どこかのアンケート結果ではなくて、単に自分がふと思うランキングではありますけれど(笑)。
その昔花街だった界隈というのは、今も尚その残り香のような雰囲気を漂わせていて魅力的に映る所為かもしれません。
人形町は、江戸の初期には後の明暦の大火で移転する吉原遊郭があったようだし、芝居小屋なんかもあって大層賑わっていたらしい。
歴史の深浅は様々なれど、「芳味亭」や「喜寿司」「人形町今半」「日山」「小春軒」に「来福亭」、「よし梅」やいつも行列の「玉ひで」などなど積年の風格ある店々が点在しています。
甘酒横丁から人形町通りの一本裏手を行けば、なかなかの面構えのおでん「美奈福」がある。今は小売だけで、店内ではいただけないらしいのがなんとも残念だ。
あ、そうそう残念と云えば、何度も寄り道させてもらった新富町のおでんと鯛焼きの「にしみや商店」さんは、この4月一杯で現役引退、閉店。
最後になって、ずっと念願だった「にしみや商店」の簡易カウンターでおでんで一杯を実現できました。
ご馳走でした、お疲れ様でした。
甘酒横丁から「美奈福」の筋へと曲がる角にもすっかり周囲の雰囲気に溶け込んだ店がある。人形町の町の蕎麦処「東嶋屋」へ寄り道してみましょう。
ちょいと静かな店の隅でキリンラガーをグラスに注ぐ。品書きを眺めると、「板わさ」「山葵おろし」「塩から」「ぎんなん」などといった蕎麦前の定番が並んでいます。
麦酒のあてにと選んだのは「肉豆腐」。なんの変哲のない鉄鍋ではありますが、出汁の風情には一日の長を思わせます。
お蕎麦のご注文は、ふと茅場町の今はなき「藪平」の定番だった「冷たいカレーそば」を思い出しての「カレーせいろそば」。ワイシャツへの跳ねを気にしつつも、一心不乱に啜り上げるノリだったあの頃を思い出しつつ啜るせいろ。
つけ汁はザ蕎麦屋のカレーのとろみたっぷり。それが蕎麦に纏わり付くのがジャンクな魅力なのでありますね。
この場合、カレー汁の負荷を受けても容易に千切れない蕎麦であることが肝要です。
別の夜に、壁に掛けられた額の絵が目に留まる。
ラフな水彩に雰囲気がよく表現されている。お隣の豆腐の「双葉」の店先には、甘酒の屋台が描かれています。
そのさらに隣は、何時ぞや抹茶パフェをいただいた「森乃園」だ。
例によって麦酒で喉を湿らせて、夕餉にといただいたのが「牛玉丼」。親子丼でもなければ牛丼でもない、ありそでなさそなそんな趣向のドンブリです。
中央に横たえた海苔がなんだか、目線に置いた黒塗りのよう(笑)。親子の相性の良さには敵わないとしても、でもでもこれはこれでありだと思います。
人形町甘酒横丁みすっかり馴染む町の蕎麦処「東嶋屋」。油揚げに揚げ玉入りだという「むじな」なんていう、あまり馴染みのないメニューもこっそりあったりして侮れません(笑)。
「東嶋屋」
中央区日本橋人形町2-4-9 [Map] 03-3666-6964