汁の様子もまた好ましい。
焼くでなく、粉を叩いて素揚げした餅。
儚くほろっと解れそうなその衣の表情やよし。
そんな餅を齧り、そこへ蕎麦を啜り、
さらにそこに甘汁を少し追い駆ける。
その繰り返しが、
なんとも美味しい手続きになるのであります(^^)。
すっかり温かくなった卯月の或る日には、
先着10名様限定の「サービスセット」。
せいろもしくはかけそばに、ちくわ天、
温玉ご飯か天丼タレ味の揚げ玉ご飯に漬物、
そんな組み合わせのセットは、
早い時間帯になくなるのが常である模様。
揚げ玉ご飯も気になりつつの、温玉ご飯。
蕎麦猪口の辛汁をちょろんと垂らして。
それだけでもう、ズルいの確定なのだけれど、
出来ることなら、揚げ玉ご飯の真ん中に、
玉子の天ぷらを載っけて欲しい、
なーんて思ってしまう。
あ、いや、お得なるサービスセットに、
それ以上の我が儘は禁物ですね(^^)。
中央区は湊地区の鉄砲洲通り沿いに、
手打ちそば「梠炉」は、ある。
数席のカウンターに4卓程のテーブル席と、
丁度よいサイズ感で小綺麗な店構え。
気取りなく誠実な印象のする、
どこか気風のいい様子の街の蕎麦店だ。
店名「梠炉」の由来について訊くと、
愛犬の名前なんですと、
件の額装のロロちゃんの写真を指差す。
今度は、夕暮れ時の口開けにお邪魔して、
庇や軒(のき)を意味する「梠」と、
囲炉裏や暖炉、香炉などを意味する、
「炉」とを組み合わせた「梠炉」を、
店の名に当てた意味合いを訊ねたい。
季節で旬の天婦羅や、
気の置けない蕎麦屋の酒肴たちで、
冷やの酒を汲んだお猪口を傾けつつ、ね。
「梠炉」
東京都中央区湊2-6-6 [Map]
03-6262-8109
https://www.instagram.com/teuchisobalolo/

